錆びた刀のような(文学#48)

平べったい銀に、赤茶の斑紋が浮いている。

すっかり錆びて鈍っているように見えるが、それは今でも鋭利な刃物で、

たちまち、わたしの皮膚を一文字に裂いて泪を流す。

それは、誰かを傷つけるための武器ではない。

守るためであっても、鞘に収めて抜いてはいけない。

それは、己の腹に突き刺すための誇りではない。

惨めであっても、鞘に収めて抜いてはいけない。

時代遅れと言われても手放してはならない。

無用の長物をぐっと握りしめたまま、生き続けなければならない。

緋片イルカ2021/05/10

SNSシェア

フォローする