ビート説明03「プロットタイプについて」(三幕構成17)

以下は、過去に映画の勉強会に参加していた方達にビートを説明した際に用いた資料です。HDDから発見したので公開しておきます。映画を初見でプロットポイント1、2、ミッドポイントがつかめるぐらいに三幕構成を理解している方に向けています。初心者の方はどうぞこちらからご覧ください。

プロットタイプについて

プロットタイプとは一言で言ってしまえばビートが定跡化したプロットのパターン。

例えば「男女の恋」という題材を扱うとすれば必然的に
「出会い」のシーンがあり、
「関係を深める」(要はデート)シーンがあり、
「結ばれる」シーンがある(セックス、キス、結婚などなど)。
この3つのシーンを構成上どこに置くかだけでも、ストーリーが決まってくる。
ラブストーリーである以上、「出会い」はカタリストかPP1以外ありえない(※トップシーンで出会うのもありえるがCCの前に出会わせる弊害を処理する必要がでてくる)。
関係を深めるシーンは普通に考えるならアクト2のバトルで、MPで二人の気持ちは最高潮になり、PP2で一度離れるが、アクト3のビッグバトルで、プロポーズなどをして完全に結ばれる。

この押さえるべきところを押さえなかったら、面白い作品だとしても、ラブストーリーとは受け取ってもらえない。例えば「出会い」をカタリスト、「デート」をディベートで、「PP1」で結婚してしまったら、その後のアクト2で展開されるのは「結婚生活」になり、恋愛ではなくなる。

よって、ある程度ビートを理解している人が、同じテーマを扱って書いた場合、似た構成にならざるを得ない。こういうものがプロットタイプとなる。ちなみにアート映画を目指すならあえてビートを外すというテクニックもありえる。いつ出会ったのかも説明のないところから二人のデートシーンなどで始まり、あるシーン以降、説明もないまま結婚指輪をしているとか(フランス映画などでありそう)。これは説明が丁寧かどうかの違いで、きちんとわかるように描いてあれば、ビートを外すことは可能である。ただし物語段階で破綻している場合は、ストーリーが作れていないだけなので、こういうのがやりたければ、2稿3稿でビートシーンを削っていけばいいだけである。

ラブストーリーには大きく二つのプロットタイプがある。
「運命の人プロット」と「バディラブプロット」

「運命の人プロット」は「ロミオとジュリエット」「風と共に去りぬ」「タイタニック」「君に読む物語」「ブロークバックマウンテン」「愛を読むひと」「ウェイトレス」など。
など。
カタリストないしPP1で出会った二人は、雷に打たれたように恋に落ち惹かれ合う。一目惚れプロットと呼んでもよい。
気持ち的にはお互いを求めているが、二人の間には障害がある。(身分の違いとか、不倫とかゲイであるとか、ナチスであるとか)。そのせいで葛藤しつつ、それでもMPでは「結ばれる」(結ばれてしまうという言い方のが正しい場合もある)。
フォール(迫り来る悪い奴ら)では敵役や事件が動き出し、PP2までに二人の関係は引き裂かれ、アクト3へ・・・。
運命の人プロットのポイントは、二人を引き裂くほどの障害がどんなものか?といったところのオリジナリティかもしれない。

「バディラブプロット」は「或る夜の出来事」「ローマの休日」「プリティ・ウーマン」「ノッティングヒルの恋人」、その他ベタなラブコメ。
運命の人プロットとは逆で、カタリストで出会った二人はお互いを大嫌いだと思うようなところから始まる。PP1で何かEXTな目的のために共同作業をしなくてはいけなくなり、その過程でお互いの良さを理解していき、MPでふっと心の内を明かすようなシーンがたいていくる。PP2では共同作業が終了して二人は別れることになる。早く終わりたいと思っていたはずなのに、終わってみたら本当の自分の気持ちに気付く。そして、思いを告げにアクト3へ・・・。
これは男女ではなく、男同士の友情物語として描かれることもあり、そういう意味では「48時間」「ミッドナイトラン」「デューデート」「大災難PTA」といったものも構造は同じ。
このプロットにはアクト2にあたる「共同作業」が何であるかで雰囲気が全く変わる。ローマの休日のように「記事のために」といった印象の弱いものだとラブストーリーに見えるし、「ミッドナイトラン」のようなミッションが目立っていると、同じ構造だと気づきにくい。
また「バディ」という言葉はキャラが二人であれば、何でもバディと呼んでしまう人が多く、例えば「テルマ&ルイーズ」や「メンインブラック」のようなものは、バディの関係に変化はなく「逃亡」や「ミッション」の方がメインである(きちんと分析してないがたぶんMPが違う)。
また、「共同作業」の一つとしてどこかまで移動するというロードムービーになっていることも多いが、その面白さは旅をすることだけでなく、バディ同士の愛情・友情が深まっていることが名作かどうかを分けているのではないかと思う。バディの深まりがないロードームービーは雰囲気重視になってドラマが弱い。

同じ「恋愛」という題材を扱っていながら、「運命の人プロット」になるか「バディラブプロット」になるかは、出会った時に一目惚れするか、大嫌いになるか、キャラクターの性格による部分も多い。観客に伝わる感情として「ドキドキ」する恋愛感が伝わるのは明らかに前者であるので、こちらが正当なラブプロットと呼べるのかもしれない。こういった定義はともかく、物語のポイントとなる要素と、作者としてどういうことをテーマにしたいか、観客に何を伝えたいかなどが決まれば、逆算的にプロットは決まるのである。

いくつかのプロットタイプ
「探偵プロット」ポイントはミステリー。主人公は探偵役で、PP1で捜査開始、PP2で犯人がわかり、アクト3で犯人と対決。

「逃亡プロット」ポイントはサスペンス。主人公は罪を犯して逃亡開始がPP1、MPで刑事に迫られる。PP2で追い詰められて、アクト3で改心するかどうか。できずにバッドエンドになるものもあるし、探偵プロットとのミックスで、無実を証明する場合もある。

「メンタープロット」ポイントはレッスン。ある未熟な主人公が、ある師匠の元で何かを学び始めるPP1、PP2で師匠が敗北したり死んだりしていなくなり、アクト3は自分の力で修行の成果を証明する。師匠そのものが敵になるツイストをかけたパターンを「バッドメンタープロット」と呼ぶ人もいる。

「ミッションプロット」ポイントは作戦。「オーシャンズ11」「インセプション」「7人の侍」とか。カタリスト、PP1で難しいミッションを依頼されて、MPまでにじっくりと作戦の準備をしていく。後半が大きなビッグバトルになっているような感じ。

「アンダードッグプロット」ポイントは反抗心。落ちこぼれた主人公(とコーチ)が、勝ち上がっていき、周りの予想を覆すような成果をMPで上げる。PP2では「やはり俺はダメなんだ」というところまで落とされて、アクト3で・・・。

「コントラストプロット」ポイントはテーマの対比。正反対な二人のキャラクターのアークを並列的に描く構成。

「災害プロット」ポイントは災害や危機、犯罪に巻き込まれるとか。隕石はもちろん自然災害ものなど。PP1で危機が迫る、あるいは巻き込まれ、どう生き延びていくか。実はPP1に危機が迫ってから90分をどう保たせるかが難しい。別プロット(たいてい家族かラブ)を絡めることも多い。ホラーも含めてしまっても良い。

「魔法のランプ」ポイントは魔法。アクト2で特殊な能力や魔法、体変換などSFやファンタジー要素が起きる。これとアクションのミックスはスーパーヒーロープロットになっていく。

「フールトライアンフ」ポイントは無垢な主人公と体制。構成は基本通りだが、主人公の成長よりも「変わらなさ」「まっすぐさ」などが面白さの要因になっているタイプ。知的障害、子供、動物など。キャラクターの一種と捉えることもできるが、フールなキャラが主人公になった時には独特なストーリーになる。

他にも、2~3作品で似た構造を見いだせるタイプはあるが、どこまでをプロットタイプと呼ぶかは定義次第なので、キリがない。
以上

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