少し前の記事になりますが『すばる 2019年5月号』に高橋源一郎先生と斎藤美奈子さんの対談記事があって、お二人が『平成を考えるための10冊』をそれぞれ挙げていました。そのリストをご紹介しておきます。お二人が、どのような意図で選ばれたか気になる方は記事をお読み下さい。今後、挙げられている書籍で読んだものは記事にしていきたいと考えています。
※説明文はすべてAmazonの商品紹介より。画像はAmazonnへジャンプします。
高橋源一郎が選んだ「平成を考えるための10冊」
綿矢りさ『インストール』2001
学校生活&受験勉強からドロップアウトすることを決めた高校生、朝子。ゴミ捨て場で出会った小学生、かずよしに誘われておんぼろコンピューターでボロもうけを企てるが!?押入れの秘密のコンピューター部屋から覗いた大人の世界を通して、二人の成長を描く第三八回文藝賞受賞作。書き下ろし短篇を併録。
舞城王太郎『阿修羅ガール』2003
アイコは金田陽治への想いを抱えて少女的(ガーリッシュ)に悩んでいた。その間に街はカオスの大車輪! グルグル魔人は暴走してるし、同級生は誘拐されてるし、子供たちはアルマゲドンを始めてるし。世界は、そして私の恋はどうなっちゃうんだろう? 東京と魔界を彷徨いながら、アイコが見つけたものとは――。三島由紀夫賞受賞作。受賞記念として発表された短篇「川を泳いで渡る蛇」を併録。
岡田利規『わたしたちに許された特別な時間の終わり』2007
ブッシュがイラクに宣告した「タイムアウト」が迫る頃、偶然知り合った男女が、渋谷のラブホテルであてどない時を過ごす「三月の5日間」。疲れ切ったフリーター夫婦に忍び寄る崩壊の予兆と無力感を、横たわる妻の饒舌な内面を通して描く「わたしの場所の複数」。人気劇団チェルフィッチュを率いる演劇界の新鋭が放つ、真に新しい初めての小説。第2回大江健三郎賞受賞作。
伊藤計劃『虐殺器官』2007
9・11以降の“テロとの戦い”は転機を迎えていた。 先進諸国は徹底的な管理体制に移行してテロを一掃したが、 後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。 米軍大尉クラヴィス・シェパードは、 その混乱の陰に常に存在が囁かれる謎の男、 ジョン・ポールを追ってチェコへと向かう…… 彼の目的とはいったいなにか? 大量殺戮を引き起こす“虐殺の器官”とは? 現代の罪と罰を描破する、ゼロ年代最高のフィクション。
川上未映子『先端で、さすわさされるわそらええわ』2007
よるべなき虚空をゆく一個の疑問符は何を貫き、何に融けるのか?“少女”という憑坐を得て、いま言葉はうたい、さわぎだす。圧倒的新星の伝説的デビュー作を含む7編、ここに爆誕。
川上弘美『神様2011』2011
くまにさそわれて散歩に出る。「あのこと」以来、初めて――。
1993年に書かれたデビュー作「神様」が、2011年の福島原発事故を受け、新たに生まれ変わった――。「群像」発表時より注目を集める話題の書!
2011年。わたしはあらためて、「神様2011」を書きました。原子力利用にともなう危険を警告する、という大上段にかまえた姿勢で書いたのでは、まったくありません。それよりもむしろ、日常は続いてゆく、けれどその日常は何かのことで大きく変化してしまう可能性をもつものだ、という大きな驚きの気持ちをこめて書きました。――<「あとがき」より>
赤坂真理『東京プリズン』2012
本の学校になじめずアメリカの高校に留学したマリ。だが今度は文化の違いに悩まされ、落ちこぼれる。そんなマリに、進級をかけたディベートが課される。それは日本人を代表して「天皇の戦争責任」について弁明するというものだった。16歳の少女がたった一人で挑んだ現代の「東京裁判」を描き、今なお続く日本の「戦後」に迫る、毎日出版文化賞、司馬遼太郎賞、紫式部文学賞受賞作!
多和田葉子『献灯使』2014
大災厄に見舞われ、外来語も自動車もインターネットもなくなり鎖国状態の日本。老人は百歳を過ぎても健康だが子どもは学校に通う体力もない。義郎は身体が弱い曾孫の無名が心配でならない。無名は「献灯使」として日本から旅立つ運命に。大きな反響を呼んだ表題作のほか、震災後文学の頂点とも言える全5編を収録。全米図書賞(翻訳文学部門)受賞!
村田沙耶香『コンビニ人間』2016
「普通」とは何か? 現代の実存を軽やかに問う第155回芥川賞受賞作。36歳未婚、彼氏なし。コンビニのバイト歴18年目の古倉恵子。日々コンビニ食を食べ、夢の中でもレジを打ち、「店員」でいるときのみ世界の歯車になれる――。「いらっしゃいませー!!」お客様がたてる音に負けじと、今日も声を張り上げる。ある日、婚活目的の新入り男性・白羽がやってきて、そんなコンビニ的生き方は恥ずかしい、と突きつけられるが……。累計92万部突破&20カ国語に翻訳決定。世界各国でベストセラーの話題の書。
中原昌也『中原昌也 作業日誌 2004→2007』2018
第18回 Bunkamura ドゥ マゴ文学賞受賞作。 あの日記は氷山の一角だった! ! 「EYE SCREAM」誌連載の「親指王子ケイタイ日記」、2004年から07年8月までの約3年半の記録。 膨大な量が存在する雑誌未掲載部分も収めた完全版! 映画と音楽と書籍と実人生のすべてがひとつになって、中原昌也の宇宙を作り出す。その混沌の中の絶望と希望と憎しみと愛とが織り成す日記=文学。 一方、そこに記されたDVD、CD、LP、書籍など、膨大な購買の記録。 映画、音楽、文学を目指すものにとってのよきガイドとなるだけでなく、現代消費社会の不毛をいかに生き抜き、未来への一歩を踏み出すための道しるべとなるはずの必読の書。
*おまけ
町田康『告白』2005(あるいは『パンク侍、斬られて候』2004)
※『告白』はイルカとウマの読書会でも取り上げています。
小島信夫『残光』2006(あるいは『うるわしき日々』1997)
阿部和重『ピストルズ』2010(あるいは『ニッポニアニッポン』2001)
※ちなみに高橋源一郎先生には『日本文学盛衰史』、『今夜はひとりぼっちかい? 日本文学盛衰史 戦後文学篇』などの文学史扱った書籍があります。
緋片イルカ 2019/11/16
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