小説一覧

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「SNOW LOVE」

私の名前は雪衣娘。といってもそれはペンネーム。セツイジョウと読む。白いオウムのこと。だからユキゴロモムスメなんて読まれるとちゃんと辞書を引け! と思う。私だって辞書を引いて付けたのだ。知っててユキゴロモと呼ぶ人もいるけれど。

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「アスパラ」

 あの子の前を上手に通る癖を覚えたのはもうずいぶん前のことになる。愛子はその長さを日数に計算して驚いた。長いと思っていたのに一週間しか経っていないかったのだ。aiko『アスパラ』より着想。

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「あの橋」

僕はそこをゆっくりと確かな足取りで渡った。渡りながら思った。彼女はどこに行ったのだろうか? 僕と同じように先生を見かけこの路を引き返したのだろうか?

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「ウォームアップ」

競技場から少しジョギングするとランニングコースに出られる。そこから脇道に入ると静かな木陰がある。僕は決まってレース前にはここへ来る。あと二時間でいろんなことが変わってしまうだろう、と考えてからすぐに打ち消そうとした。高校陸上のインターハイ地区予選。僕は三年生で予選止まりの実力。今から二時間後の午前十時が千五百メートルのスタート時刻。その五分もすればレースは終わる。中学から六年間やってきた僕の陸上生活も終わる。

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「オレンジジュース」

「お客さん。さっきからオレンジジュースばかりで七杯も飲んでいなさる。体に悪いことはないが胃にたまるでしょう」「そうさ、だからこうしてさっきから便所に通いつめてるじゃあねえか」男はこの日アルコールを口にしていない。店の主人がいったようにオレンジジュースばかりである。

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「きまぐれ」

十八になった。もう十八かと思った。二ヶ月になる彼と朝から会って、いつもの店でいつものコーヒーを飲んで、「何処へ行く?」と聞かれたので「帰る」と答えた。彼はしばらく黙ってから「じゃあ駅まで送る」とぼそっと言った。電車に乗って考えた。駅に着いて家までの五分の道で考えた。「もう別れよう」と、メールを送った。

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「それが愚痴だとしても」

「古稀って知ってるか?」年寄りじみた下衆な仕草で女の子の肩に手を回した。こんなえろじじいが確かに僕より物を知っていて、世の中でも認められている。節くれ立った手ははじめ叩くように触れて、そのまま女の子の肩に置かれたままになった。僕は目を逸らす。

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「ダウン」

倒れてから、ああ、いいのを一発もらったんだとわかった。ダウンしたボクサーが立ちあがるかどうか10カウントの間に起きる迷いと決断。

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「チビの憧憬」

正直が大好きな特撮ヒーロー「セイギマン」。番組の最後に新キャラクター「ゼギン」が現れた。敵か味方か?正直は次回の放送が待ちきれなくなる。

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「ファーストキッス」

 爺さんは目を覚ますと年甲斐もなく涙を流していた。夢を見ていたのだ。横で婆さんはまだ寝ている。まだ四時だった。

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