脚本作法2:「回想」と「フラッシュバック」の書き方

原稿のルールや書き方はスクールなどで添削を受けた方が確実ですし、日本では、プロですらルールが統一されていない(ワードのテンプレートすらライターによって違う!)ので、当サイトでは基本的には「書き方」などの初歩的なことは記事にしない方針です。あくまで「面白い物語」を作るためのテクニックを紹介しています。

ですが、脚本講習の受講生など個人的にフォローしている方から受けた質問などは共有のため記事にして残していきます。

数は増えないと思うのでタグは作りませんが「脚本作法」というシリーズにしましたので、トップページの「ブログ内を検索」で辿れるようにしておきます。

あくまで僕の書き方の紹介なのでコンクール応募用などの原稿ではルールが違う場合もありますので、ご注意ください。

質問

30秒〜1分くらいの短い回想って、フラッシュじゃなくて柱立てたほうがよいんですよね?

回答

厳密なルールはない前提ですが、その場所が初登場なら立てておいた方が良いと思います。撮影に関わるので。
前に出ているシーンを一瞬だけ映すみたいな感じであれば、
 × × ×
で説明しますね。僕なら。

書き方の例

脚本作法1:回想(文章#40)参照

ポイント

・回想とフラッシュの違いは、シーンかショットかの違い。

・回想は「柱」を立てる。時間軸の違う一つのシーンなので。

・柱に(回想)と書いておけば親切だが、本来はそんな指示がなくても回想とわかるようなシーンでなければいけない(観客は回想に入るなど知らずに、前シーンからの流れで見る)。

・フラッシュは、トラウマがフラッシュバックするとか、ミステリーで何かに気付いたときのように瞬間的な回想。ト書きで2~3行とか。「 × × × 」で処理可能。

・めったに使われないが、未来を差し込むフラッシュフォワードというのもある。

・フラッシュは「ショット」といっても、ワンショットでなくてはいけないということはないが、数秒を超えると観客は「回想」に感じるし、現在軸に戻って来にくい。

・フラッシュでも、その場所が脚本上、初登場で、今後も登場するような場所であれば「撮影」のことを考えて「柱」にしておくと親切。

・過去に登場したシーンを再度見せるのであれば、シーン番号など特定できるように書いてあげると親切。

・ただし、過去のシーンを見せるだけのフラッシュは説明をしているだけで、脚本としては無意味なことが大きい。安易に使わないこと。フラッシュなど入れなくても、わかるような脚本を書くべき。それでも分かりづらければ「編集」がフォローしてくれる。

・フラッシュは一瞬なので観客は混乱しないが、回想は入る前後にブリッジを作ったり、しっかりと「回想であること」を伝えないと観客が混乱することがある。柱に(回想)と書いてあるだけで充分と思わないこと。

・現在と回想を「演出」でフォローしてくれることはある。カラコレやカラグレで差をつくるとか。観客の混乱は防げるが、ストーリーの流れがチグハグな回想は、結局は観客を振り回して入り込めなくするだけ。

・フラッシュも回想も、ストーリーを停滞させて、観客の集中力を切ることが多いので、本当に必要かどうか? ストーリーエンジンも考慮しながら使うこと。

・回想の前後にブリッジを入れない場合、それが過去だとわかるような工夫をする。時計やカレンダー、制服を着ている=学生時代とか、テロップを入れる。どれもクリシェだが、カッコつけてムダな時間をかけるぐらいなら、サクっと処理した方が観客の集中力は途切れない。

緋片イルカ 2022.11.24

参考:
脚本作法1:回想

脚本作法2:「回想」と「フラッシュバック」の書き方

脚本作法13:回想の力学

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