テーマ触媒1:「犯罪者」「コメディ」「ホラー」「ラブストーリー」

※「脚本課題」から「テーマ触媒」と改題しました。文中は課題のままです。

「ライターズルーム」での脚本課題についてヒントや意図を説明します。

あくまで「創作」は自由であるべきすが、課題として出している以上は「こういうところを身につけて欲しい」という狙いがあります。

自己流に解釈して、書きやすいように処理していると量の練習にしかなりません。

お読みになった上で、自由に取り組んでいただければと思います。

苦しいときは量の練習だと割り切って仕上げて構いませんが、継続課題として意識していただくとよろしいかと思います。

書き方のルールなどについては「脚本作法」の記事も参照してください。

2023年の1-2月分の課題は以下です。

000「年末年始」

出題済みの課題ですが、補足としてヒントを記しておきます。

「クリスマス」同様にハレの日はそれだけで「非日常」です。

またイベントならではのアイテムや風習があります。

そういった要素を取りこむことで、観客を「非日常」な気分に誘導しやすくなります。

この課題までは意図は問わないので、自由に書いていただいて構いませんが、三名とも共通して「バックストーリー」の設定があまいので、主人公の背景をよく想像してみてください。

30歳のキャラクターなら、その人にも生まれてからの30年間があるのです。

「バックストーリー」が見えてくれば、その人の性格や感情が自然と見えてくるはずです。

身近な人をモデルにして、アテ書きしてみるのも良いと思います。

※「クリスマス」課題を含む
脚本添削:『カクシゴト』(★4.00)
脚本添削:『煩悩』(★4.40)
脚本添削:『青春トライアングル』
脚本添削:『クリスマスプレゼント』(★4.50)
脚本添削:『イチョウの木の下で』(★4.50)

001「主人公が犯罪者」

抽象的な「罪」を犯す者ではなく、法律上の犯罪者を主人公としてください。

罪の軽重は問いません。殺人でもいいし、軽い窃盗でもかまいません。

初めての犯罪をするシーンから始めてもいいし、最後に罪を犯してもかまいません。

バックストーリーとして、そこに至る「動機」「価値観」「状況」といったものがあるはずです。

それらを説明的にならないように描くことを目指してください。

物語を書き慣れないうちは「安全なところ」から書きがちななので、一歩踏み込んで、自分が罪を犯すぐらいの覚悟で、犯罪者の気持ちを想像してみてください。

犯罪の背後には必ず「被害者」もいます。犯罪はドラマそのものともいえます。

とってつけたようなチンピラなんかにならないように、罪を犯してしまった一人の人間を描いてください(とにかく感情を!)。

脚本添削『干物箱』(★4.50)
脚本添削『壊された者たち』(★4.50)
脚本添削『魔除け』(★4.25)
脚本添削『とんとんどん』(★3.80)
脚本添削『腰抜け』(★4.00)

002「コメディ・笑い」

コメディはやや特殊なジャンルです。

「笑い」というのは人それぞれで、ドタバタのバカバカしい笑いが好きな人もいれば、皮肉やブラックユーモアが好きな人もいます。

自分が好きな「笑い」から書いていただいて構いませんが、それを物語で表現するということに挑戦してください。

「映画のコメディ」と「コント」の違いにも注意して下さい。

「コント」のようにただ可笑しいことを言うだけではなく、キャラクターアーク(あるいはwant)を通さなくてはいけません。

ファンタジー設定は禁止です。現実的なシチュエーションの中から笑いを見つけてください。

別のジャンルを書くにしてもコミックリリーフは必要になってきますので、コメディを書いておくと、どこかで役に立つと思います。

脚本添削『バレンタイン』(★3.75)
脚本添削『なまけもの』(★4.50)
脚本添削『いつかお姫様が』(★4.70)
脚本添削『主婦ズ・ナイト』(★4.70)
脚本添削『コンビニ事変-前編』(★3.43)

003「ホラー・恐怖」

ジャンルとしてホラーは簡単です。

幽霊、モンスター、超常現象などを扱えば、簡単に「ホラーっぽく」はなります。

しかし、そういった表面上の演出よりも本質的な物語を書くのが、脚本の仕事です。

ここでもファンタジー設定は禁止しますので、日常に潜むホラーを探してみてください。

ヒントは「主人公の恐怖心」です。

主人公と同時に、観客も恐怖を感じれば、どんな設定でも、それは立派なホラーになります。

「きゃあきゃあ」悲鳴を上げるのがホラーではありませんので、ご注意を。

もちろん、日常的なシチュエーション内での「ホラー的な演出」は大歓迎です(むしろ、ちゃんと入れてください)。

『ハクソーリッジ』でもそうだったように近年「ホラー的な演出」とテーマを組み合わせた作品が評価されているように感じます。『ゲットアウト』とか。

今後の企画やコンクールの応募にも狙い目だと思います。

脚本添削『ルカ』(★4.25)
脚本添削『置き土産』(★4.70)
脚本添削『訪問者』(旧題:『侵入者』)(★3.40)
脚本添削『車』(★5.45)
脚本添削『箱入り』(★5.37)

004「ラブストーリー・恋心」

コメディ・ホラー同様、別ジャンルを書くにしても、絶対に書けなくてはいけないのがラブです。

広い意味で親子愛、ペットへの愛などと解釈しだすと逃げ道が出来てしまうので、今回は直球の「恋心」とします。

初恋、叶わぬ恋、忘れれない恋、好きゆえの苦しみ。そういった感情を主人公にもたせてください。

性別は問いませんが、ファンタジー設定は禁止なので「アンドロイドへの恋」などもなし。

すべてにおいてバックストーリーが関わります。設定ではなく「感情」が大事。

たとえば「不倫」は倫理的にいけないこととされていますが、現実では多くの人が不倫しています。

設定上で「叶わぬ恋=不倫」としたところで、それだけでは観客は共感できません。

「みんなしてるじゃん」とか「うじうじしてないで不倫ぐらいしろよ!」と思われかねません。

不倫を叶わぬ恋として描きたいなら、キャラクターの「不倫をしていはいけない」という性格や価値観を伝えなくてはいけません。

そして、そういう人が罪を犯すからこそ観客の興味を引いて面白くなるのです。

「同性愛」などの設定も同じです。設定は観客にとっては「頭での理解」にしかなりません。「心で共感させる」のが脚本の仕事です。

何度でも言いますが「感情」が大事なのです。ドラマこそが物語の本質です。

「感情」が描けるようになれば、同性愛でもアンドロイド愛でも特殊な設定でも書けるようになります。

また、歴史上、恋心からは多くの詩や歌が生まれています。映画でも名ゼリフがたくさんあります。

「好き」という気持ちをただ「好きなの!」と言わせては面白くありません。

恋の決めゼリフ、口説き文句などを入れこんでください(後で、どれが決めゼリフなのか聞きますね?)。

脚本添削『気になるやつら』(★4.70)
脚本添削『ラブエネルギー』(旧題:『隣』)(★3.90)
脚本添削『カスミソウ』(★4.60)
脚本添削『始まりの夕焼け』(★4.50)

緋片イルカ 2022.12.23

テーマ触媒のリスト

1:「犯罪者」「コメディ」「ホラー」「ラブストーリー」
2:「脚色」「二面性」「キーアイテム」「サイレント」
3:「回想」「ミステリー」「はじまり」「おわり」「いちばん書きたいもの」
4:「ことわざ」「母親」「光と影」「何も起こらない話」
5:「モノローグ」「イケメン」「夏」「動物」
6:「海」「時代劇」「ブス」「タイトルオマージュ」
7:「音楽」「冬」「セクシーさ」「小説」
8:「山」「父親」「アクション」「ビジュアライズ」
9:「珍味」「春」「兄弟」「冒頭セリフ指定」
10:「想い出」「東京」「植物」「身体障害者」
11:「色」「パーティー」「手紙」「スポーツ」
12:「死んだ友人」「秋」「超能力」「逃亡者」
13:「昆虫」「プロット指定」「姉妹」「匂い」
14:「結婚」「AI」「不可能」「警察官」
15:「電話」「トラウマ」「雨」「当て書き」
16:「大きな決断」「登頂」「どん底」「夢オチ」
17:「ワンシチュエーション」「2人だけ」「視線」「手指」
18:「別れた恋人との再会」「キスシーン」「復讐」「ニュース記事から」
19:「殺人シーン」「病院」「飢餓感」「血」
20:「子供」「鏡」「恥」「自分をモデルに」

リハビリ:「模写」「半模写」「脚本起こし」「演出模写」

※書き方のルールなどについては「脚本作法」の記事も参照してください。

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