「三幕構成」初級・中級・上級について(#33)

これまで、当サイトでは「三幕構成」や「ビート」について、たくさんの記事を書いてきました。

かんたんに整理しながら、初級・中級・上級のちがいについて説明しておこうと思います。

入門編

まず「三幕構成」とか「プロットポイント」といった基本用語もわからず、まったくの初めての方には入門編として、

→ 初心者向けQ&A①「そもそも三幕構成って何?」

をどうぞ。

イルカとブタの対話形式でポイントを説明してあります。

初級編

「ログライン」「ビート」といったものを解説しているのが、

→ ログラインを考える1「フックのある企画から」

から始まるシリーズです。音声解説もつけてあります。

全体をつかむための「ログライン」を説明し、その後、一つ一つの「ビート」についての用語の意義を説明しています。

なお、ブレイク・スナイダーのビートシートの考え方をベースにしてはいますが、分析経験や、他の分析家の考え方を取り入れて、補足・改良した「ビート」になっています。

理論とか研究ではなく、あくまで創作のための「ビート」であるべきだと思っているので「使えるものは何で取り入れる方針」です。

今後も、使えるものがあれば改良していきますが、いまの形になってから改良を迫られたことはありません。

「ビート」は数が多くて、なかなかすべてを一気にとりいれるのは難しいと思いますが、基本は「プロットポイント」と「ミッドポイント」のスリーポインツです。

小説や映画をみて、その作品のスリーポインツをとれれば「初級」としては合格といえると思います。

そこから、創作に応用する段階では「カタリスト」「デス」「ビッグバトル」が重要になってきます。

また、用語を使わずに、三幕構成の概念を説明したシリーズもありますので、参考にしてみてください。

→ 三幕構成の作り方 Step1「物語は旅である」(全8回)

研究者や書籍を参考にしたい場合はストーリー機能・分類まとめから、作品分析の実例はがっつり分析からどうぞ。

中級編

武道などで「守」「破」「離」という考え方があります。

初心者は基本のルールを「守る」こと。

基本を体得した中級者はときにルールを「破って」よい。

上級者は免許皆伝してルールを「離れて」独自の流派をつくっていく。

中級編は三幕構成の「破」にあたります。

一例だけあげると、

アクト2で上昇していくアークでは「デス」ではネガティブなイベントが起こりますが、アクト2が下降していくアークではポジティブなイベントが起こります。

こういった説明がスッと入ってくるかどうかも初級と中級の差ですが、ここでは「デス」というビートの基本的な意義が反対になっています。

物語は無限なので、すべてを型にはめることはできません。

「物語のパターンは○○個しかない」とか「1つしかない!」などと言う人は「プロットポイント」をとる程度のことで捉えているに過ぎません。

たしかに構成だけでいえば、共通するパターンはいくつもあります。

喩えるなら、家というものに「柱」や「壁」や「屋根」があるのは共通します。

けれど、一軒一軒はまったく違います。建て売りの、同じ造りの家でも、住む人によって変わっていきます。

物語でいえば作者によって変わるのです。

一流の建築家なら「柱」がない家をデザインできるように、あえて「プロットポイント」がないような物語だって創れます。

こういったことは、教科書的に「ビート」の意義に従ってるだけでは掴めるようにはなりません。初級と中級のちがいです。

中級編の記事は数は少ないですが、

→ 「葛藤のレベルとアーク」(中級編1)

から始まる記事にあります。

また、中級以上では「構成」だけでなく「描写」「テーマ」といった抽象的なことも、捉えていく必要もあります。

「構成」「描写」「テーマ」の3つはストーリーの重要な要素として、

→ ストーリーサークル1「題材」

から始まる記事で、全体像をまとめてあります。

上級編

上級者は「独自のスタイル」を立てること。

小説の「文体」であったり、扱うジャンルやテーマでの専門性がでてきます。

たとえば、ミステリー専門の人はトリックなどに詳しいべきだし、ラノベの「転生もの」のようなものであっても、そのジャンルに精通していなければ、過去作品と被っていると言われてしまいます。観客の方が精通してる可能性は多いにあるのです。

一人の作家が、すべてのジャンルを網羅することはできないし、する必要もありません(それは研究者の仕事です)。

作家は得意のジャンルを武器として、いくつか持っていれば充分に戦えるでしょう。その代わりに、そのジャンルでは「誰にも負けない」という自負が必要です。

このレベルを目指すのは孤独な道です。サムライが己の道を突き進むようなものかもしれません。

プロで続けている人は我流で「独自のスタイル」を創り上げた結果でしょうが、それでも壁にぶち当たることもあるでしょう。

そんなときに、集まって意見や情報や、創作の悩みすら、交流できる場があればいいと考えます。

そういう場をつくるために続けているのが、「読書会」です(「読書会」と同時開催している「合評会」は鍛錬の場のようなものです)

僕自身、まだ上級者ではありませんが、会からプロが生まれてくれば嬉しいと思っています。

また、今後も含めて「上級レベル」と思うようなテクニックは記事にはしません。もちろん有料記事などにも。

「自分が磨いたテクニック」を売ろうなど思わないからです。作家を目指す者には商売道具です。

当サイトも「読書会」も儲けるのが目的ではなく「交流の場をつくること」が目的です(だから参加費も頂いていません)。

賛同いただける方のご参加はとても嬉しく思います。

(※とはいえ「読書会」は楽しくをモットーにして和気藹々とやっています。上級者の集まりとしての読書会は、あくまで理想のはなしです)

緋片イルカ 2020/12/18
2022.10.8 改稿

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