キャラクター概論3「キャラクターの表現方法:小説における場合」

前回、はキャラクターを作品の中でどう表現するのかを映像表現の場合で考えました。今回は小説で考えていきます。

表現の方法として、脚本では「モノローグ」「セリフ」「動作」があることを説明しました。
まとめて言えば、とにかく「シーン」で説明することです。
これは「キャラクターの設定をどんなに考えてもシーンで見せなければ伝わらない」とも言い変えられます。

小説でもシーンで見せるという考え方は同じですが、注意しなくてはいけない点がいくつかあります。
まず三人称か一人称かの違いです。(念の為ですが「私は~」が一人称小説、「彼は~」が三人称小説)

三人称小説は脚本に違いので「彼の身長は190センチあった」と地の文で書くことができます。
しかし、ここでも前回のモノローグの説明同様、そう書くことが面白いのかどうか?を常に考えて書くべきです。

地の文はモノローグ以上に、簡単に説明できるゆえに、説明してしまいがちです。

たとえば「190センチ」と言われて「高い」という以上に伝わるものがあるでしょうか?
「そのドアの180センチだった。それより彼の背は10センチほど高かった]と書かれたりすればイメージが湧きやすくなります。

あるいは前回、ストーリーを進めながら主人公を説明していくことが重要だと話しましたが、
これも、登場人物に「バスケ部だったの?」と言わせたり、ミステリー小説で事件現場を捜査しているうちに、高いところにある物をスっととって、「犯人も同じぐらいの身長だったかもしれない」などと説明することもできます。

「主人公のセットアップ」として説明するべきかどうかを判断することが大切です。
地の文は、説明しやすいがゆえに、作者がその判断を怠ると、読者はだらだらと興味がない(メインストーリーに関係のない)設定を延々と聞かされるハメになります。一人称小説で、それをやられると、飲み屋などで「興味のない人間の思い出話を聞かされる」のを思い出した知りませんか?

作者としては、せっかく考えたんだから伝えたいという気持ちは持っていても、読者は設定が知りたいのではなく、ストーリーに浸りたいのです。

もう一つ、小説と脚本の違いでは「外面」についての問題があります。
とくに一人称小説で、外面を描くかどうか?です。

一人称小説の一つの特徴で「私は~」という小説内の自分と読者が重なることで生まれる没入感があります。
小説がアニメやドラマになると、主人公が、原作とイメージが違うとかイメージ通りだということが言われますが、こういったイメージを読者が自由に想像することが小説の楽しみでもあるのです。
映像的な描写を入れることも、入れないことも、どちらにもメリットデメリットがあるので、作品のテーマやジャンルなどで、きちんと想定することが必要です。
前回の脚本で説明した、衣裳や小道具についてはストーリーに関係ないのであればト書きに書く必要はないという基準は、一つの目安になります。

次回は、ここまでの表現方法を踏まえた上で、改めて、キャラクターの構成要素を掘り下げていきます。

緋片イルカ 2019/06/16

次回→キャラクター概論4「キャラクターの言動決定要素」

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