映画『そして、ひと粒のひかり』(三幕構成分析#201)

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※あらすじはリンク先でご覧下さい。

※分析の都合上、結末までの内容を含みますのでご注意ください。

※この分析は「ライターズルーム」メンバーによるものです。

【ログライン】

家族を養うためコロンビアで労働環境の悪いアルバイトに勤しむ現状に不満を抱いていた少女マリアが、麻薬の運び屋の仕事で様々な困難を乗り越えることによって、新天地アメリカで自分の力で生きていく覚悟を決める。

【フック/テーマ】マリアは無事に麻薬を運び、報酬を得られるか。新しい生活へ一歩を踏み出せるか。

【ビートシート】

Image1「オープニングイメージ」:「バス待ち」舞台はコロンビア。早朝、主人公のマリアとその友人ブランカが出勤するためバスを待っている。彼女たちの日常の風景であり、エンドイメージでアメリカで暮らすことを選択し空港の出口へと向かうマリアと対になっている。

want「主人公のセットアップ」:「コロンビアでの生活」マリアはバラ農園でトゲ抜きの仕事をしており、母と姉、姉の子どもと暮らしている。
彼氏のホアンとキスをしている時、マリアは建物の屋根の上に行きたいと言い、実際に登る。ここではない場所に行きたいという、現状への不満が現れている。
その後、職場でつわりが起き、気分が悪くなったマリアは上司と揉め、仕事を辞めたことで家族に怒られてしまう。
さらに妊娠をホアンに告げ、彼と別れることに。

Catalyst「カタリスト」:「パーティーで出会った男」 パーティーにて、友達から『上司に一泡吹かせた』と喝采されるマリア。酒盛りや花火などを楽しむ傍ら、彼女はフェリペという青年と出会う。
後日、町でフェリペと再会したマリアは、彼とツーリングに出掛け、麻薬の売人の仕事を紹介される。

Debate「ディベート」:「逮捕を恐れるマリア」逮捕された人の話を思い出し、一度は躊躇するマリア。

Death「デス」:「元締めとの面接」 フェリペに麻薬の元締めのいるバーへと連れていかれ、なし崩し的に『軽い面接』を受けさせられることに。

PP1「プロットポイント1(PP1)」:「お金を受け取るマリア」面接の後、元締めから『これで当面の問題を解決しろ』とお金を渡されるマリア。それを受け取ってしまったことでもう後戻りはできなくなり、彼女の犯行は始まったも同然となる。

Pinch1/Sub1「ピンチ1」/

Battle「バトル」:「麻薬を飲む練習をするマリア」 マリアの行うことになったのは、麻薬の入った袋を飲み込んで運ぶ『ミュール』という危険な仕事だ。麻薬を飲み込むには訓練が必要であり、マリアはルーシー宅でブドウを使った練習法を教わり、自宅でも練習を繰り返す。

F&G「ファン&ゲーム」:「薬局の奥」 家族に自分がやる仕事は事務仕事だと嘘を付くが、疑われるマリア。
翌日、マリアはフェリペにバイクで薬局まで送ってもらう。薬局の奥では男たちが麻薬を袋に包む仕事をしていた。一方マリアは消化を抑える薬を飲まされる。ここで、マリアが非日常の犯罪の世界に足を踏み入れていることが視覚的に提示される。

Battle「バトル」:「麻薬を飲む練習をするマリア・飛行機搭乗」
ここからバトルが続く。薬局の奥にて、マリアはいよいよ本物の麻薬を飲むことになる。その量の多さに一度は気分が悪くなるが、どうにか耐えて彼女は全ての麻薬を飲み込んだ。
マリアは航空券、パスポート、ビザを渡され、空港に向かった。そこには同じ仕事をすることになったブランカとルーシーもいる。
飛行機に乗ると、マリアはトイレで麻薬の袋を二粒出してしまった。彼女はそれらを洗い、再び飲み込む。
座席に戻るとホテルのメモがなくなっており、ルーシーに訊くと代わりに彼女の姉の住所を教えられた。

MP「ミッドポイント」:「尋問」飛行機から降りたマリアは空港の職員から呼び止められ、尋問を受ける。運び屋ではないかと疑われているのだ。警察に捕まるかもしれないという、旅の最も危険な、深い地点。エックス線検査をさせられそうになったところで妊婦であることが発覚し、検査を免れる。それからは必死に無実を訴えることでどうにか解放されることができた。

Reward「リワード」:「」不明。

Fall start「フォール」:「売人たちからの逃走」 空港を出ると、マリアたちは売人たちに車でヤサに連れていかれる。ルーシーの体調は悪化していたが医者は読んでもらえない。
ヤサに着き、下剤で麻薬を出した後、マリアはルーシーにシャワーを浴びせるが、それも虚しく彼女は死んでしまったのか、売人たちに運び出されていた。バスタブを見ると血まみれで、怖くなったマリアはブランカと共に逃げ出した。

Pinch2/Sub2「ピンチ2」/「サブ2」:「ルーシーの姉カルラ」格安タクシーでルーシーの姉であるカルラの家に行くも、ブランカは引き返してしまう。マリアはカルラとその夫に訝しがられるも、どうにか胡麻化して泊めてもらうことに。

Fall start「フォール」:「売人たちからの逃走(続き)」カルラはアメリカでのコロンビア人の顔役のフェルナンドのところへ、マリアと(後から合流した)ブランカを連れて行き、仕事を紹介してもらおうとする。
しかし、フェルナンドに麻薬の粒を見られてしまい、事情を話すことに。そして、ルーシーを探してくれるように頼む。

PP2(AisL)「プロットポイント2」:「ルーシーの死体」ブランカと喧嘩別れしたマリアはしばらく街をうろつき、婦人科を訪れ、自分の赤ちゃんを目にする。その後、フェルナンドにルーシーの遺体が見つかったことを聞かされる。翌朝、カルラにそのことを知られ、マリアとブランカは追い出されてしまった。

BB(TP2)「ビッグバトル(スタート)」:「売人たちとの対決」・飲食店で、ブランカに「どうしたい?」と訊かれ、売人に連絡を取るマリア。彼ら相手に必死に交渉し、どうにかルーシー以外の分の報酬は得ることができた。
そしてマリアはフェルナンドに、ルーシーの葬儀代とコロンビアへの移送費を渡す。

Twist「ツイスト」:「ルーシーへのお別れ」 ルーシーの棺に十字を切っているカルラを見つけ、マリアもルーシーにお別れをする。

Big Finish「ビッグフィニッシュ」:「逆方向へ歩く二人」空港にて、ブランカは飛行機の搭乗口へ向かうが、マリアは新しい環境で自分の力で生きていく覚悟を決め、出口へと引き返す。

Image2「ファイナルイメージ」:「覚悟を決めたマリア」空港の出口へ向かって歩くマリア。

【作品コンセプトや魅力】

普通に生きていればあまり意識することのない麻薬犯罪が臨場感高く描かれていること、主人公が覚悟を決めるまでの過程が丁寧に描かれていることが魅力。

【問題点と改善案】(ツイストアイデア)

特になし。

【感想】

困難が起きても逃げ回ったりと消極的な行動をとることが多かった主人公が、売人たちに立ち向かったりアメリカで生きていく覚悟を決めたりと、タフになる展開は好きだった。ただ、そこまで成長するに足るようなハードルを越えていたようには思えなかった。(自分がまだミニプロット系を観るのに慣れていないだけかもしれない)
「好き」4「作品」4「脚本」3

(脚本太郎、2024年5月19日)

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