マンガと三幕構成⑤「ストーリーからネームへ」(#38)

前回の記事では『マインドアサシン』をつかって、ビート分析をしてみました。

マンガにも三幕構成があることは、ご理解いただけたかと思います。

「読書会」と「合評会」を同時にやっていることの意義としても話したことがありますが、しっかり読むことは、書くときに応用できます。

前回の分析が「作品」→「ビート」を抜き出す作業でしたが、今回はその逆、「ビート」→「作品」にしていく方法をご紹介します。

ストーリーを構成にして配置する

創作する場合に、まず「ログライン」まではできているとします。

前回の『マインドアサシン』の分析から再掲していきます。

ログライン:
マインドアサシンの奥森かずいは、
悩み相談にきた少女の記憶を消してやるが、
刑事によって少女は殺され、暗殺する。

次に全体で、何ページの作品にしたいかを決めます。

『マインドアサシン』の第一話は46ページでした。

見開き単位が「シーン」ないし「シークエンス」だと考えて、これを「÷2」して「23のシーン」があると考えます。プロローグや扉絵などの分は、各自で調整してください。

ログラインから「確定しているシーン」を考えます。

a:奥森先生の日常
b:少女の記憶を消す
c:少女が殺される
d:殺し屋としての対決。

これらをどこに配置していくかも、ビートの基礎知識があれば、わかります。

aは冒頭、cとdはいわゆるクライマックスと呼ばれるところなので後半に入るのは、一般の感覚でわかると思います。

問題はbです。

三幕構成を学んでいても「ミッドポイント」の意義を理解していない人は多いのですが、まさにcのようなシーンをMPに置くべきなのです(ビートの意義については過去記事をご覧下さい)。

ここで「1:2:1」というバランスも参考にしていきます。

約23のシーンがあるのでした。

つまり「PP1」なら全体の1/4→「23÷4=6」で

「MP」なら「23÷2=12」、

「PP2」なら「「23÷4×3=18」

(※割り切れないなど、気にする必要はありません。どうせ後でズレます。あくまで目安です)

この番号に、上記のシーンを配置していきます。

1:プロローグ
2:奥森先生の日常(a)
3:
4:
5:
6:
7:
8:
9:
10:
11:
12:少女の記憶を消す(b)
13:
14:
15:
16:
17:
18:少女が殺される(c)
19:
20:殺し屋としての対決(d)
21:
22:
23:エピローグ

ここまで埋めた後は、何をするのか?

隙間を埋めていくのです。

「奥森先生の日常」と「少女の記憶を消す」の前に当然、あるべき「シーン」があります。

「奥森先生の日常」

「少女との出会い」(e)

「悩みを聞く」(f)

「少女の記憶を消す」

eとfのシーンができました。

さらに、eとfの間には何があるでしょうか?

性格にもよりますが、医師とはいえ、初対面の相手に、いきなり悩みを打ち開けないでしょう。

信頼を得る必要があるでしょう。

「少女との出会い」

「信頼を得る」(g)

「悩みを聞く」

さらに具体的に「どんなことをしたら信頼を得られるのでしょう?」

答えは『MIND ASSASSIN 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)』で実際に読んでみてください。(※試し読みできます)

他にも、いくつかのビートの意義にもとづくテクニックはありますが、それはビートを理解しているかどうかになってくるので、ここでは割愛します(かんたんに身につくものではないので、じっくり学んでください)。

シーンをマンガにする

23のシーンを、必ずしもすべて埋める必要はありません。

構成はあくまで方針です。

設計図通りにいくことが目的ではなく、面白くなることが一番たいせつです。

面白いアイデアが浮かんだりすれば、どんどん変えていくべきです。

そういう意味では、多少、余白があった方が変更しやすいかもしれません。

作者ごとのスタイルに寄りけりので、自分にあったラインを見つけるしかありません。

ただし、マンガの前にネームはしっかり書くべきでしょう。

ネームを書かないなんていうアーティスティックな漫画家(あるいはド素人?)がどれだけいるか知りませんが、ペン入れする手間など考えれば、ネームはほぼ完璧に作っておくべきでしょう。

2:奥森先生の日常(a)

というシーンを見開きで描くとします。

コマをどんなサイズで、いくつにするか?

どんなセリフを言わせるか?

この辺りは、マンガ家の腕の見せ所なので、門外漢の僕が言うことではありませんが、ここでもビートの考えは使えます。

ビートの考えはシーンにも使えるのです。

つまり120分の映画にも、10分の短篇にも使えるのですから1分のシーンにも使えるのです。30秒のTVCMにも使えます(※もちろん使い方にそれぞれ違いは出ます)。

見開きのシーンにビートを使うとしたら、そのシーンでの「見せ所」を決めるのです。

「見せたい画」「言わせたいセリフ」などが、そういった候補でしょう。コマのサイズも自然と大きくなるでしょう。

他のコマはそこまでの繋ぎになるので、そこを引き立てる流れをつくるべきでしょう。

こういった繋ぎのリズムは映画でいう「編集」のリズムです。

編集の考え方としては構図の記事で紹介した『マスターショット』をオススメしますが、マンガ関連の本でもっとダイレクトに効果的な本があるかもしれません。

四コマと同じ

「コマ割り」の記事で紹介した手塚治虫の本でも「四コマまんが」が基本だということが書かれています。

マンガのスクールなんかでも「まずは四コマを描いてみよう」という授業がありそうです。

四コマはそれぞれのコマが「起承転結」と言われます。

「起承転結」は「構成の一種です。

エッセイマンガや日常系の四コマまんがで、四コマのリズムでストーリーが進んでいくタイプのマンガがあります。

これは先程、説明した「見開きでシーン」を構成していく考えて方を「四コマ」リズムでやっているだけのことです。

ただし「起承転結」はビートが3~4つしかないことになります。

四コマであれば充分ですが、長くなれば、もう少しビートが欲しいところです。

そういう意味でビートシートを応用する方が、ストーリーにリズムが生まれるのは間違いありません。

さいごに

マンガについて、映画演出とストーリーの側面から考えてきました。

「読書会」ではビートに関する研究、「合評会」ではそれに基づいた創作を目指しています。

何度も言うように作画に関しては門外漢ですが、ストーリーに関してはマンガを描かれる方にも勉強になることがあるかもしれません。

ご興味あれば、マンガ関係の方のご参加もおまちしております。

「読書会」について

この記事に関してこちらのラジオで話しております→ 【物語ラジオ】マンガと三幕構成(#2)(1/8公開)

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