言動決定要素の「テンション」について考えています。前回、主人公のテンションをアゲサゲするイベントの繰り返しで、物語が進んでいくことをお話しました。
ここにはイベントとリアクションという関係があります。今回はこのことについて掘り下げて考えていきます。
【イベントとリアクションの復習】
前回、宝くじにあたった男の例を出しました。
1「宝くじで1億円あたった!」
↓
2「引換所に行ったら、くじがない! どこかで落としたか?」
↓
3「慌てて道を戻ると小さな女の子が拾っている」
↓
4「返してもらおうとするが、話を聞くと少女の父親が病気で大金が必要なのだという」
1の「宝くじが当たる」というのがイベントです。リアクションについては書いてませんが当然「喜びます」。これがリアクション。
2の「くじを落とした」がイベントです。リアクションは「ショック」や「焦り」。
3の「少女がくじを拾っている」。見つかって「ひとまず安心する」リアクション。
4の「少女の両親が病気」と聞いて、「迷う」リアクション。
物語がイベントに対するリアクションによって進行しています。
【キャラクターが物語を動かす】
上の例の展開について、違和感を持つ人は少ないと思います。
「宝くじがあたって」→「嬉しい」
「なくなって」→「焦る」
といったリアクションは一般的で多くの人が共感できる、ベタなリアクションだからです。
主人公がどんな人物かの説明を一切していませんが、物語が成立してしまいます。
プロットだけで進行してしまっているのです。
お話をつくるのが上手い人はプロットを考えるのが得意な反面、キャラクターの掘り下げが安易になりがちです。
次の展開はどうでしょうか?
1「宝くじで1億円あたった!」
↓
2「どこかに捨てなくてはいけないと思い、宝くじの捨て場所を探す」
↓
3「捨てようとする度に、誰かが拾おうとして捨てられない」
↓
4「父親が病気で大金が必要だという少女に出会う」
プロットの中に、キャラクターが見えてきませんか?
「宝くじに当たる」というイベントは同じですが、「捨てようとする」リアクションが普通ではないからです。
普通の人がテンションが上がって「喜ぶ」ところを、この主人公は「捨てなくては」とテンションが下がっています。
読者は「何で?」と考えたり興味がわきます。
もちろん正式なプロットとしては1の「宝くじがあたる」イベントの前に、0として「お金は人を不幸にするという考えを持っている」といった主人公のセットアップが必要ですが、イベントとリアクションがプロットとキャラクターをつなぐ鍵という意味がおわかりいただけたかと思います。
もっと掘り下げると、ここには「目的」という要素が絡んでいます。イベント後のリアクションとして「主人公の目的」が変化しているのです。
言動決定要素の6つめである「目的」です。これについては「テンション」の説明がおわった後に、いずれお話していきます。
次回……キャラクター概論32「言動決定要素⑤テンション:キャラクターコアとテンション」
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緋片イルカ 2019/09/11
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