三幕構成の作り方 Step3「その旅って面白いの?」(全8回)

書くために使おう!

このシリーズは三幕構成を「自分の作品に応用する」ことに着目して解説しています。段階的な説明になっているのでStep1からご覧ください。

本格的にビートなどを理解したい方や基礎知識のある方は「ログラインを考える」シリーズをご覧ください。音声解説もあります。

また、三幕構成の分析や創作の実践に興味がある方は「読書会」へのご参加をお待ちしております。こちらも音声解説があります。

今回のテーマ「その旅って面白いの?」

前回は「旅」と「主人公」は一体だという学習をしました。
今回は、その「旅」+「主人公」=「物語」が面白いのかどうか、という根本的なことを考えていきます。

準備不足のまま何百ページも書いてみて、ふとキャラクターが魅力に欠けているのに気づいて愕然とすることがありえます。
そうならないためにも早い段階で物語が面白いのかを考えておくのは大切です。

プロの現場であれば企画書が悪ければ、その企画自体が動きません。
見る人が見れば、シノプシスやプロットの時点で惹きつけるものがあるかないかぐらいは、わかってしまうものです。

具体的にみていきましょう。

今回の課題「感動スポットを見つける」

やや抽象的な話が多くなりますが、大切なことなので説明していきます。

まず、よく勘違いしている人がいますが、三幕構成に当てはめて作ったからといって必ずしも面白くなるわけではありません。構成を神聖視している人や、講習会でお金をとっているような人の中には、三幕構成を最強の理論のように言う人がいますが、そんなことは決してありません。

考えてみてください。

ハリウッドの大作映画は、すべてと言っていいほど三幕構成をとりいれています。ハリウッドではあたりまえのセオリーだからです。それでも面白いものと、そうでないものがありますね。演出とかは抜きにして、明らかにストーリーとしての差があります。なぜでしょう?
「Q&A「ビートシート通りなのにつまらない……」の記事も参考にどうぞ)

ここで考えなくてはならない問題があります。三幕構成以前の問題です。

それはあなたの面白いって何ですか?ということです。

ハリウッド映画で名作と言われる映画でも、面白くないと言う人もいます。反対にくだらないB級映画が好きな人もいます。感性は人それぞれです。

「あなたの面白いって何ですか?」という質問はあなたが考えている「物語」は面白いと自信をもって言えますか?とも言い替えられます。

自分すら面白いと思っていない物語を、他人が面白いと思うはずがありません。

電車でたまたま隣り合った人に話しかけると想像してみてください。

「今日、カレー食べたよ」なんて、どうでもいい話をして聞いてくれるでしょうか? 知人なら聞いてくれるかもしれませんが、他人からしたら「だから何?」としか浮かびません。

「今日、人生で一番おいしいと思うカレーを食べたんですよ」と話しかけられたどうでしょう?

「どこの店だろう?」「どんなカレーだろう?」と興味を持ってもらえるかもしれません。「人生で一番」という自信や、カレーのおいしさに感動しているから、聞く方も心を動かされるのです。精神論みたいですが熱意や感動はたしかに伝わるのです。「感動」は面白さの源泉です。

「感動」という言葉から涙をボロボロ流すような状態を感動と浮かべる人もいるかもしれませんが、ここではもう少し広い意味で「感情が動く」と定義しておきましょう。「笑う」「不安」「怖い」「恋愛」「興奮」「ナルホド!」こういった感情はすべて感動と呼んでおきます。これらは、そのままジャンルにも当てはまります。

「笑う」=コメディ
「不安」=サスペンス
「怖い」=ホラー
「恋愛」=ラブストーリー
「興奮」=アクション
「ナルホド!」=ミステリー

これらを「感動スポット」とでも呼んでおきます。感動スポットさえ見つかれば三幕構成を使って構成していくことができます

「感動スポット」は旅で喩えるなら観光のオススメスポットです。

あなたが住んでいたり、よく知っている町を、観光に訪れる人に紹介するとします。

「どこがオススメ?」と聞かれて、自信をもって勧められる場所はどこでしょう?

有名なだけの場所であれば、テレビや雑誌ですでに紹介されているはずです(物語でいえば類似作品がすでにあるはずです)。

それでも、どうしても勧めたいのであれば、特別な思い入れがあるはずです。そこが作者の新しい視点になってオリジナリティにつながる可能性があります。

メディアに取り上げられていない場所であれば、それだけで新しいネタになる可能性があります。

また、誰にオススメするのか?という視点も必要です。

歴史が好きな人には歴史に関わる場所がオススメになるし、食べることが好きな人には料理がオススメになったりするのです。

これは、観客にどんな旅(物語)を提供したいのか?ということです。物語の中には主人公にとって旅がありますが、観客にとっては「あなたの物語」に触れることが旅なのです。

あなたのオススメしたいスポットが一つでも決まれば、ツアーの予定は決まってくるでしょう。同じように「感動スポット」が決まれば、三幕構成を使って物語を組み立てることができるのです。

では、前回のクイズを解説します。

「桃太郎」と「赤ずきん」。
「スイーツバイキング」との組み合わせで、面白くなるのはどちらでしょう?
その理由は?

でした。

答えは「どちらも面白くなる」です。

ここまでお読みいただいた方なら、おわかりと思いますが「感動スポット」の見つけ方次第なのです。一つでも、答えを考えられた人は自分なりのオススメスポットを持っている人だと思います。ただ「わからない」と思った人は、まだ見つけられていないのです。

そういう方のために、いくつか「感動スポット」の例を示しておきます。

「桃太郎」は「スイーツバイキング」で、鬼とデザート大食い対決をすることになる。(感動スポット「笑う」=コメディ)

「赤ずきん」は「スイーツバイキング」で、迷子になっておかしな国へ迷い込む。(感動スポット「不安」=サスペンス)

「桃太郎」は「スイーツバイキング」で、人肉ケーキの食材にされそうになる。(感動スポット「怖い」=ホラー)

「赤ずきん」は「スイーツバイキング」で、イケメンパティシエに新ケーキの味見をしてほしいと頼まれる。(感動スポット「恋愛」=ラブストーリー)

「桃太郎」は「スイーツバイキング」で、テロ組織の人質に囚われる(感動スポット「興奮」=アクション)

「赤ずきん」は「スイーツバイキング」で、起きた殺人事件の犯人を甘~く推理する(感動スポット「ナルホド!」=ミステリー)

「感動スポット」を見つけることはジャンルを決めることに似ています。ジャンルとは伝え方の形式です。それに則ることで「感動」が伝わりやすくなるのです。

けれど、ジャンルに当てはまらない物語だってあります。

「桃太郎」は「スイーツバイキング」で、人生を考える。

という哲学的な話でも、作者自身が「どうしても書きたい」(オススメしたい=書きたい)と思うなら、それで構わないのです。売れるだけが物語の目的ではないのです。

自分が面白いと思える、感動しているなら必ず共感してくれる人がいるはずです(ただし、自分ですら面白いと思えないものはやめましょう)。

次回へ向けて

三幕構成はハリウッドで使われているせいで「売るための技術」のように宣伝されるところがありますが、あくまで「メッセージを伝えるための技術」です。だからCMにだって、スピーチにだって、プロパガンダにだって使えてしまいます。

プロポーズにも使えます。

ただし、気持ちをうまく伝えたからといって、相手がOKしてくれるかは別問題です。本当の愛があれば、言葉なんて拙くても伝わるでしょう。

その愛情にあたるものこそが、今回の「感動スポット」なのです。

構成がめちゃくちゃだったとしても、思いの強い物語は、人を感動させます。

けれど、その物語が、よく構成されていれば、より多くの人を感動させるでしょう。

「感動スポット」のない、つまらないネタをおもしろおかしく構成することも、できなくはありません。こけおどしに過ぎませんが、仕事として物語をつくるときには、そういう技術が必要なこともあります。

けれど、作者が何を描きたいかが定まらないと、三幕構成の使いようもないのです。

あなたが書こうとしている物語の「感動スポット」はどこでしょうか?

さいごにクイズです。

「浦島太郎」の「感動スポット」はどこでしょう?

次回は、より具体的な構成の話に入っていきます。

「三幕構成の作り方シリーズ」は毎週月曜8時更新です。

次回 → Step4「ツアーを組もう」
緋片イルカ 2020/03/11

今回の内容はログラインを考える1「フックのある企画から」に関連します。

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