『アウトラインから書く小説再入門』と『ストラクチャーから書く小説再入門』は三幕構成を小説に応用する主眼で書かれています。
1冊目の『アウトラインから書く小説再入門』は小説本文を書く前にアウトラインをつくること、つまり構成やあらすじを立てることの有用性と具体的な方法について書かれています。構成が苦手という人には参考になると思います。脚本では構成をつくるのは当たり前なので、三幕法の基礎があればこの本は読まなくてもよいと思います。
2冊目の『ストラクチャーから書く小説再入門』では前半はストーリー全体の構成法、後半ではシーンの構成法を説明しています。
イントロダクションには次のようにあります。
「ジョン・トゥルービーは名著『ストーリーの解剖学』で二十二個もの要素をあげています。一方、映画脚本術のバイブルとして名高いシド・フィールド著『映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと』は物語を三つに分ける「三幕構成」。どちらの主張も基本は同じ。ただトゥルービーの理論の方がより細分化されています。この本では両者の中間をとって、十個の要素を挙げることにしました。ストーリーを十ステップに分解し、書き手も読者も最大限の効果が得られる構成術を提案します」
その十ステップを紹介したかったのですが、翻訳で章立てが変えてしまったのか九つしか見あたりません。どれも脚本で使われる用語なので、残り一つは「ミッドポイント」ではないかと思われます。
1:The Hook 掴み(フック)
2:The First Act, Pt1:Introducing Characters 登場人物の紹介
3:The First Act, Pt2:Introducing Stakes and Settings 危機と舞台設定の紹介
4:The First Plot Point:プロットポイント1
5:The First Half of the Second Act 第二幕の前半
6:The Second Half of the Second Act 第二幕の後半
7:The Third Act 第三幕
8:The Climax クライマックス
9:The Resolution 解決
書籍の後半ではシーンについての構成も分解しています。ストーリー全体と同じように、シーンにも三幕があるという言い方はよくされるのですが、シーンを具体的に分解している著者はめずらしいと思います。
1つの「シーン」をまず2つに分けます。
●シーン:アクションとして出来事や人物の行動を描く部分。非常にややこしいのですが「シーン」の中にシーンがあるそうで、書籍ではカギ括弧がつくかつかないかで使い分けています。
●シークエル:出来事に対するリアクションとして人物の反応を描く部分。
さらにこのシーンとシークエルがそれぞれ3つに分かれます。まとめると以下のようになります。
「シーン」
シーン1:ゴール
シーン2:葛藤
シーン3:災難
シークエル1:リアクション
シークエル2:ジレンマ
シークエル3:決断
シークエル3の決断が次のゴールになるので、自然と次の「シーン」へとつながることになります。もちろん、これらは「シーン」の基本構造で崩れることは多々あります(それはストーリー全体の三幕構成でも同じです)。この本には崩れた「シーン」のバリエーションについても書かれているし、「シーン」とは別の役割をする「通過点The incident」「ハプニングThe Happening」といった考えも面白いと思います。用語はまぎらわしいのですが書いてある内容は非常に示唆に富んでいるいい本だと思います。
(緋片イルカ2019/02/01)
構成について初心者の方はこちら→初心者向けQ&A①「そもそも三幕構成って何?」
その他の三幕構成の本についてはこちら
→三幕構成の本を紹介(基本編)
→三幕構成の本を紹介2『サブテキストで書く脚本術 (映画の行間には何が潜んでいるのか) 』リンダ・シーガー (著), 坪野 圭介 (翻訳)
→小説・脚本・物語創作に役立つ本の紹介3『トラウマ類語辞典』『感情類語辞典』『性格類語辞典 ポジティブ編』『性格類語辞典 ネガティブ編』
キャラクター論についてはこちら→キャラクター概論1「キャラクターの構成要素」
文学(テーマ)についてはこちら→文学を考える1【文学とエンタメの違い】
文章表現についてはこちら→文章添削1「短文化」
「三幕構成について語ろう」という掲示板もありますので、ご自由にご参加ください。