※この分析は「脚本講習」の参加者によるものです。
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【ログライン】
過去に息子を誘拐されたジョンは、犯罪予知システム「プリコグ」を信じ、犯罪予防局で働いていた。ある日、システムの欠陥に気付き、ラマ―に報告。その後、ラマ―の計画で、ジョン自身が容疑者となるイメージデータを受け、逃亡するが、結果的に犯罪を犯さなかったことで、考えを改め、ラマ―の悪事を公にし、システムも廃止し、自分の未来も変える話。
【ビートシート】
CC「主人公のセットアップ」:「息子・妻の映像/覚せい剤」
息子の過去の映像や妻との思い出を見ているシーン。覚せい剤を使用していることからも主人公に辛い過去がある設定だと分かる。
Catalyst「カタリスト」:「アガサに抱きつかれ映像を見る」プリコグ内にいるアガサという女性に抱きつかれ、犯罪の映像を見るシーン。これにより、マイノリティリポートがあるのではないか、信じていたシステムに欠陥があるのではないかと疑いだすキッカケとなる。
Debate「ディベート」:「収容所へ行き、イメージの確認をする」未来の罪で捕まっている人が収容されている収容所で、アガサから伝えられたイメージの確認をする。アンライブリーの映像。結果的にイメージが欠落しており、アガサのイメージだけがなくなっている。
Death「デス」:「ラマ―にイメージデータの欠落を伝える」ラマ―にイメージデータの欠落を伝える。他のデータも調査した結果、いくつか欠落しており、欠陥があるのではないかと伝える。これにより、ラマ―の計画で容疑者にされる。
PP1「プロットポイント1(PP1)」:「木の球が出てくる/被害者リオクロウ/容疑者ジョンアンダートン」ジョン自身がリオクロウを殺す映像を受け取るシーン。ジョンがドアから入ってくるショットもあり、ここから逃亡するアクト2が始まる。
Battle「バトル」:「逃亡」犯罪予防局の警報がなり、逃亡した事を伝えられる。同僚だった者や法務省のウィットワ―に追いかけられる。
Pinch1「ピンチ1」:「ハイネマン博士」プリコグを作った博士の元へ行く。博士からマイノリティリポートがあり、それをダウンロード出来ることを知らされる。これをキッカケにアガサを連れ去るミッションになる。
MP「ミッドポイント」:「眼球を取り替える」マイノリティリポートが自分の容疑をはらす鍵になると考え、虹彩認証から逃れるために闇医者で眼球を交換する。映像としてもインパクトがあり、この後、フォールが始まるのでMPと考えた。
Fall start「フォール」:「過去(夢)/居場所が見つかりそうになる/マイノリティリポートがない/リオクロウと出会う」眼球交換後、医者に12時間の安静が必要と伝えられ、息子が失踪した頃の夢を見る。ここからフォールスタート。起きた後、犯罪予防局が使うスパイダーが放たれ、居場所が見つかりそうになる。それも何とか乗り切り、犯罪予防局へ侵入し、アガサを連れ去るもマイノリティリポートがない。結果的にジョン自身が犯罪予防局で見た犯罪のイメージ映像通りになっていく。
Pinch2「ピンチ2」:「」
PP2(AisL)「プロットポイント2」:「アラームが鳴る/撃たない」ジョンは犯罪が起こる時間に毎回アラームを設定していた。自分自身の犯罪時間にもアラームを設定しており、アラームが鳴る。しかし、ジョンは撃たなかった。ここで未来は自分で変えられると気付く。リオクロウの発言により、自分が誰かにはめられていた事にも気付く。ここから真犯人を追うアクト3が始まる。
DN「ダーク・ナイト・オブ・ザ・ソウル」:「」
BBビッグバトル:「ラマ―を追い込む」ラマ―との対決。ラマ―の悪事をパーティーで公にし、屋上で追い詰める。ラマ―は自殺して終わる。
エピローグ:犯罪予知システム廃止、ララの妊娠、アガサと双子の幸せ
【感想】
近未来の映像やアクションは魅力がありました。ただ、最後のララの妊娠の映像はどこで2人が子どもの失踪を克服したのかも分からず、無理やりな印象を受けてしまいました。アガサを家に連れていった際の「愛で溢れている」というシーンがそのキッカケとなっていたのかもしれませんが、(私には)分かり難かったです。アガサがショーンの話をしてくるシーンも突然だと感じてしまったのですが、あのシーンを入れるとなるとアガサが叫ぶというインパクトも考えてジョンが捕まる前しかないのかなとも思いました。個人的には妊娠しているという映像は無くても良かったと思います。
(米俵、2022.10.15)
近未来SFの映像は面白かったですね。犯罪予知というテーマもよく映像化されていました。
確かに最後のララの妊娠は時間経過があって唐突な印象を受けてしまうかもしれませんね。ララが過去を乗り越えたとわかるシーンが必要だったかもしれません。
ほぼ同じですが、私もビートを考えてみました。
ストーリータイプは「なぜやったか」の「ファンタジーなぜやったか」です。
Image1:「犯罪予知イメージ」
作品のモチーフで犯罪予知イメージです。続いて被害者の目からアガサの目、ハワードのド近眼、自由と平等の象徴リンカーンのえぐられた目、被害者、加害者の名前が刻印される木の球などは目のイメージ系統です。犯罪予防の多忙さで陣痛が遅れている職員が出てきます。
また、ハワードは犯罪をしていないのに逮捕されてしまう、「人間は未来を変えられないのか?」がこの作品のテーマです。
CC:「犯罪予防局チーフ」「覚せい剤」「息子・妻の映像」
街の広告では犯罪予防局によって暮らしは安心だと宣伝されていますが、チーフ捜査官のジョンは覚せい剤を常用しています。薬の売人に自分の秘密とは何かを問うと、真実が見えれば片目でもキングだと予言されます。かつての息子や妻を懐かしみ、ジョンは現実を受け入れられないようです。このままでは「静止=死」です。
Catalyst:20%27分「ウィットワーが聖域に入る」「アガサの犯罪イメージを見る」
ウィットワーが聖域に入り、ジョンに失踪した息子について聞いて、人間の欠陥を指摘します。続いてアガサがシステムの欠陥、マイノリティリポートの発見につながる過去の犯罪イメージをジョンに見せます。このウィットワーとラマーとの二つのプロットが進行します。
Debate:「収容所へ行き、アガサのイメージの確認をする」
アガサの犯罪イメージは何だったのか。被害者はアン・ライブリーとわかりますが、行方不明、当時のアガサのイメージは欠落していることがわかります。
Death:26%34分「ラマ―にイメージデータの欠落を伝える」「ウィットワーがジョンの覚せい剤を発見」
ジョンはラマ―にイメージデータの欠落を伝えることで、容疑者に仕立てられることになります。同時に、ウィットワーがジョンの覚せい剤を発見してジョンは職を追われる証拠を掴まれてしまいます。
PP1:28%37分「犯罪予知でジョンに容疑」「ジョン、ウィットワーに覚せい剤使用で追及される」
ジョンをハメた「秘密」を探求する第2幕に入ります。ジョンはウィットワーに仕掛けられたと誤解します。
Battle:「ジョンの逃亡」
「秘密」の探求のため、MPに至るまで犯罪予防局の捜査官やウィットワ―との逃走バトルです。SFアクションの「お楽しみ」になっています。
Pinch1:40%50分「ハイネマン博士からマイノリティリポートを教えられる」
博士からシステムの欠陥である、マイノリティリポートの存在を教えられ、犯罪予防局のアガサの元に戻らねばなりません。そのため虹彩認証から逃れる眼球が必要です。
MP:50%68分「眼球交換」
闇医者で眼球を交換。犯罪予防局に戻るための折り返しです。AとBストーリーが交差して、その夜息子が失踪した夢を見ます。
Fall start:56%78分「犯罪予防局に発見されそうに」
ジョンは犯罪予防局が使うスパイダーに見つかりそうに、片目を失明し逃れます。元の目も片方失って犯罪予防局へ侵入し、アガサを連れ去ります。
Pinch2:65%90分「ルーファスの元へ、マイノリティリポートはない」
技術者のルーファスにマイノリティリポートを探させますが、ありませんでした。ピンチ1の対です。しかし、ジョンはリオ・クロウとは何者なのかつきとめたく、「暗雲」が立ち込めてきます。
PP2(AisL):75%103分「息子の写真発見」
AとBストーリーが交差して、ジョンはリオ・クロウの部屋に息子の写真を見つけ、殺すことを決意してしまいます。
DN:103分~「リオ・クロウを殺してしまうのか」
アガサが止めますが、ジョンはリオ・クロウを打ちのめし、銃口を向けます。
BB(TP2):78%106分「真犯人ラマーとの対決」
prepare:土壇場でジョンは撃たない決断をします。未来を変えました。ところが、リオ・クロウは金のため殺人犯のふりをしていて、自らをジョンの銃で撃ってしまいます。真犯人は誰なのか。ビッグバトルの始まりです。ウィットワーはジョンが犯人でないことに気づき、ラマーにアン・ライブラリーのイメージを見せ、犯行のトリックと真犯人の存在を語り、殺されてしまいます。ジョンはアガサとララの元へ行き、アン・ライブラリーを殺したものが真犯人であることに気づきますが、犯罪予防局に逮捕されてしまいます。その後、ララが死因を知るラマーが真犯人であることを確信します。
start:ララがジョンの片目を使って、収容所から解放し、ラマーと対決です。捜査員たちを通じて、ラマ―の犯行イメージをパーティーで公にします。
twist:ラマーがジョンを殺すイメージが予知されます。
solution:解決法は殺人の決断をラマーに委ねることです。ラマーはジョンを殺せばシステムが存続しますが、収容所送りです。
BF:ラマ―は自殺を選択します。ジョンはラマーの名誉欲を見越したのです。「最後の部屋」には未来が変えられることが示されていました。
エピローグ:囚人は免罪、犯罪予知システムは廃止。ジョンとララは息子の失踪を乗り越え、ララは妊娠しています。アガサと双子の解放。新しい日常が帰ってきました。未来は変えられることが強調されます。真のジンテーゼです。
Image2:「解放されたアガサたちが暮らす秘密の某所」アガサの手には母親のイメージが入ったホルダーが、彼女たちにはもうイメージを見る力はありませんが、代わりに読書によって自由に知識や経験を得る安息な生活が得られました。
「ブレードランナー」のフィリップ・K・ディックの原作で、目が重要なモチーフであり、アイデンティティを示すものであるところや、また映画「ブレードランナー」の雨や霧などとの共通点も感じました。
ビッグバトルで対峙するのが世俗的なラマーの名誉欲であるところにちょっと物足りない感じがあったので、例えば犯罪予防を支持する世論と対峙するような構図になった方がよかったかもしれません。