これまで6つの言動決定要素のうち「気質」について考えてきました。今回はその最後として「気質」と「価値観」の間にあるものについて考えていきます。
【気質と価値観の関係】
これまで考えてきた「気質」というのをより原始的な部分でとらえてしまえば「快・不快のセンサー」まで還元できるのではないかと思います。
そのセンサーが作動しやすい人、作動しにくい人。
快に作動しやすい人、不快に作動しやすい人。
当然、肉体的な強弱によってもセンサーは反応します。
年齢や学習である程度はコントロールはできるようになるが、傾向はあまり変わらない。
一方、価値観は極めて後天的なものです。
例えば「キャンプが好き」というと価値観は外向的な気質なイメージがあります。
「自然が気持ちいい」「川で泳ぐのが好き」「バーベキューがおいしい」こんな価値観を伴っていそうです。
内向的な気質のキャラクターといえば「本が好き」「美術館が好き」「部屋が好き」といった価値観につながりそうです。
しかし内向的な気質でもキャンプが好きな人(キャラクター)もいます。
そこには「気質」と「価値観」の間に介在しているものがありそうです。
内向的な人が「本が好き」というのは「知識」を得られることが「快感」であるからで、キャンプへいって「星空を見ることが本当の知識である」と思うようになれば、進んでキャンプに参加するようになるでしょう。
これは価値観とも気質とも言えそうで、分類は難しそうです。
言動決定要素を6つに分けた時点でもいいましたが、分類することが目的ではないので、どちらでもかまいませんが、ともかく、その気質と価値観の間にあるものについて考えてみます。
【4つの行動原理】
人間の行動原理は以下の4つがあるように思います。
・「正しさ」
・「好き嫌い」
・「損得」
・「勝ち負け」
異論はあるかと思いますがイルカはこう捉えます。ベースにしている考えは『体癖 (ちくま文庫)』です。
これらは「快・不快センサー」の次段階にある判断基準とも言えます。
「正しさ」を重視する刑事のキャラクターであれば「悪は裁かれるべきだ」と考えます(ただし、考えるだけで行動が伴わないこともあります)。
「好き嫌い」の刑事であれば「とにかく悪が許せない」と感じます。
「損得」の刑事は「犯人を捕まえれば出世できる」と計算します。
「勝ち負け」に拘る刑事は「キャリア組なんかに負けず所轄の維持を見せる」などと言うかもしれません。
どのキャラクターも一つの判断基準とは限らないので、「悪は裁かれるべきだ」と思ながら「悪を許せない」と感情的にも動かされます。
同じ、「犯人を捕まえたい」という価値観やWANTを持っていても、そのモチベーションとなる原理は違っています。
それは根源的には気質的、体質的な差異からきますが、どこからどこまでが「気質」で、どこからが「価値観」であると切り離すことはできません。
また「気質」から考えていくと機械的になりすぎて、キャラクター創作には使いづらい部分もあるので、行動原理のような中間ぐらいのところで捉えていくのが、扱いやすいかと思います。
行動原理のモデルは、すなわちタイプ分類なので、血液型でも12星座でも、エニアグラムの9つの性格でも、自分が本質的だと思うものを応用して、自分なりの人間観を磨いていくしかないと思います。
とくに気質との間で考える場合は、身体との関連で考える「体癖」が本質的だと感じますので、これを紹介しました。キャラクター概論シリーズの後で、タイプ分類をリスト化していく予定です。
※2019/08/24追記
「体癖」の専門家である整体の先生から、上下体癖に関しては「正しさ」よりも「名誉」「毀誉褒貶」を気にするというご指摘をいただきました。自分でも定義していて、違和感のあったところなので、お話を聞いて、その通りだと思いましたので追記させていただきます。
気質についてはこちらも参考モデルになります→ざっくり読書6『スキーマ療法入門』伊藤絵美(①生得的気質について)
次回は……キャラクター概論21「言動決定要素④脳内辞書:セリフの変化」
緋片イルカ 2019/07/27
構成について初心者の方はこちら→初心者向けQ&A①「そもそも三幕構成って何?」
三幕構成の本についてはこちら→三幕構成の本を紹介(基本編)
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