テーマは文章にせよ(文章#27)

物語を考えるときに、多くの人が「テーマ」を考えがちです。

「愛」「家族」「正義」「運命」……

抽象的な言葉を添えると、自分の物語が意味深いものに感じられてきます。

勘違いです。

テーマは作者が決めるものではありません。

観客・読者が感じるものだからです。

作者が「これは愛の物語なんだ!」とインタビューなんかで意味づけをしようとしても、物語自体が「侵略してきた宇宙人から地球を救う話」であれば、観客はアクション映画としか感じません。

テーマは物語から自ずと伝わるものなのです。

これを応用するならば、伝えたいテーマがあるとしたら、それを構成に組み込むのがテクニックです。

たとえば「愛」というテーマを描きたいとしたら、これを単語で済ませず、一歩ふみこんで文章化します。

「愛こそが生きがい」

テーマをただ漠然と「愛」とするよりも、命をかけてでも何かを貫くような主人公が浮かんできそうです。

これを作品のテーマとするなら、これは「討論のテーマ」みたいなものです。

この意見に賛成の人もいれば、反対の人もいる。

最初は反対だったけど、賛成に意見を変える人もいる。

いろんな人がいます。それぞれの価値観をもったキャラクターを登場させればいいのです。

そうすれば、テーマは自然と物語内でディベートされます。

結論は、主人公のラストの行動によって決まるのです。

作者が「愛こそが生きがい」というテーマをもっているなら、最後にそういう行動をとる主人公を描けば、観客も自然と、テーマを受け取ります。

「愛こそが生きがい」というテーマを伝えようとしているのに、主人公が愛を捨てて逃げるような行動をとったなら、作者が何を言おうとも、観客はそのようなテーマを受け取るのです。

自分の作品にテーマを持つかどうかは自由だと思いますが、物語構造が、どういうテーマを伝えているかはしっかり考慮するのは作者の責任だと思います。

「観客がどう受け取ろうが自由だ」という態度も、自分のメッセージに無責任なだけです。

言葉に無責任な人は、好き放題発言しておいて、受け取る側の問題だと責任転嫁しますが、これに似ています。

緋片イルカ 2020/12/02

↓この記事の中級編記事です。
テーマと構成、テーマと描写(中級編24)

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