映画『バレリーナ The World of John Wick』(三幕構成分析#266)

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※あらすじはリンク先でご覧下さい。

※分析の都合上、結末までの内容を含みますのでご注意ください。

【ログライン】

幼い頃に父を殺された過去を持つイヴは、孤児を集めて殺し屋とバレリーナを養成する機関:ルスカ・ロマに入り、殺しのスキルを磨く。そして復讐に立ち上がるが、裏社会の掟を破ったことをきっかけに、自身も追われながら、危険に晒されながらも父への復讐を果たす。
【フック/テーマ】
ジョン・ウィックシリーズのスピンオフ・女殺し屋/復讐心・父への愛

【ビートシート】

Image1「オープニングイメージ」:「父とバレエの練習」

GenreSet「ジャンルのセットアップ」:「家に侵入者」
父は侵入者と格闘。ここにおいて、本作がアクション/殺しをメインにした作品だと示される。
Premise/CQ「プレミス」/「セントラル・クエスチョン」:「父を殺した主宰に復讐を果たすことができるのか」

want「主人公のセットアップ」:「父の死」「ウィンストンとの出会い」
復讐心の芽生え。
Catalyst「カタリスト」:「ディレクターとの出会い」
イヴはルスカ・ロマの指導者兼バレエの舞台監督であるディレクターと出会い、そこで生きていくことを認められる。
Debate「ディベート」:「バレエのトレーニング」「殺しのトレーニング」
12年後、成長したイブはバレエのトレーニングをしている。しかし、うまく踊れない。並行して、殺しのトレーニングも行う。こちらもうまくいかない。
Death「デス」:「最終訓練/人を殺す」
訓練の最終ステージ。イヴは幼少期を思い出すが、迷わず引き金を引き、人を殺す。
PP1「プロットポイント1(PP1)」:「ジョン・ウィックとの出会い」
ここから出るにはどうすればいいのか。という問いに対する短い会話。抽象的ではあるが、同じ復讐心を抱くものとして、ジョン・ウィックはイヴに我が道進むべきであると示唆する。
F&G「ファン&ゲーム」:「最初の仕事」
ディレクターからある女性の警護の仕事を任される。数々の刺客に襲われながらも女性を守ることに成功する。
Battle「バトル」:「×印、教団の手掛かり」「ウィンストンから教団に関する手掛かりを得る」「襲撃/ダニエルらとともに逃げる」

Pinch1/Sub1「ピンチ1」/「サブ1」:「なし」

MP「ミッドポイント」:「ダニエルが撃たれる/娘が連れ去れれる」

Reward「リワード」:「武器を手に入れる」
武器屋で武器を手に入れる。そこで何者かに襲われるが敵を倒し、店主から教団に関する情報を聞く。
Fall start「フォール」:「敵に囲まれ、捕らえられる」
教団のある街に到着したイヴはそこで数々の刺客に襲われながらも倒していくが、街が教団の支配下となっており、多数の前に敵わない。レナに捕らえられてしまう。
Pinch2/Sub2「ピンチ2」/「サブ2」:「なし」

PP2(AisL)「プロットポイント2」:「主宰に殺すと告げる」
姉のレナを主宰に殺され怒りに燃えるイブは、主宰に対し殺すと宣言。一方、主宰はイブの排除をディレクターに命令。ディレクターはジョン・ウィックに向かわせることを示唆する。
DN「ダーク・ナイト・オブ・ザ・ソウル」:「ジョン・ウィックとの対決」
ジョン・ウィックはイブに街から出ていくことを命令するが、イブは受け入れない。0時までに終わらせることを条件に、ジョン・ウィックはイブの復讐を静観することに決めた。
BB(TP2)「ビッグバトル(スタート)」:「イブ殺害指令」
ジョン・ウィックがイブを逃がしたと知った主宰は、住民にイブの殺害を命令する。ここにおいて、イブの最後の戦いが始まる。
Twist「ツイスト」:「ジョン・ウィックの応戦」
万事休す。ピンチに陥ったイヴだったが、ジョン・ウィックの応戦により、命が助かる。
Big Finish「ビッグフィニッシュ」:「主宰を殺害」
これにてイヴの復讐は完結する。そしてダニエルの娘を救出する。
Epilog「エピローグ」:「ダニエルは生きている」
生死不明だったダニエルは生きており、病院で娘と抱き合う。
Image2「ファイナルイメージ」:「バレエを見ている/賞金首となる」
バレエの舞台を見ているイヴ。そんな彼女にもとに通知が届く。イヴに懸賞金がかけられ、追われる身となる。

【作品コンセプトや魅力】

ジョン・ウィックシリーズの公式スピンオフ作品。これでもかというくらい人が死ぬ様と、様々なバリエーションを通じての死が魅力か。また、シリーズ同様迫力あるアクションの連続で、見ていて飽きがこない。

【問題点と改善案】(ツイストアイデア)

コンチネンタルホテルでは人を殺してはならない。イヴはキキーモラであり、復讐のために人を殺すことは掟破りとなる。など、ジョン・ウィックシリーズ特有の知識を知っていないと、初見では置いてけぼりになるのが惜しい。そのあたりの情報は既に知っているものとされ、強調して説明されることはないため、新規の視聴者を取り入れることは難しいか。
ここにスピンオフ作品の難しさを感じる。内容としては【感想】にも後述するように、作品としての完成度は本作の方が高いと評価する。とはいえ、ジョン・ウィックシリーズのスピンオフであること自体が本作のフックであるため、独特な世界観を排除して描こうとすると、女殺し屋の復讐劇に落ち着き、どこかで見たことのある作品に成り下がると感じる。
シリーズを未視聴の人にも理解できるよう、ある程度の説明を本編にも取り込み、いかに新規の視聴者を取り入れつつ、既存の視聴者をも満足させるような構成にできるかといったところがスピンオフ作品においては重要であり、課題であると感じた。

【感想】

「好き」5「作品」4「脚本」4
問題点にも記述したように、ジョン・ウィックシリーズ特有の専門用語や世界観を構築する上で欠かせない殺し屋の掟など、多少なりとも予習は必要か。とはいえ本作単体でも作品としては成立しているため、十分に楽しめる。
ジョン・ウィックといえば、一作目こそ復讐劇の意味合いが強かったが、二作目以降は殺し屋アクションに特化した映画のイメージがある(視聴したのは割と前の為、記憶があやふやなところはあるが)。しかも一作目の復讐心を抱く動機が犬を殺されたこと。もちろん文脈があっての話ではあるが、感情移入が難しかったと記憶している。しかし本作では父の死というわかりやすい動機を描くことで、主人公の復讐心に火がつくさまを理解しやすくなっていた。
予告にも使われている火を使ったアクションシーンはかなり迫力があり、個人的には見ていて楽しかった。このシリーズの魅力のひとつでもあるアクションが遺憾なく発揮されており、イヴを演じたアナ・デ・アルマスがこんなにもアクションができる女優であると初めて知った。
個人的にはジョン・ウィックシリーズより、こちらのスピンオフ作品の方が作品としての完成度は高く、好きだったと言える。

(山極瞭一朗、2026/01/30)

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