言動決定要素について順番に考えてきました。前回は名詞の使い分けについて考えました。今回は「脳内辞書」を扱う無意識の文法について考えていきます。
【人間と言語の発達】
子供が言語を習得していく過程や、外国語の学習を想像してみてください。
1:単語羅列「リンゴ、たべる」
リンゴを指さして、「食べる」のときに自分を指さしていたら、自分が食べたいのだということは伝わるでしょう。カタコトのレベルです。
2:文章構造「わたしは、リンゴをたべたい」
「誰が、どうする」という主語と動詞があることで文章になります。主語が使えないと目の前の状況でしかメッセージを伝えられません。つまり「あなた」を指さして「あなたは食べたいですか?」と言ったことは聞けても、その場にいない「彼が食べたがっている」とは言えないのです。どこかあさっての方を指さして「リンゴ、たべたい」と連呼しても、食べたいのが「彼」なのか「彼女」なのか「ペット」なのかわかりません。
3:形而上表現「リンゴが食べられる」「リンゴは食べられたくない」
主語に自分以外を置けるようになると、他人の感情を推測する他者理解の能力や、人以外を主語におくことで擬人化や客観的観察の能力が持てるようになります。子供ではある年齢まではこういった表現ができません。
4:論理構造「私は食べたい。けれど、我慢する」
接続詞をともない、文章と文章をつなげられるようになります。これによって、思考することが出来るようになっていきます。
これらは脳内辞書に対して、脳内文法とも言えます。
どのレベルで言葉を扱っているかは、個人差があります。もちろん同じキャラクターでも疲れや気分による差もでます。
「君の中華料理がいいという考えは一理あると思うよ。昨日はイタリアンだったしね。だけど本当にそれがベストな選択だろうか? 今日みたいな暑い日は食欲がないから、むしろさっぱりした和食のような選択もありえるんじゃないだろうか? いや、たくさん汗を掻いた分、しょっぱいものが欲しくなるというのもある。そういう意味では中華もやはり有力候補かもしれない」
「で、何たべたいの?」
4のレベルで考えすぎなキャラクターと、1~2のレベルで考える直感的なキャラクターの会話です。
思考や言語に頼るかどうか、直観や感情に頼るかどうかの違いとも言えます。
次回は……キャラクター概論26「言動決定要素④脳内辞書:キャラクターコアと言葉」
緋片イルカ 2019/08/09
構成について初心者の方はこちら→初心者向けQ&A①「そもそも三幕構成って何?」
三幕構成の本についてはこちら→三幕構成の本を紹介(基本編)
文学(テーマ)についてはこちら→文学を考える1【文学とエンタメの違い】
文章表現についてはこちら→文章添削1「短文化」
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