※あらすじはリンク先でご覧下さい。
※分析の都合上、結末までの内容を含みますのでご注意ください。
【ログライン】
不倫相手の殺害で起訴された実業家ドリアは、彼を助けるために派遣された敏腕弁護士のグッドマンと事件の擦り合わせを行い、その過程で過去の事件も告白するが、実はグッドマンは偽物で過去の事件の被害者側の人間だったため、言質を取るために掌の上で転がされていただけだった。
【フック/テーマ】
弁護士との再検証/悪魔の証明(存在しない事実)、復讐
【ビートシート】
Image1「オープニングイメージ」:「バルセロナ」「グッドマン到着」
アグバール・タワーを含むバルセロナの街並み。
成功者としてドリアが活躍している世界の表れ。
GenreSet「ジャンルのセットアップ」:「ニュース」
ドリアが殺人容疑で起訴されているという内容のニュース。
副題に「悪魔の証明」と掲げてあることもあって、存在しない事実をどう証明していくのかというミステリー&サスペンスの提示。
Premise/CQ「プレミス」/「セントラル・クエスチョン」:「無実を証明できるか」
グッドマンに供述の穴を指摘され、丁寧に過去を振り返る。すべてはローラ殺害の罪を負いたくないため。
want「主人公のセットアップ」:「実業家」「不倫」「容疑者」
PP1に入る前にニュースで端的に、その後回想で不倫とローラ殺害のセットアップがされている。
Catalyst「カタリスト」:「事件当日の擦り合わせ」
3時間後に証人が証言するため、事件の仔細を詰める必要がある。ここから観客は「ドリア視点」の事件を知ることになる。
Debate「ディベート」:「供述の穴」
話す内容に穴があると指摘が入り、どう話すべきか悩みの時が訪れる。
Death「デス」:「告白を決める」
3ヶ月前に起こったことを告白し始める。
PP1「プロットポイント1(PP1)」:「過去の事件」
穴を補填し、犯人の心当たりを説明し始める。
不倫中に衝突事故を起こし、青年を殺してしまった過去があると告白。
F&G「ファン&ゲーム」:「何が真実か」
ドリア視点、トーマス視点、グッドマンの意見と何が真実か判断つかないまま物語が進む。ミステリーの面白さ。
Battle「バトル」:「隠ぺい」「ローラ」「被害者両親」
死体遺棄、被害者に横領の罪を着せる、被害者両親と接触、被害者両親の動き。
事件を隠そうとする者と暴こうとする者の動きが複雑に絡まる。
Pinch1/Sub1「ピンチ1」/「サブ1」:「アリバイ工作」
お金でアリバイ工作をする。
MP「ミッドポイント」:「父親の推理」
被害者父親から接触。すでに真実に辿り着いている。
Fall start「フォール」:「父親をローラ殺しの犯人に」
過去の事件を認めることで無罪を勝ち取る提案を受ける。
Pinch2/Sub2「ピンチ2」/「サブ2」:「証拠で脅迫」
アリバイ工作してあったが、脅迫を受ける。2つの事件が繋がり始める。
PP2(AisL)「プロットポイント2」:「過去の事件はローラに擦り付ける」
過去の事件に関与していたものの、すべてローラの策略にすると決まる。
ドリアにほとんど痛手がない状態。
BB(TP2)「ビッグバトル(スタート)」:「真実」
グッドマンが真実を推理する。すべてドリアの策略だと仮定する。
Twist「ツイスト」:「10分休憩で」
10分休憩でグッドマンが部屋を出る。その間にもうひとりの弁護士レイバに電話。グッドマンの実力に満足していると話すが、違和感に気づく。
Big Finish「ビッグフィニッシュ」:「グッドマンは偽物」
グッドマンが偽物であり、過去事件の被害者家族だと理解する。過去事件の証拠として言質を取られたことに気づく。
Epilog「エピローグ」:「被害者家族が通報」
お金でもみ消せない証拠を手に入れ、通報。
Image2「ファイナルイメージ」:「本物のグッドマン」
本物が訪れたことにより引き返せない現実を目の当たりにする。
ドリアの世界の崩壊。
【作品コンセプトや魅力】
弁護士との再検証、都合のいい真実と嘘、復讐、回想を使った誘導、回想を活かす構成、オリオル・パウロ脚本監督、スペイン映画、リメイク作品あり(韓国、インド、ドラマ)
【感想】
「好き」5「作品」4「脚本」4
ミステリーと回想の相性の良さを実感した作品です。
本来回想は話に没頭するリズムを乱しがちだと思うのですが(7つの贈り物の感想であげたことがあります)、すでに事件が起こった状態で真実を深堀するにはリズムが崩れないように思えました。同じ状況ばかりでなく、事件全貌を少しずつ理解できるような構成だったこともいい効果をもたらしていました。回想の中に現実世界の問答が入り込むのも、物語の速度コントールに一役買っていたのではないでしょうか。ただ、時系列でみるよりかは小説を読むような感覚になってしまうので、映像としては良し悪しだなとも思います。
私が特に好きだったのはラスト、ビートシートでいうPP2以降です。ドリアの醜悪な人間性が見え、グッドマンの推理に真実味が増しました。この作品一番の人間臭い部分で、リアリティがありました。
(雨森れに、2025/10/11)