「セリフの名前表記について」という記事では『クレヨンしんちゃん』の野原家と、『ドラえもん』の野比家の違いから、メインストーリーの違いを説明しました。
『クレヨンしんちゃん』は「しんのすけを含む野原家」を中心としたストーリー
『ドラえもん』は「ドラえもんとのび太含む子供たち」を中心としたストーリー
このことは番組のビジュアルイメージからも伝わります。
テレビ朝日『クレヨンしんちゃん』のページ
https://www.tv-asahi.co.jp/shinchan/
主人公のしんのすけを中心に野原家、その周りに幼稚園の友だちが配置されています。つまり「野原家」がメインストーリーなのです。
BS朝日『ドラえもん』のページ(※テレビ朝日は動画だったので)
https://www.bs-asahi.co.jp/doraemon/
こちらではドラえもん、のび太を中心に子供たちが並んでいます。野比家の話ではなく「子供たち」のストーリーなのです。
自分が、サイトのページをつくる宣伝担当だと想像してみてください。
その作品の「魅力となる部分」を一枚のビジュアルで伝えるには、どんなものにすればいいだろうか?
ポスター、チラシなどには専門のデザイナーがいて、その結果として出来上がったものです。
メインキャストが大きく映るのは当然ですが、その中でも主人公の内面性が浮かび上がってくるものは良いものと言えるでしょう。
最近見たもので個人的に気になったのは、
https://whale-movie.jp/
ただキャストの顔を見せるだけでなく、この主人公の背景にあるストーリー性を感じさせます(沈黙の艦隊は原作を知ってるからかもしれませんが)
ちなみに、どれもアップなのはスマホで「映画情報サイト」を見たときなど、小さなアイキャッチ画像になってしまうときの印象を踏まえているからでしょう。
『ダイ・ハード』では、はじめブルース・ウィルスのアップで宣伝したら「テレビスター」だと馬鹿にされたため、「高層ビルとテロリスト」というストーリー部分を前面に打ち出したため、このようなデザインに変更になったそうです。ストーリー説明の文章が長いのも、その影響でしょう。
前にどこかの記事で書いた気がしますが、
https://amzn.to/3qxnNxf
少しデザインに古さはありますが「ラブストーリー」「豪華客船」の情報を伝えながら、ジャックとローズのショットは『タイタニック』の「ミッドポイント」にあたるショットです。
つまり、ストーリーの中で「一番盛り上がるシーン」がポスターにも使われているわけです。
こんな話は枚挙にいとまがないので、ここまでにしておきます。
本題はここからです。
作家としては「自分の書いたストーリーのポスターを想像してみる」のです。これを「ストーリーのビジュアライズ」と呼んでおきます。
絵を描けなどとは言いません。構図のバランスとか、トーンや陰影など、美的なセンスも問いません。載せるべき「要素」を考えましょうということ。
主人公のキャストは、どんな人(役者)で、どんな衣裳で、どんな角度でどんな表情をさせるか?(最初にあげた三枚のポスターはどれも目線が違い、それぞれ思想性が違います)
舞台(高層ビルや豪華客船)や、フックとなる装置(潜水艦)として、載せるべきものは何か?
舞台や装置が、いくつも候補があがるようでは、ストーリー自体がバラけてる可能性もあります。
「ログライン」に入れるべきような、「フック」となる舞台や装置が何かです。
ラブストーリーを想像してみてください。
情熱的な二人(男女とは限りませんよ?)が載るのは当然ですが、二人はどんな立ち位置ですか?
背景は何でしょう? 都会? 砂漠? ジャングル? 宇宙?
それぞれ、浮かびあがってくるストーリーが違います。
あまり古い映画のポスターが見つからなかったので、2つだけ。
「企画書」であれば、こういった写真やイラストを入れてしまうのもテクニックの一つです。
このサイトの構成論の一番、最初の記事は「フックのある企画から」です。
「ログライン」や「ビートシート」をいくら学んでも、「フック」がなければ面白い話など作れません。
「フック」があれば、ストーリーをビジュアライズできるはずです。
構成だけでなく「良いシーン」があれば、『タイタニック』のようにビジュアライズできるはずです。
「ビジュアライズ」を反対に辿ることもできます。
たとえば、一枚の写真から、物語を想像するのです。
映画館に行ったときなどには、ぜひ知らない作品のポスターやチラシを眺めてみてください。
文字を読む前に「ストーリー」や「フック」を想像してみるのです。
自分が浮かべたストーリーの方が面白かったら、ぜひ書いてください。
意図的に「ストーリーのビジュアライズ」をすることで、気づきや創作ネタが見つかると思います。
緋片イルカ 2023.6.11