映画『セブン』(三幕構成分析#210)

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※あらすじはリンク先でご覧下さい。

※分析の都合上、結末までの内容を含みますのでご注意ください。

※この分析は「ライターズルーム」メンバーによるものです。

【ログライン】

定年間際で世の中に嫌気がさしている刑事サマセットは、若手で血気盛んな刑事ミルズと共に連続殺人の捜査をするも、犯人を止められず悲劇で終わる。

【フック/テーマ】連続殺人を解決できるか? 犯人の動機は何か? 世の中の無関心さ

【ビートシート】

Image1「オープニングイメージ」:「」仕事の準備をするサマセット。一応、ラストで全てを失い逮捕されるミルズと対になっている。直後にバッジや拳銃が出てきて彼の職業が警察官であることがセットアップされる。

GenreSet「ジャンルのセットアップ」:「殺人現場に赴くサマセット」序盤から殺人現場が映し出され、この映画のジャンルがサスペンスに属することが示唆される。

Premise/CQ「プレミス」/「セントラル・クエスチョン」:「連続殺人を解決できるか?」 連続殺人を解決できるか?

want「主人公のセットアップ」:「対照的な二人の刑事」サマセットは被害者の子どもが現場を見なかったかを気にするような心優しい性格で、定年間際の刑事。また、一人で寂しそうに暮らしている。一方のミルズは若手で熱意のある刑事であり、愛する妻のトレイシーと暮らしている。

Catalyst「カタリスト」:「第一の事件」 妻と共に寝ているミルズの元に第一の事件発生の電話が。彼はサマセットと現場に向かう。初動捜査の巡査に『手抜きだ』と非難するミルズとそれに辟易するサマセット。早くも二人の性格の違いが出ている。

Debate「ディベート」:「連続殺人」第一の被害者『肥満男』は拳銃で脅され12時間以上無理矢理食事させられた挙句気絶し、蹴り殺されていた。その異常な殺害方法には何か特別な意味があり、連続殺人に発展するのではないかと予想するサマセット。彼は『定年前の自分の仕事じゃない』と分署長に訴えるが却下される。そして刑事として日が浅いミルズも適任ではないということになり、こちらは分署長に聞き入れられ、ミルズはこの事件の担当から外される。

Death「デス」:「グールド弁護士殺害」グールド弁護士が殺害される事件が起こり、現場の床には『GREED』と血文字が書かれていた。後に『肥満男』の部屋の冷蔵庫裏にも『GLUTTONY』と油で描かれた文字が発見され、二つの事件が七つの大罪に纏わる連続殺人で、あと五件は殺人が起きることが明らかになった。事件の担当はミルズが再び当てられ、乗り気ではなかったサマセットもミルズのために事件にかかわる資料を集めるなど前向きな姿勢になっていく。

PP1「プロットポイント1(PP1)」:「異動」ミルズは荷物を持ってサマセットの部屋まで移動し、本格的に二人での捜査が開始することに。

Pinch1/Sub1「ピンチ1」/Battle「バトル」:「事件捜査」現場にあったグールドの妻の写真の目が赤く囲われていたことから、『何かを見た』あるいは『何かを見るはずだ』という示唆ではないかと推測したサマセット 。グールドの妻に『部屋に何か変わりはないか』としつこく尋ねたところ壁に掛けられた絵が逆になっていたことが分かる。壁を調べたところ『HELP ME』の文字を発見。さらにその指紋がビクターことアランというかつてグールドが弁護した前科者のものだということが発覚。サマセットは『こいつには奥がない』と彼が犯人であることには懐疑的な態度を示していたが、ミルズや他の警官たちとビクターの自宅に突入することに。結果、ビクターも事件の被害者だったことが発覚。死んでこそいないが、一年間生かさず殺さずの状態でベッドに拘束され続けていた。壁には『SLOTH』の文字があった。犯人の行動に憤るミルズと宥めるサマセット。そんな二人の前に記者を名乗る音が現れ、ミルズの写真を勝手に撮影し、追い返されていった……。

MP「ミッドポイント」:「犯人の割り出し」サマセットがFBIの捜査官を買収し、図書館で七つの大罪に関する本を借りた者のリストを入手。二人は割り出した人物の部屋に向かうも、そこで犯人と鉢合わせし、発泡されてしまう。

Reward「リワード」:「犯人の正体」犯人の部屋を家宅捜索した結果、その正体が先ほどミルズの写真を撮った自称記者であったことが発覚。

Fall start「フォール」:「追走劇」 犯人との追走劇の後、ミルズは返り討ちに遭う。しかし犯人は彼を殺すことなく身を引いていった。その後も事件は解決することなく第五の事件まで起きてしまう。

PP2(AisL)「プロットポイント2」:「犯人の自首」犯人の自首という予想外の結末でアクト2である捜査が終わる。犯人は残り二人の被害者の死体を隠しており、その場所までミルズとサマセットの二人のみを案内したいと要請する。

DN「ダーク・ナイト・オブ・ザ・ソウル」:「準備」死体の場所まで行く準備をするミルズとサマセット。マイクを仕込んでいる。

BB(TP2)「ビッグバトル(スタート)」:「護送車で出発」サマセット、ミルズ、犯人の三人が乗った護送車が発進する。警察のヘリがそれを追う。車内では犯人が自分の犯罪の特別性を語っている。やがて護送車は目的地である高圧線の鉄塔付近に到着し、停まる。

Twist「ツイスト」:「トレイシーの首」金で雇われた男が運んできた箱にはトレイシーの首が入っていた。

Big Finish「ビッグフィニッシュ」:「犯人射殺」サマセットの説得も虚しくミルズは犯人を射殺してしまう。

Image2「ファイナルイメージ」:「逮捕されるミルズ」逮捕され、連れていかれるミルズ。

【作品コンセプトや魅力】

主人公が犯人を追い詰めるのではなく犯人が自首してくるという特異な構成。七つの大罪を扱った見立て殺人。

【感想】

「好き」5「作品」5「脚本」5
主人公が犯人を追い詰めるのではなく、犯人が自首してきて、しかも拘束された状態で逆に主人公たちを追い詰めるという展開が好き。また、トレイシーの首が実際には出てこないにも関わらず、ひどいことが起きていると分かるのが凄いと思う。
犯人をただの馬鹿と切り捨て舐めてかかっているミルズと、最後まで犯人の思想や考えを必死に読み込もうとしていたサマセット。同じように世の中に失望していながら犯罪に走った犯人とあくまで正しくあろうとするサマセットなど、登場人物対比が徹底している印象を受けた。
また、淡々と事件捜査をするだけでなく『世間の無関心さ』といったテーマとからめて話が進んでいくので、ストーリーに深みが感じられる。

(脚本太郎、2024年9月28日)
2024.12.13アップ

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