※この記事はストーリーサークルの「テーマ」、「構成」に関連します。
※また【物語ラジオ】テーマと構成は関連する(#6)でも、似たような話をしています。
そもそも「テーマ」とは何か?
物語を考える時に「テーマ」ほど主観的なものはないように思います。
たとえば、ストーリー上で「学校のいじめ」という「題材」を扱っていたり、「うつ病のキャラクター」という「人物」が出てくるだけで、現代社会をテーマとしていると言う人がいます。
批評家に到っては「○○を象徴している」というレベルでこじつけて、テーマを解釈する人がいます。
一般的な読者や観客は、それほどテーマを意識して作品を見ません。ただ、物語を鑑賞後に、そっちょくに残った感情や思考から「テーマらしきもの」を感じます。
作品の感想をブログに書いたり、友人に伝えようとすれば、そのときには言語化され、意識にのぼることもありますが、そういう機会がなければ「面白かったね」とか「よくわからなかった」とか率直な感想を持つ程度でしょう。
批評家めいたテーマではなく、この、一般の多くの観客が、率直に感じる「テーマらしきもの」こそ、その物語が伝えている「テーマ」と言えるのではないかと思います。(※ちなみに記事にしたことがありませんが、読書会などで扱っている分析表の、最下部にあるGiftという項目はこの感情に関連します。気が向いたら記事にします)
物語論としては、その「テーマ」は、どこから感じられるものかというのが大切です。
構成がテーマを伝える
結論をいえば「構成」だけでなく「キャラクター」や「描写」も含めて、作品すべてが「テーマ」を伝えています。しかし、一番、影響があるのは「構成」です。
だから、今回は「構成」から「テーマ」を考えていきます。
昔話の「桃太郎」を使って、考えてみましょう。
「桃太郎」の構成を以下のシークエンスとしてみます。
・桃から生まれる
・成長して立派な青年になっている
・村で鬼が悪さをしている
・鬼退治に出発する。
・いぬ、さる、きじを仲間にする
・鬼ヶ島について、鬼と対決
・勝利して金銀財宝をもって、村に帰る。
・村は平和で豊かになってめでたしめでたし。
シンプルな「桃太郎」の展開です。
以上の話を聞いて「どんな話でしたか?」と尋ねれば、多くの人は「桃太郎が動物を家来にして、鬼退治する話」と言うでしょう。
これはログラインに近いものですが、同時に「観客が感じる物語」です。
「面白かった」とか「好き」とか「嫌い」といった感想をもつ以前に、物語に対する「理解」が行われます。感想は「理解」してからです。
この「理解」に関わるものが構成です。
桃太郎の「キャラクター」を好きか嫌いかを判断するのは「構成」上でどんな言動をしたかです。
犬や猿に高圧的な態度をとっていれば嫌われるでしょうし、動物想いで家来というより友達のように接していれば、親近感を持つ人も多くなるでしょう。これは「描写」です。
しかし、動物と一緒に「鬼退治する」という構成は変わりません。
現代劇にするなら、いぬ、さる、きじでなくても構いません。「仲間と一緒に冒険して、悪者を倒す」話は少年マンガに無数にあります。(※戦時中は国威発揚のため桃太郎が教科書に採用されていたことも留意しておきます)。
もしも、「悪い者を退治する」という展開がなく、「いぬ、さる、きじを使って、牧場を経営して村を豊かにした」という展開だったら「観客の感じる物語」がどう変わるか考えてみてください。
これが「構成」が「テーマ」に直結する理由です。
次回予告・ご案内
構成を成り立たせているものをビートといい、それを並べたものをビートシートと呼んだりします。
その中でも「テーマ」と重要な関連をもっているのは「ミッドポイント」と「リワード」です。この説明にはビートに対する踏み込んだ理解が必要になるので、ここでは割愛します。
より詳しく、理解されたい方は「読書会」や「リモート分析会」にご参加ください。
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緋片イルカ 2021/09/17
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