「感想」「批評」「分析」(三幕構成48)の記事でも示した通り、「物語分析会」における「分析」の客観性を高めるため、時間の使い方を分割していこうと考えています。
具体的には以下です。
Act1:感想の時間
作品に関して思ったことを自由に言ってもらいます。「分析会」前の状態に近い意見。セットアップとも言えそうです。
Act2:分析の時間
きちんと分析してきた人の意見を中心に客観性の高い分析を考えます。「きちんと」の定義は後述します。
Act3:自由発言の時間
感想や分析の時間を経て、感じたことなどを改めて自由に話します。批評的な意見が自然と含まれるでしょうし、初心の方は参加前の感じ方が「分析会」を通して変化していたら、参加した意義を感じていただけるかと思います。「分析会」は対話の場です。自分の言葉を述べ、他者の言葉に耳を傾けることで成長できる場になれば幸いです。
きちんと分析するとは?
「分析の時間」では「ログライン」「セントラル・クエスチョン」「スリーポインツ」「各ビート」「プロットタイプ」「テーマ」を中心に聞いていきます。
初心の方、よくわからない方は聴いているだけで構いませんが「分析」に参加される方は、以下の基本ルールに則って発言してください。
「ログライン」はその場で言っていただいても構いませんが、考える時間はとりませんので、なるべく事前に「文章化」してきてください。
「スリーポインツ」と「各ビート」は、該当シーンを「箇条書きに文章化」して「時間」と「全体のパーセント」を計算してきてください。
具体例は僕の記事をご覧ください。
映画『search/サーチ』(三幕構成分析#117)のスリーポインツの部分
「〇〇したあたり」とか「あの辺」といわず、なるべくシーンとして特定していきましょう。
「このセリフ」とか「この瞬間」みたいな、より細かい特定でも構いません。
特定しづらい長いシーンもありますが、自分なりの基準で「箇条書きに文章化」にして「映画の何分の地点か」を特定してください。
また分は、全体からの何%かも各自で計算してください。
計算式は「シーンの時間/(全体の時間-エンドロール時間)×100」です。
絶対ではありませんが、基本ルールは以下とします。
・秒単位は四捨五入でも切り捨て、繰り上げ、自由に処理して構いません(長編映画では1分ぐらい大差でない。短編などでは注意)。
・オープニングクレジットは作品に含む。映像などが示されてイメージシーンとしてビートになってる場合があります。
・エンドロールは黒画面にスタッフ名が流れ始めた地点以降。まれにエピローグがエンドロールに挟まれているが含まない。
※他に疑問があったら「分析会」で質問してください。
ここまでは「きちんと分析」してきた人を中心に進めます。以降は、誰でも発言可。
「プロットタイプ」は「似た映画」をあげる作業です。
「ストーリータイプ」と「プロットタイプ」の違いは大事にして欲しいところですが、難しくもあるので分析会の中で、その都度、説明していきます
参考「三幕構成と恋愛(プロットタイプとストーリータイプの違い)」(三幕構成25)
とにかく、何らかの要素で、主観的に「似てる」と思った作品を自由にあげてもらいます。
「テーマ」と「セントラル・クエスチョン」はなるべく構成を意識して拾って欲しいところではありますが、そもそもが抽象的ではあるし「批評」につながるところでもあるので、こちらも誰でも発言可とします。
分析表テンプレート
これは僕が使っているExcelのテンプレートの最新版です。
この表を使うことは「きちんと分析する」に含まれませんので、使うかどうかは自由ですが提供しておきます。
ちなみに「仕事として分析」する際にも使っています。
入力方法は複雑なので基本的には「分析会」での質問のみ答える形とさせていただきますが、個人的にSNSなどで発表したいなどあれば個別に連絡ください。
当サイトにリンクする条件で公表も許可します(個人使用は自由、いずれにせよ無償)。
※テンプレート入力方法
文章理解度の高い方向け、雑な説明のみ書いておきます。
1:「Title」は題名。年度を入れておくと便利。
2:映画の全体時間を右上「Runing Time」へ入力。
3:エンドロールの時間を右上「Credit Time」へ入力。
4:右上Scoreの「Su」「O」「Sc」は、「好き」「作品」「脚本」の採点のこと。
5:映像を「気になるシーン」で止めて、「分析表」本文外(左側)の「時間」(※テンプレでは120と入ってる欄)に入力すると、パーセントが自動計算される。※配信サイトの表示によっては「逆算用」のセルが便利。
↓
分析表本文の「%」の数字と、Aの列の交差するところに、そのシーンの時間を入力。シーンの内容を一つ右のセルに箇条書き。
6:気になるシーンのピックアップをくり返していく。B~Eは主人公が複数人いるときや、現在と過去が入り混じるときなどに利用。使い方は自由。
7:一通りシーンを拾ったら、分析表本文の「Beat」列のビートを、シーンと一致させていく。不要なものは削除。アイデアがあれば、オリジナルを加えてもいい。
8;「スリーポインツ」のセル下部には下線を引く(右上のグラフと一致させるには青線推奨)
9:分析表本文の「E」(Emotion)の列に、盛りあがりの数字を10段階で入れていく。主観的感覚で構わない。
10:右上グラフの青線の位置を、%に合わせて左右移動。線をクリックしてテンキーで左右移動。
11:全体を見て「Subject Oridinality」に「題材、オリジナル要素などを入力」。主観的で構わない。
12:「Arc/Touch」はログライン的でもいいし、ざっくりと「誰が何をする話か」ぐらいでも。明確に類似のプロットタイプがあれば書いておく。とくにアクト2に注目して考えるとよい。Touchは演出、雰囲気全般に関する覚えがき。
13:「Engine」は観客を惹きつけるための要素が何があったか? 主観的で構わない。
14:「Pain/Love」は人物たちの「痛み」や「愛情」に注目して拾いあげる。主観的で構わない。
15:分析表本文最下部「Gift」は、見終わった後にどんな感情が残るか主観的に。不要なものは削除。他にあれば自由に足して可。
16:分析表本文右下に「分析日」や「分析者」を入力。
※その他、必要に応じて色などつけると見やすくなる。表が見やすいと、自分の頭の中も整理される。
17:PDF印刷すると、ファイル化ができて完成。
18:jpgにしたいときは、こちらを借りる。
https://www.ilovepdf.com/ja/pdf_to_jpg
19:以上、完成。おつかれさまでした。
●以下追記:2023.5.15
最新版のテンプレには以下が追加されています。
20:Yearは映画の公開年度記入欄。
21:Budegetの欄はIMDbのBox officeより入力。
上から、
Budget
Opening weekend US & Canada
Gross worldwide
を入力。
自動計算されるパーセントはBudgetに対する割合、最下段はGrossからBudgetを引いた利益分。
緋片イルカ 2023.2.26
2023.3.7 セントラル・クエスチョン追記
2023.5.15 template更新