映画『ソーシャル・ネットワーク』(三幕構成分析#298)

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※あらすじはリンク先でご覧下さい。

※分析の都合上、結末までの内容を含みますのでご注意ください。

【ログライン】

ウィンクルボス兄弟らに「ハーバード・コネクション」の開発を依頼されたハーバード大生のマークは、アイデアを借用して友人のエドゥアルドと共に独自にFacebookを開発すると大人気のサービスとなり、自身も一躍人気者となる。しかし本拠地をカリフォルニアへ勝手に移転するなど身勝手な行動からエドゥアルドと険悪になり、Napsterの開発者ショーンにビジネスの舵取りを任せたことでエドゥアルドと決定的に仲違い。エドゥアルドを騙して事業から追放したことで訴訟を起こされる。

【フック/テーマ】
Facebookの誕生秘話/友情と嫉妬、承認欲求、物語的真実

【ビートシート】

Image1「オープニングイメージ」:「エリカとの別れ話」
恋人・エリカとバーで会話するマーク。大学の社交クラブについての話からマークが言い掛かりのように口喧嘩を始め、一方的にエリカに振られる。「あなたがモテないのはオタクだからじゃない。性格が最悪だからよ」

GenreSet「ジャンルのセットアップ」:「ヒューマンドラマ」
寮に戻るなりマークはPCを立ち上げ、ブログにエリカの悪口を書き連ねる。酔っ払って大学の女子学生を比較するサイト「Facemash」を立ち上げることを思いつきハッキングを開始。友人・エドゥアルドに作ってもらったアルゴリズムで公開すると、4時間で22,000アクセスとなるほど男子学生の間でたちまち人気に。反面、女学生達からは恨みを買う。天才プログラマー・マークが自身のスキルを使い、エリカとの失恋による喪失から回復していく物語であるかのようにセットアップされる。

Premise/CQ「プレミス」/「セントラル・クエスチョン」:「なぜ、こうなったのか」
現在時制のシーンが挿入され、マークがエドゥアルド、ウィンクルボス兄弟との訴訟を抱えていることが提示される。メインの筋は弁護士同席の事実確認という形で語られている回想だと明らかに。マークがどうやって彼らと訴訟を抱えるに至ったかというハウダニットがミステリーエンジンとして駆動する。また、事実に基づいた話だと思って見ている観客に対して、登場人物自身が何が事実かを巡って言い争う姿が提示される意義は大きい。メインの筋を客体化する視座が提示されることで、これから語られるストーリーも物語的真実に過ぎないことが示唆されるのだ。

want「主人公のセットアップ」:「天才であり傲慢」
「あなたは優秀なプログラマーになるでしょう。あなたがモテないのはオタクだからじゃない。性格が最悪だからよ」というエリカの捨て台詞。エリカと別れたマークはブログに酷い悪口を書き連ね、自身を否定する女性への腹いせかのように、Facemashをあっという間に開発する。自他共に認める天才プログラマーでありながら、内心は「クラブに入りたい」といったオタク(Nerd)であることへのコンプレックスを抱えてもいる。女性を憎む反面、受け入れられたいというのがwantになる。彼の複雑で尊大な自我が革新と災いをもたらしていくのだ。

Catalyst「カタリスト」:「ウィンクルボス兄弟から『ハーバード・コネクション』開発を依頼される」
マークの噂を聞きつけたウィンクルボス兄弟。ハーバード大生の交流サイト「ハーバード・コネクション」のプログラマーとしてマークを誘う。マーク、二つ返事で引き受ける。

Debate「ディベート」:「なし」

Death「デス」:「なし」
本記事ではバディプロットのアークでビートを定義しているため、ディベートもデスも無い整理になった。マークのキャラクターアーク的にはエリカに振られたことがカタリスト、Facemashの開発がディベート、女学生に嫌われるがデスとなって、ウィンクルボス兄弟の誘いを受けることがPP1となる。その場合MPはバーでセックス、Fallがエリカに拒絶という具合になる。

PP1「プロットポイント1(PP1)」:「エドゥアルドを誘う」
サーバの金を用意するため、ウィンクルボス兄弟のことは黙ったままエドゥアルドにCFOとして計画に加わってくれと誘う。外が寒いことばかり気になるエドゥアルド、気軽に了承。

Battle「バトル」:「Facebookが成功して一躍人気者になる」
CFO兼共同創業者として、エドゥアルドの名前も記してFacebookをリリース。ハーバード大生の間で大人気のサービスに。マーク達は一躍人気者となる。仲間を増やして他の大学へとサービスを拡大していく。

Pinch1/Sub1「ピンチ1」/「サブ1」:「ウィンクルボス兄弟がFacebookの存在に気づく」
音信不通になっていたマークがFacebookを開発したことを知るウィンクルボス兄弟。ハーバードコネクションのアイデアを盗まれたことに気づく。

MP「ミッドポイント」:「バーのトイレでセックス」
講演会で声をかけられたアリス、クリスティにバーに誘われる。エドゥアルド、マークはバーで彼女らとセックスする。成功の絶頂の象徴。

Reward「リワード」:「エリカに拒絶」
バーで偶然出会ったエリカに話しかけるもマークは拒絶される。

Fall start「フォール」:「ショーンにビジネスを任せる」
Napsterの開発者であるショーンに感化されたマークはエドゥアルドをニューヨークに残したまま、勝手に本拠地をカリフォルニアに移す。
カリフォルニアで偶然ショーンに出会ったマークはビジネスの舵取りをショーンに任せることに。ニューヨークから本拠地を訪れて初めてそのことを知ったエドゥアルドは激怒。
補足として、バディプロットとしてのFall要素として他に、エドゥアルドがクラブの選考を進むことでマークの嫉妬が深まっていったことがある。

Pinch2/Sub2「ピンチ2」/「サブ2」:「ウィンクルボス兄弟、マークを告訴」
マークの悪事を学長に直談判するも門前払いされたウィンクルボス兄弟は、弁護士を立ててマークを告訴することに。

PP2(AisL)「プロットポイント2」:「銀行口座を凍結される」
激怒したエドゥアルドはFacebookの取引口座を凍結。二人の仲は決裂。

DN「ダーク・ナイト・オブ・ザ・ソウル」:「エドゥアルドと電話」
エドゥアルドと電話し、口座凍結について激怒。ティールからの出資が決まったことで、「CFOが必要だ」と再びカリフォルニアに呼び出す。

BB(TP2)「ビッグバトル(スタート)」:「エドゥアルドをビジネスから追放」
ティールからの投資が決まり、持ち株比率を整理することに。カリフォルニアにエドゥアルドを呼び、株を希薄化できる条項を盛り込んだ契約書を提示。エドゥアルドは気づかずサイン。
続いてマニングハムからの巨額の出資を受けて、エドゥアルドの持ち株比率を希薄化しビジネスから追放。

Twist「ツイスト」:「なし」

Big Finish「ビッグフィニッシュ」:「パーティを欠席」
Facebookの利用者100万人突破を祝うパーティが開かれるも、気が向かないマークは欠席。ショーンからパーティ会場に警察が入り、コカインを見つけたとの電話。

Epilog「エピローグ」:「和解」
現在時制に戻る。裁判は不利になるとのマリリンの進言を受け入れ、2つの訴訟を和解金を支払って終わらせることに。

Image2「ファイナルイメージ」:「エリカに友達リクエストを送る」
Facebookでエリカを検索し、友達リクエストを送る。何度もブラウザを更新。

【作品コンセプトや魅力】

マーク・ザッカーバーグを主人公としたFacebookの誕生秘話を、単なるサクセスストーリーとしてではなく彼が抱えていた二つの訴訟を通して描く。事実を元にした作品でありながら、描かれているのは脚色された物語的真実に過ぎないことを最後に喚起する。

【問題点と改善案】(ツイストアイデア)

特に無い。

【感想】

「好き」5「作品」5「脚本」5
 『英国王のスピーチ』がアカデミー賞を獲った年の対抗馬だったとのことで今更ながら初めて見たが、とても好きな作品だった。天才プログラマーの華麗なプログラミングスキルをFun&Gamesに据えたサクセスストーリーかと思いきや、本格派のヒューマンドラマである。そして友情バディものかと思いきや、終始噛み合わないマークとエドゥアルドの非対称な関係。度々出てくるビールを飲むシーンが彼らが同じ盃を交わすことができなかったことを示唆しているように思う。CFOという言葉を軽々しく使って良いように使うマークと、友を信じたエドゥアルド。最後、100万人突破の花火が虚しくモニターの中で上がる中、「やりすぎだ」とショーンにぶつける姿が悲壮感を誘う。
 加えて、若さ故の承認欲求や嫉妬心が共感を呼ぶストーリーというこの見方自体、一面的であると作中で示唆する点が良い。単なる事実の再現として描くのではなく、事実から物語を作る行為そのものを批評しているのである。訴訟を巡るやり取りがこの視点を浮かび上がらせる装置として上手く機能している。
 単なる事実を元にしたストーリーとして提示する以上の意義がここにある。むしろ事実を元にしたストーリーだからこそできる趣向とも言える。この点で、『英国王のスピーチ』が史実の歪曲だとか批判されているのに対してもカウンターになるのではと思った。本作が「何が事実か」を巡る争いそのものを描き、映画自体もひとつの解釈(物語的真実)に過ぎないというメタ的な態度を取っているのに対し、『英国王のスピーチ』は劇的カタルシスのためにパッケージングされた神話的真実を語っているという対比を取ることができるのである。あっちはあっちで題材的にそういう作りをせざるを得ないのかもしれないけども。(さいの、2026/06/26)

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