映画『ホエール』(三幕構成分析#229)

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※あらすじはリンク先でご覧下さい。

※分析の都合上、結末までの内容を含みますのでご注意ください。

【ログライン】

肥満によるうっ血性心不全のチャーリーは、死ぬ前に疎遠だった娘と接触し、娘が自分の最高傑作であり、人生で唯一の正しい行いだったと確信を持つ。

【フック/テーマ】
肥満症、うっ血性心不全、過食症、同性愛、エッセイ/親子愛、過去の清算

【ビートシート】

Image1「オープニングイメージ」:「バスから降りるトーマス」
いかにもなOPイメージだが、フリウケになっておらず、冒頭に置く意味はあまりないように思う。
強いて意味をつけるとするなら「エリーによって救われる男(トーマス)」。

GenreSet「ジャンルのセットアップ」:「太った男」
エッセイのオンライン講師。外見を気にしている。

Premise/CQ「プレミス」/「セントラル・クエスチョン」:「自分の行いに自信を持って死ねるか」

want「主人公のセットアップ」:「白鯨のエッセイ」
元妻からもらったエリーの書いたエッセイ。死ぬ前に読みたいもの。

Catalyst「カタリスト」:「発作」
死に直面するような発作。

Debate「ディベート」:「病院にはいかない」
お金の心配をして病院へ行かない。

Death「デス」:「余命宣告」
亡くなった恋人の妹であるリズは、看護師であり、最も病状がわかっている人物。彼女から「このままでは週末までに死ぬ」と告げられる。

PP1「プロットポイント1(PP1)」:「エリーに提案」
12万ドルと引き換えにエリーとの時間を作る。
エリーの宿題を手伝う代わりに、自分に対してもエッセイを要求する。

Pinch1/Sub1「ピンチ1」/「サブ1」:「エリーの疑問」/「トーマスの背景」

MP「ミッドポイント」:「エリーの詩」
エリーの書いた詩に気づき喜ぶが、そのせいで発作を起こす。

Fall start「フォール」:「睡眠薬」
エリーに睡眠薬を盛られる。

Pinch2/Sub2「ピンチ2」/「サブ2」:「エリーの主張」/「トーマスの事情」

PP2(AisL)「プロットポイント2」:「エリーが去る」
元妻とリズの来訪により、エリーは宿題を回収して「早く死んで」とチャーリーの元を去る。

DN「ダーク・ナイト・オブ・ザ・ソウル」:「確信が欲しい」
元妻に娘は大丈夫だと言わせることで「人生でたった1つ正しいことをした」という確信を求める。

BB(TP2)「ビッグバトル(スタート)」:「エリーの善行」
トーマスが帰れるようになったのはエリーのおかげだと聞く。
エリーが邪悪な人間ではないと確信し始める。

Twist「ツイスト」:「恋人が死を選んだ理由」
トーマスより救済の言葉を貰う。しかし、それは自分のせいで恋人が死んだという内容で、自分の行いや姿に否定的になる。

Big Finish「ビッグフィニッシュ」:「エッセイを音読してもらう」
エリーに謝罪し、白鯨のエッセイを音読してもらう。
エリーが自分の最高傑作だと確信する。

Epilog「エピローグ」:「エリーの元へ」
最初に会った日にエリーが望んだ「自力で立ってここまで来て」をやり遂げる。

Image2「ファイナルイメージ」:「思い出のビーチ」
これも話に深く関わっていないので機能していないように思う。
オープニング同様、強いて意味をつけるなら「エリーによって救われた男(チャーリー)」。

【作品コンセプトや魅力】

原作は戯曲(サミュエル・D・ハンター)、特殊メイク、ダーレン・アロノフスキー監督、極度の肥満状態での生活、疎遠な娘との接触、宗教、同性愛、他人の目、エッセイ

【問題点と改善案】(ツイストアイデア)

フックになる要素が多いのに掘り下げられていない。
チャーリーが動けないので仕方ないのかもしれませんが、家への出入りが多い。誰かが来たら誰かが出ていくので、会話が進んでいるようで進んでいない感覚がありました。(戯曲だから仕方ない?)
他の視点を取り入れたり、会話のタイミングを調整するだけでもフック要素をもう少し掘り下げられる気がします。

【感想】

「好き」4「作品」4「脚本」3
チャーリーの、人間の最期の承認欲求と言えばいいのか、どうしようもない業に胸が苦しくなりました。
それ以外の人物は、少し忙しなく過ぎていきました。なかなか共感するタイミングが取れず、結果が早いなという印象を受けました。
フック盛りだくさんの群像劇なので仕方ない部分はあるのかもしれません。でも、もう少しそれぞれのストーリーが見たかったです。

(雨森れに、2025/7/3)

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