短編映画『ギャンブラーPUNTER』(三幕構成分析#228)

https://www.shortshorts.org/2025/program/comp8/punter/

※あらすじはリンク先でご覧下さい。

※分析の都合上、結末までの内容を含みますのでご注意ください。

【ログライン】

父親想いの少年ブレットは、父ハリスの誕生日にバースデーケーキを用意するも、帰り道ハリスが競馬に向かってしまったためケーキが溶けないか心配しながらも着いていくことになる。競馬場では父に頼まれて買った馬券が間違えていて責められるが、偶然間違えて買った馬が的中したことで小切手を得る。しかし帰ろうとしたところで借金取りであるレボに小切手を取られてしまう。ブレットはレボから小切手を取り返してハリスに渡すも、彼は再び別のレースのために馬券を買いに行ってしまい、車に戻った頃にはケーキは溶けてしまっていた。

【フック/テーマ】父親想いの少年、無垢な少年とギャンブル中毒の父親との対比、ケーキが溶ける前に帰らなければならないという時間制限/一方通行の報われない家族愛

【ビートシート】

Image1「オープニングイメージ」:「誕生日ケーキ」店の屋外席に座っている少年ブレットとその父ハリス。ハリスの手品を見せられているところでブレットは店員に呼ばれる。サプライズで頼んでいたハリスへの誕生日ケーキの受け取りだった。ケーキには「パパ誕生日おめでとう」と書いてある。

Premise/CQ「プレミス」/「セントラル・クエスチョン」:「溶ける前に、父と共にケーキを食べられるか?」

want「主人公のセットアップ」:「父親想いの少年」ケーキを用意していたことからブレットが父親想いの少年であると分かる。そしてその想いの強さ故か、有料のキャンドルを万引きしてしまう。しかし、店員から「お父さん喜ぶよ」と言われるブレットは店を出る寸前に思い直したのか、キャンドルを返す。そのタイミングで現れるハリス。「キャンドルもつけろ」とごねて店員を罵倒する彼は息子とは正反対の性格のようである。

Catalyst「カタリスト」:「競馬場への電話」車内にて、万引きしたキャンドルを得意げに見せるハリス。ブレットがお金を払ったのか問うと、ハリスは憮然と「お前のためにやったのに」と言う。やがて車が走り出し、家から進路を変える。着いた先は競馬場だった。

Debate「ディベート」:「ケーキが溶ける前に」ブレットは父と一緒に競馬場へ行くのを拒む。早く帰らないとケーキが溶けてしまう。

PP1「プロットポイント1(PP1)」:「競馬場のバー」渋々といった感じで、ブレットはケーキを抱えて競馬場のバーにいる。店員から、ケーキを店の冷蔵庫に入れるかと訊かれるが、「すぐ帰るから」と断る。さらに「君もギャンブラーになるのか?」と問われ困惑顔。

F&G「ファン&ゲーム」:「馬券売り場へ」ハリスに馬券を買うように頼まれ、渋々列に並ぶ。父の様子を伺った際、 彼に金を貸しているレボという男とぶつかり、顔を見られた。

Pinch1/Sub1「ピンチ1」/「サブ1」:「借金取りレボ」ハリスがレボに、自分に借りた金を返さずに息子に馬券を買わせたことを咎めている。「あんな坊主は知らん」としらばっくれる態度に怒り、レボがハリスに掴みかかる。止めに入るブレット。

MP「ミッドポイント」:「自慢の息子だ」買う馬券を間違え、ハリスに責められるブレット。しかし予想に反して間違えて買った馬が的中し、ハリスは一転して有頂天に。「お前に任せて良かった。自慢の息子だ。俺にはこの子がついてる」ブレットも褒められて嬉しそうにしている。

Reward「リワード」:「小切手」馬券売り場で小切手を入手。店員から「手堅いレースがある」と言われ揺れるハリス。しかしどうにか理性を働かせ、息子を優先する。ハリスはトイレに行き、ブレットは先に車に戻った。

Pinch2/Sub2「ピンチ2」/「サブ2」:「競馬場に入っていくレボ」車内から、競馬場に入っていくレボを目撃し、急いで追う。

Fall start「フォール」:「奪われた小切手」トイレにて、レボがハリスから無理矢理小切手を奪い取っている。ハリスに「くたばれ」と罵られたレボは彼を殴る。

PP2(AisL)「プロットポイント2」:「小切手を持って去っていくレボ」

BB(TP2)「ビッグバトル(スタート)」:「海へ」ブレットがレボに小切手を返してほしいと哀願する。レボは同情を示すも、「自分にも家族がいる」と去っていく。

Twist「ツイスト」:「掏った小切手」バーで落ち込むハリスだが、冒頭でのマジックを真似たブレットに掏った小切手を見せられると、真剣な顔でこれから賭ける馬を決めてほしいと頼んでくる。

Big Finish「ビッグフィニッシュ」:「再び馬券を買いに」ブレットがどちらかの馬を指し示すと、ハリスは急いで馬券を買いに向かう。

Image2「ファイナルイメージ」:「溶けたケーキ」車内にて、ブレットがケーキの箱を開けると、中のものはとっくに溶けていた。

【作品コンセプトや魅力】

「ケーキが溶ける前に帰らなければならない」というありふれた状況がきちんとストーリーエンジンとして機能している。また、短い中にもきちんとビートがあり観応えがある。父想いの少年とギャンブル中毒の父親という対比も魅力がある。手品が効果的なフリとして使われていた。

【感想】

報われない内容だが胸糞悪さはなく、主人公を応援したい気持ちが最後まで続く作品だった。
「好き」4「作品」4「脚本」4

(脚本太郎、2025.6.30)

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