「完璧主義者」(キャラクタータイプ#1)

【完璧を求めることの良し悪し】

完璧主義は、あらかじめ期待していたことを、その通りに行わないと、すべてが台無しになったような失望や苦痛を感じる心理的なとらわれだと言える。
完璧主義は、うまく機能しているときには、優れた向上心や高いパフォーマンスの原動力となり、実際、完璧主義の持ち主は、学業においても、職業や家事、子育てといったことにおいても、すばらしい成果を収めているケースが多い。

しかし、完璧主義は両刃の剣であり、完璧主義が達成されている間はよい成果を生み出す力となるが、その達成が困難な状況に置かれると、強い病理性が発言することもある。完璧でありたいという思いを捨てることができないと、不完全で期待外れの状況にいることが、完璧主義でない人以上に強いストレスを生んでしまうのだ。どうにもならないことを、どうにかしようと、空回りを続けることもある。努力して完璧であらねばならないという信念が、今度はその人を苦しめるのである。

『あなたの中の異常心理 』岡田尊司、幻冬舎新書より引用。以下の引用もすべて同書より)

著者は完璧主義者の例として三島由紀夫をあげて次のようなエピソードを紹介している。
・締め切りを守らなかったことは一度もなかった。
・交際している女性が食事の約束の時間に遅れたとき「食事をゆっくり召し上がってください」というメッセージを残して帰ってしまった(食事代は払ってあった)。
・オペラの仕事で、黛俊郎が作曲が間に合わず上演時期を延期を申し出ると上演自体をとりやめ、黛とは絶縁した。
・自決の当日に編集者に最後の原稿を渡していた。

他の完璧主義者と思われるモデルとして、

映画『ブラック・スワン』の主人公ニーナ

1997年に起きた東電OL殺人事件の被害者女性(『東電OL殺人事件 (新潮文庫)』)、

マハトマ・ガンジー(『ガンジー自伝 (中公文庫BIBLIO20世紀)』)、

なども紹介されている。

【完璧主義が向かう先と、その本質】

完璧主義とは創造的なものではなく、その本質は、同一を求める反復強迫だと言える。完璧主義の人にとっては、予定されていたものとの同一性を実現することが、最大の目的なのである。その反復強迫が、そもそも何のためのものであるかは、あまり重要ではない。同一性を反復することが、根源的とも言える衝動なのである。

完璧主義がただの性格や、秩序や道徳を重んじる価値観というレベルであればいいが、拘りの程度が進むと
・嗜好的行動
・仕事中毒
・過食と嘔吐の反復
・体重を減らすことへの囚われ
・自傷行為や虐待を止められなくなること
・アルコール依存
・「不潔恐怖」(ドアノブや蛇口などに触れなくなったり、常にゴム手袋やマスクをしたり、人と接すること自体が恐怖となる。そうなると部屋に引きこもり、髪も切らず風呂も入らず悪臭を漂わせたりするが、自分の不潔には無頓着で「不潔なことを恐れているというよりも、自分が異物によって侵されることを恐れる」)
・「醜貌恐怖」「身体醜形障害」(ある男性がお尻の左右の盛りあがりの差を気にして整形手術を受けたがったが取り合ってもらえず自殺してしまったケースや、噛み合わせが悪いことから自殺してしまったケース)
などといった病的症状を生むようになる。

【完璧主義者のキャラクターアーク】
完璧主義者を主人公としてキャラクターアークを描くもっともシンプルなパターンはストーリータイプでいうところの人生の岐路(※通過儀礼)→依存症の岐路Addiction Passageにあたる。
ブレイク・スナイダーがこのタイプの作品としてあげているサンドラ・ブロック主演『『28 Days』はドラック中毒の女性が療養所で過ごす28日の話で、療養所という設定がストーリーとしては健全すぎるところもあるが、キャラクターアークとしてはわかりやすい。ストーリーとしては療養所よりも、意外な人間関係などから変化していくアークの方がドラマチックに見えるだろう。

ダスティン・ホフマン主演の名作『クレイマー、クレイマー』は、病的まではいかないワーカーホリックな主人公が、子供との関係を通して変化していくハートフルストーリー。

以上はポジティブなアークの作品である。ネガティブなアークであれば他には完璧主義のアーティストが、己の美を追究するあまり破滅していくような作品が考えられる。まさに三島由紀夫の人生だが、作品名は浮かばなかった。

フラットなアークでは完璧主義が「信念を貫く」「妥協を許さない」といったプラスの側面として描かれるアークが考えられる。例にもあった『ガンジー』はそのままずばりだし、正義の刑事や弁護士といった設定であれば、妥協せずに徹底的に悪と戦うヒーローとなるだろう。

主人公ではなくサブキャラクターとして配置する場合、「厳しい上司」「うるさい母親」といったマイナスな側面から、主人公を葛藤させるキャラクターにできそうである。また、チームの仲間として配置するのであれば心強い味方となるだろう。完璧主義な性格が、その能力の信頼性をもたせる設定となりうる。

ちなみに同書では、完璧主義の正反対な生き方の例として水木しげるさんの生き方を挙げている。不幸の連続で、思い通りにならないことだらけのでも生き抜いていく力強さをもったキャラクターは、完璧主義者の対極ともいえ、物語内では必ず価値観が対立するだろう。正反対のキャラを配置することは、葛藤を生むためにも、テーマを掘り下げるためにも最適である。

水木しげるさんの自伝マンガ
完全版水木しげる伝 文庫 全3巻 完結セット (講談社漫画文庫)

緋片イルカ 2019/10/22

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