※あらすじはリンク先でご覧下さい。
※分析の都合上、結末までの内容を含みますのでご注意ください。
【ログライン】
大日本帝国陸軍人・佐久間は、結城中佐が設立したスパイ養成学校・D機関の流儀に納得できないまま任務に巻き込まれ、切腹の危機に瀕する。結城や機関員たちの言動を手がかりに窮状を脱し、全ての事実を突き止め、結城からD機関に勧誘されるも断るが、新たな価値観を獲得する。
【フック/テーマ】第二次世界大戦直前に設立されたスパイ養成学校の実態/第二次世界大戦下における洗脳教育からの脱却
【ビートシート】
Image1「オープニングイメージ」:「ゴードン邸で家宅捜索をしている佐久間とD機関員」時系列を飛ばし、頭にMP直前の家宅捜索シーンを差し込んでいる。
GenreSet「ジャンルのセットアップ」:「オープニングイメージと同じ」、「D機関についての説明ナレーション」
Premise/CQ「プレミス」/「セントラル・クエスチョン」:「帝国陸軍人・佐久間は、D機関やそれを取り巻く人々の目論見を見抜き、窮地を脱し、新たな視点を獲得することができるか」
want「主人公のセットアップ」:「模範的な帝国陸軍人」D機関と陸軍士官学校の違いについて独白させ、佐久間が典型的な軍人であることを示している。
Catalyst「カタリスト」:「D機関員たちとポーカーに興じていたつもりが、別のゲームに参加させられていたことに気づく」 ルールを説明されないまま、イカサマありの「ジョーカー・ゲーム」に参加させられていたことを知らされる。
Debate「ディベート」:「結城中佐やD機関員と意見を対立させる」これまで叩き込まれてきた典型的な軍人思想を根拠に、全く異なる価値観を持つD機関員たちと意見衝突する。
Death「デス」:「『日本が戦争に負けた場合』という言葉に衝撃を受ける」軍では考えることすら憚られるような仮定を平然と口にするD機関員にショックを受ける。これまで培ってきた自分の絶対的な思想をあっさりと否定される。
PP1「プロットポイント1(PP1)」:「武藤大佐にゴードン邸の家宅捜索を命じられ、それを結城中佐に伝える」 別日、D機関への任務が言い渡され、連絡係としてそれを伝達する。
Battle「バトル」:「任務を断ろうとする結城中佐を説得」、「ゴードン邸で家宅捜索」、「失敗時に切腹するという約束を勝手に取り付けられる」、「武藤大佐に嵌められたと気づく」
相容れない価値観を持つD機関への連絡係として、そのまま仕事に従事。武藤大佐からの命令を退けようとする結城を説得し、スパイ容疑者の家宅捜索へ同行する羽目に。機関員の三好が勝手に佐久間の命を賭けた挙句、証拠は見つからず、武藤大佐から聞かされていなかった新たな事実も判明。
MP「ミッドポイント」:「切腹の窮地に追い込まれ、自分だけが嵌められたのではないかと考える」D機関を佐久間ごと追い落とそうとした武藤の思惑や、結城とD機関員らが状況を把握していたことに気づき、自分だけが嵌められ、命の危機に追い込まれたのではないかと考える。
Fall start「フォール」:「その場での切腹を迫られる」いよいよ刀を抜いて自害しようとするが、走馬灯が駆け巡り、結城中佐や機関員たちの言葉が次々と思い起こされる。それによって真実に気づき、切腹を免れる。
PP2(AisL)「プロットポイント2」:「武藤大佐の失態が結城中佐にバレた理由を察する」スパイ容疑者の証拠を無事に発見し、武藤大佐の思惑について推測を整理する。結城がなぜ武藤の失態を知り得たのか、という疑問にぶつかり、三好の「料亭」という言葉を思い出して武藤の落ち度に思い当たる。
DN「ダーク・ナイト・オブ・ザ・ソウル」:「家宅捜索の結果を武藤に報告」従順な軍人であったはずの佐久間だが、どこか反抗的な態度で武藤に任務結果を報告する。
BB(TP2)「ビッグバトル(スタート)」:「料亭にて調査を行い、真実を突き止めようとする」 三好の「料亭」という言葉を手掛かりに、陸軍御用達の料亭へ。家宅捜索に失敗し情報漏洩してしまった武藤の様子や、その場に居合わせたであろう結城中佐について突き止めようとする。
Twist「ツイスト」:「結城中佐の義手と脚のトラップに気づく」武藤大佐のシガレットケースに残された指紋から、結城中佐がその場に居合わせたことや、結城の秘密(義手と脚の偽装)に気づいた佐久間。それを結城中佐に突き付ける。
Big Finish「ビッグフィニッシュ」:「すべての事実を解明し、更なる結城中佐の思惑に気づく」料亭での出来事について結城中佐から打ち明けられる。更には、結城が参謀本部から機密費を引き出す為に武藤大佐をつけていたことに気づく。
Epilog「エピローグ」:「結城中佐から、D機関に勧誘される」
Image2「ファイナルイメージ」:「結城の後を追うのをやめ、兵隊たちがすれ違っていく中、桜の舞う空を見上げる」「自分はあくまで軍人で、いつでも腹を切る覚悟がある」と勧誘を退けるが、「駒として使い捨てられるのはごめんだ」という、これまでの軍人・佐久間に無かった新しい価値観を抱く。
【作品コンセプトや魅力】
小説を原作とする硬派なスパイ・ミステリー。原作には、想像を絶する優秀な学生たちがスパイ養成学校を経て暗躍する話が複数収録されており、アニメにおいても半分以上が1話完結のスパイ任務ものとなっている。有能なスパイたちがどのような任務につき、どのように解決していくのかといった点は上質なミステリとして見応えがある。
しかし、単にミステリ要素を楽しむための作品に留まらない。淡々とした作風の中に、戦時中の日本の失敗や迷走ぶり、更にはその中で人知れず骨を折り苦悩するスパイたちの心の機微が控えめに描かれている。スパイ一人一人は非常に優秀であるにも関わらず、大局的には敗北へ向かっていくというままならなさ、苦々しさをも感じ取ることができる。「化け物」と評されるスパイたちが時折ほんの僅かに見せる人間味や、切なさ、渋味が漂う作品。
【問題点と改善案】(ツイストアイデア)
3話目以降にも言えることだが、任務およびそれに至るまでの経緯、謎解き要素、種明かしなどが全体的にやや複雑で、人によっては一度見ただけでは理解しきれない部分が出てきかねないシナリオになっている。今回取り上げた1~2話においてはそれほど気にならないが、終盤の種明かしパート以外では説明台詞や描写を絞り、終盤で一気に台詞やナレーションによる種明かしをするという構成も多い。個々の登場人物が何故その言動をしたのか、何故それに気づけたのか、といった根拠や、台詞一つ一つの意味・意図まで汲み取ろうとすると、やや労力を必要とする作品かもしれない。その点が良さでもあるが、原作で提示されている情報をどう取捨選択し、どのような構成、流れで提示すべきかといった点については改善の余地も感じさせる。また、回によっては原作と内容が異なっていたり、事のあらましを描写するパートと種明かしパートがあまりにくっきり分かれすぎていたりするようにも見受けられ、好みが分かれる理由となり得る。
【感想】
地上波放送時に偶然視聴し、ストーリーの面白さと渋さにのめり込んだ作品である。淡々とした作風の中にも反戦のメッセージや歴史的反省を読み取ることができるように思え、その点でも好感を抱いた。とりわけ関連知識や理解力を有しているわけでもなかったので、シリーズを何度も見返すことで少しずつ理解を深めたが、何度見ても新鮮に面白く、視聴のしがいがある作品だと感じる。掛け値なしに好きなシリーズの一つである。複雑なミステリを進めつつも、少ない描写や説明、台詞で最低限、視聴者に伝えるべきことは伝えつつ、同時に人物の感情描写も行なう作品として、参考にできる構成になっているようにも思う。
「好き」4「作品」4「脚本」4
(しののめ、2025.12.04)

