映画『FALL』(三幕構成分析#261)

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※あらすじはリンク先でご覧下さい。

※分析の都合上、結末までの内容を含みますのでご注意ください。

【ログライン】

夫をロッククライミングの事故で失い、生きる意味を見失ったベッキーは、遺灰を撒くため親友のハンターとテレビ塔に登るが梯子が崩落し、孤立する。戻るための試みがすべて失敗し、誰も助けてくれない現実に直面するが、それでも生きることを決意し、未来を切り開き、地上へ戻ることに成功する。

【フック/テーマ】地上から600mで、助けも来ず孤立する/誰も助けてくれない世界でも、生は自分の意志で選び続けるもの。

【ビートシート】

GenreSet「ジャンルのセットアップ」:「ロッククライミング」ベッキー、ハンター、ベンの3人でロッククライミングをしている。ここでベンの落下事故が起こる。高所・命の危険・判断ミスによって即死に直結する世界ということが分かる。

Premise/CQ「プレミス」/「セントラル・クエスチョン」:「孤立したベッキーは地上へ戻ることができるか?」

want「主人公のセットアップ」:「夫の死によって、生きる意味を失い自暴自棄になっている女性」ロッククライミング中に、目の前で夫のベンが落下するするのを見てしまったベッキーは、夫が残してくれていた留守番電話の音声を聞いたり、アルコールに溺れている。心配する父親も無視し、自殺まがいの行為をし、生きる意味を失った状態。

Catalyst「カタリスト」:「ハンターからの誘い」久々にベッキーを訪ねてきた親友のハンター。高さ600mのテレビ塔に登ろうとベッキーを誘う。

Debate「ディベート」:「悩むベッキー」ベッキーはハンターの誘いに躊躇するが、最終的に“立ち止まらないために”登ることを決断する。

Death「デス」:「テレビ塔へ到着」立ち入り禁止の看板を無視して進んでいく。

PP1「プロットポイント1(PP1)」:「テレビ塔を登り始める」ベッキーとハンターはテレビ塔を登り始める。

Battle「バトル」:「登頂に成功・梯子崩壊後の行動」二人はテレビ塔の登頂に成功し、当初の目的であったベンの遺骨を空に撒く。役目を終えた二人は降りようとするが、老朽化した梯子が崩壊し、地上へ戻る手段を失う。
スマートフォンで救助を呼ぼうとするが圏外で繋がらず、通信手段が断たれていることが判明する。
その後、塔内で双眼鏡と信号拳銃を発見し、外部に存在を知らせる新たな手段を得る。
SNSでの発信を試みるため、電波が届く可能性に賭けてスマートフォンを地上へ落とすが、決定的な助けには繋がらない。やがて近くに停車しているキャンピングカーを発見し助けを求めるが、逆に自分たちが乗ってきた車を盗まれてしまい、完全に孤立する。

Pinch1/Sub1「ピンチ1」/「サブ1」:「梯子が崩壊する(ピンチ1)」腐食した梯子が崩落し、二人は地上へ戻れない状態に陥る。ここから地上への帰還手段を失い、通信の断絶、限定的な手段をなんとか駆使するも、人の存在にも裏切られる出来事で、二人は徐々に逃げ場を失っていく。

MP「ミッドポイント」:「ハンターからの告白」ベッキーはハンターの体に刻まれた数字に気づいたことをきっかけに、彼女から衝撃的な告白を受ける。ハンターは、かつてベッキーの夫ベンと恋愛関係にあったことを明かす。親友と夫という信頼していた二人に裏切られていた事実を知り、ベッキーは深い喪失感に襲われると同時に、かつて父親が語っていた警告の言葉が正しかったことを悟る。
この瞬間、ベッキーの中で他者への無条件の信頼は崩れ、以降は自分自身の判断で生き延びるしかない状況へと意識が切り替わる。

Reward「リワード」:「他者への依存が崩れ、自分で判断する覚悟を得る」ハンターの告白によって、ベッキーは親友と夫への信頼を失うが、その代わりに、自分で判断し生き延びるしかないという現実を受け入れる。

Fall start「フォール」:「ハンターが鞄を取りに行く」ハンターは、水とドローンの入った鞄を回収するため、自ら下へ降りることを提案する。
ベッキーはその危険性を理解しながらも、「二人で生き延びる」という希望のため、止めることができない。ハンターは合図を送り、ベッキーはロープを引き上げる。

PP2(AisL)「プロットポイント2」:「ハンターが死んでいたことに気付く」ベッキーは、ハンターが死んでいた事実に気づく。それまで交わしていた会話も、支えも、すべてが自分の幻想だった。ベッキーが頼っていたハンターは存在せず、塔の上には、自分自身しかいなかった。

BB(TP2)「ビッグバトル(スタート)」:「」完全に一人になったベッキーは、生き延びるために、これまで避けてきた行為に踏み込む。
ハゲワシを殺し、生きるためにその肉を口にする。
さらに彼女は、ハンターの遺体を利用することを思いつく。自分のスマートフォンをハンターの体内に入れて地上へ落とすという、最後の賭けに出る。
高所からの脱出以上に人間としての一線を越える戦いであり、「生きる」という意志を優先する決断だった。

Big Finish「ビッグフィニッシュ」:「父親と再会」救助がきて、無事に地上へ辿り着いたベッキーは心配していた父親と再会する。

【作品コンセプトや魅力】

・「高いところに取り残された二人が助かるかどうか」というシンプルな流れに、喪失を抱えた主人公が“一人で生きる覚悟”を決めるまでの話として作られている。
・ベッキーの途中までの行動は、「二人なら何とかなる」という思いがあるからで、その延長線上にハンターの幻覚が出てくる。この幻覚はただのサスペンス演出じゃなく、ベッキーがまだ誰かに頼ろうとしている状態そのものだと思う。一人になるのが怖いから、心の中で親友を生かし続けてしまう。この点は観客の共感も得られると思う。
・最後は、高さとの勝負というより、「どこまでやれば生き残れるのか」というラインが試され、ハゲワシと戦い、それを食べ、親友の死を利用してスマホを地上に落とす。勝ちはするが、気持ちよくはない。その代わり、ベッキーは“もう誰にも頼らない場所”に立つ。ただの高所スリラーというだけでなく、生きる覚悟を観客に突きつけてくる映画になっていると思う。

【問題点と改善案】(ツイストアイデア)

・一番の問題点は、最後にナレーションを入れてしまったことだと思う。
行動や状況の積み重ねでベッキーの変化を描いてきており、既に分かっていること、十分に伝わっていることを最後に言葉で補足してしまったのは、説明過多でしかなかったと思う。最後に言葉に頼ってしまったのが惜しい点だと感じた。

【感想】

「好き」3「作品」4「脚本」3
高所恐怖症なので、観ている間ずっと落ち着かなかった。一歩踏み外したら終わる場所に留まり続けなければならない状況がつらく、身体が勝手に緊張してしまう感覚があった。
ベッキーが少しずつ一人に追い込まれていく感じも印象的だった。幻覚が出てくる部分もその状況に追い込まれる主人公に感情移入して見てしまった。
ただ、父親の言葉が何度か挿入される点は少し気になった。ベッキーが身をもって体験し、辿り着くはずの部分を、言葉で先回りして示されているように感じてしまった。物語の流れの中でご都合的に置かれているように見えたのが、少し惜しいと思った。また、1人で生きていくというよりも依存場所が変わったようにも感じてしまった。
最後の生き残るために越えてはいけないラインを越えていく部分は強烈で、助かったはずなのに、見終わった後は軽くならない。「それでも生きるしかない」という感触が残る映画だったと思う。

(米俵、2025.1.11)

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