マスタープロット5:エスケープ(ESCAPE,脱出)

「マスタープロット」一覧

三幕構成 中級編(まえおき1)

三幕構成の中級編と称して、より深い物語論を解説しています。

中級編の記事ではビートを含む用語の定義や、構成の基本、キャラクターに対する基本を理解していることを前提としています。しかし、応用にいたっては基本の定義とは変わることもあります。基本はあくまで「初心者が基本を掴むための説明」であって、応用では例外や、より深い概念を扱うので、初級での言葉の意味とは矛盾することもでてきます。

武道などで「守」「破」「離」という考え方があります。初心者は基本のルールを「守る」こと。基本を体得した中級者はときにルールを「破って」よい。上級者は免許皆伝してルールを「離れて」独自の流派をつくっていく。中級編は三幕構成の「破」にあたります。

以上を、ふまえた上で記事をお読み下さい。
参考記事:「三幕構成」初級・中級・上級について

超初心者の方は初心者向けQ&A①「そもそも三幕構成って何?」から、ある程度の知識がある方は三幕構成の作り方シリーズか、ログラインを考えるシリーズからお読みください。

マスタープロットシリーズ(まえおき2)

マスタープロットシリーズは『20 Master Plots: And How to Build Them』を引用、補足した内容です。以下、指定のない引用箇所はすべて本書から。翻訳文は「DeepL翻訳」に明らかな誤訳は断りなく修正したものです。

登場作品

The Prisoner of Zenda by Sir Anthony Hope Hawkins:『ゼンダの囚人』
Typee by Herman Melville:『タイピー 南海の愛すべき食人族たち』
“The Ransom of Red Chief” by O. Henry:『オー・ヘンリー傑作集2 最後のひと葉』
Midnight Express by William Hayes and William Hofer (made into a film by Alan Parker):『ミッドナイト・エクスプレス』
“Occurrence at Owl Creek Bridge” by Ambrose Bierce:『アウルクリーク橋の出来事,豹の眼』
films such as Papillon:『パピヨン』
The Invasion of the Body Snatchers:『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』
The Great Escape:『大脱走』
Stalag 17:『第十七捕虜収容所』
It is also a familiar theme of fairy tales: the child who is being held prisoner by a witch or an ogre.:魔女や鬼に囚われた子供という、おとぎ話でもおなじみのテーマでもある。
John Carpenter’s Escape From New York:『ニューヨーク1997』

概要

The escape plot is physical, and as such, concentrates its energy on the mechanics of capture and escape. That would eliminate stories about characters who try to escape a personal demon (such as addictions, phobias, and dependencies). Those are character plots (plots of the mind). Escape in this plot is literal: The protagonist is confined against her will and wants to escape.

脱出のプロットは物理的なものであり、そのため捕獲と脱出のメカニズムにエネルギーが集中する。そうなると、個人的な悪魔(依存症、恐怖症、依存症など)から逃れようとする登場人物の話は除外される。それらはキャラクターのプロット(心のプロット)である。このプロットにおける脱出は文字どおりである: 主人公は自分の意志に反して監禁され、そこから逃れたいと思っている。

The thrust of this plot is in many ways the flip side of the rescue plot. In the rescue plot the reader follows the rescuer, and the victim waits patiently to be saved. In the escape plot, however, the victim frees herself. The moral argument of this plot tends to be black and white: The hero is unjustly imprisoned. But not always. Sometimes the essence of the escape plot is nothing more than a test of wills between two strong personalities: the jailor and the jailed.

このプロットの推進力は、多くの点で救出劇の裏返しである。救助のプロットでは、読者は救助者の後を追い、被害者は救われるのをじっと待つ。しかし、脱出プロットでは、被害者は自分自身を解放する。このプロットの道徳的主張は白黒はっきりしがちである: 主人公は不当に投獄されている。しかし、いつもそうとは限らない。脱獄プロットの本質は、2つの強い個性の間の意志のテストに過ぎないこともある。

The story typifies the three dramatic phases of the escape plot. In the first phase, the protagonist is imprisoned. The crime may be real or imagined (the protagonist accordingly guilty or innocent).

この物語は、逃亡劇の3つの劇的な段階を象徴している。第一段階では、主人公が投獄される。犯罪は現実であったり想像であったりする(主人公はそれに応じて有罪であったり無罪であったりする)。

The second phase of the escape plot deals with imprisonment and plans for escape.

脱走計画の第二段階は、投獄と脱走計画を扱う。

The third phase consists of the escape itself. Usually the well-laid plans of the second dramatic phase fall apart. (If they didn’t, the action would be too predictable.) Wild cards come into play. Enter the unexpected. All hell breaks loose. To this point the situation has been tightly controlled by the antagonist, but suddenly the situation becomes fluid, out of control either by gratuitous circumstance or by design of the hero.

第3段階は脱出そのものである。通常、第2段階での綿密な計画は崩れる。(そうでなければ、アクションが予測可能すぎるからだ)ワイルドカードが登場する。予想外のことが起こる。大混乱が起こる。この時点まで、状況は敵役によってきっちりとコントロールされていたが、突然、状況は流動的になり、無償の状況かヒーローの意図によってコントロール不能になる。

The third dramatic phase is usually the most active of phases. Since the second phase consists of escape plans, the third phase is the realization of the escape itself, even though most often it’s under circumstances different from those planned in the second phase.

第3の劇的な段階は、通常、最も活動的な段階である。第2段階は逃亡計画で構成されているので、第3段階は逃亡の実現そのものであり、多くの場合、それは第2段階で計画されたものとは異なる状況下にある。

Your responsibility as writer is to keep the reader off-balance by constantly shifting the terms of the escape. Nothing goes as planned; something always goes wrong. And that’s the joy of it.

作家としてのあなたの責任は、常に逃亡の条件をずらすことで読者のバランスを崩し続けることだ。計画通りにいくことはなく、常に何かがうまくいかない。そして、それこそが喜びなのだ。

チェックリスト

1. Escape is always literal. Your hero should be confined against his will (often unjustly) and wants to escape.

2. The moral argument of your plot should be black and white.

3. Your hero should be the victim (as opposed to the rescue plot, in which the hero saves the victim).

4. Your first dramatic phase deals with the hero’s imprisonment and any initial attempts at escape, which fail.

5. Your second dramatic phase deals with the hero’s plans for escape. These plans are almost always thwarted.

6. Your third dramatic phase deals with the actual escape.

7. The antagonist has control of the hero during the first two dramatic phases; the hero gains control in the last dramatic phase.

1. 脱出は常に文字通りの意味である。主人公は自分の意志に反して(しばしば不当に)監禁され、脱出を望んでいるはずだ

2. 筋書きの道徳的主張は白黒はっきりさせること。

3. 主人公は被害者でなければならない(主人公が被害者を救う救出劇とは対照的)。

4. 最初のドラマの段階は、主人公が投獄され、最初の脱出の試みが失敗することを扱います。

5. 第二の劇的段階は、主人公の脱出計画を扱う。これらの計画はほとんどの場合阻止される。

6. 第3の劇的段階は、実際の脱出を扱います。

7. 敵役は最初の2つのドラマチック・フェイズで主人公を支配し、主人公は最後のドラマチック・フェイズで支配権を得る。

考察

「レスキュー」のVictimを視点において、主人公にした型という捉え方がわかれば十分。「このプロットの道徳的主張は白黒はっきりしがちである(he moral argument of this plot tends to be black and white)」というのも、イクスターナルなプロットになるというのもレスキュー同様。本文でも、キャラクターについてはあまり触れられていないが、レスキューの主人公=救助者が何としてでも助けだそうという強い意志をもっているのと同様に、何としてでも脱出しようという動機や意志が欲しいところだが、Victimであることの調整が必要。『ミッドナイトエクスプレス』のように捉える側が強固であることでバランスをとったり、拘束されることで本来の能力を発揮できないなどのハンディキャップが有効かもしれない。テンポとしては「レスキュー」では時間が経つほどVictimに危険が迫るタイムリミットが入り、自然とスピーディな展開を求められることになるが、「エスケープ」ではVictimの視点で、じっくりと脱出作戦を練る過程が描けるのでゆったりになる。本文では物理的な(physical)プロットと言っているが、「レスキュー」よりもキャラクターアークやmindを描く余地があると思う。

イルカ 2024.2.26

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