前回より、6つの言動決定要素の「気質」について考えてきました。今回は「感性の敏感度」についてです。
【価値観は同じでも、感性が違うと……】
前回、「電車の中で大音量で音楽を聴く若者」に対して「うるさい」と思うか「ふつう」と思うかを話しましたが、これが感性の「敏感度」の違いです。
別の例で考えていきましょう。
ある夫婦が「犬を飼いたい」という価値観をもっていて、子犬を飼い始めました。
しかし、この子犬がとにかく「きゃんきゃん」吠えてうるさい。
妻は「耐えられない。やっぱり犬なんか飼うんじゃなかった……」
しかし夫は「子犬なんだし、これぐらい仕方がないだろう」と気にしていません。
この夫婦に「敏感度」の違いがあるとします。
子犬が吠える数値を「5」とします。音量ボリュームのようなものと考えてください。
妻が「うるさい」と感じる閾値が「4」、夫の閾値が「6」だとすると、妻は4を超える音に「うるさい」と感じるけれど、夫は「ちょっと大きい音だな」ぐらいにしか感じていないことになります。
【閾値を考えることで葛藤をつくる】
ゲームではないのでキャラクターにいちいち閾値を設定する必要はありませんが、閾値の差から葛藤を作っていけることは重要です。
物語では葛藤をつくるのがセオリーですが、「価値観での葛藤」を設定することも可能です。つまり「犬が嫌いな妻」と「犬好きの夫」です。
これは対立は大きいのですが、その分、キャラクターが大ぶりになります。正反対の価値観のキャラクターをぶつけることは、葛藤というよりも喧嘩になりがちなのです。
あまりにぶつけすぎると、そもそもこんな合わない人間同士がなぜ結婚などしたのだろう?というような設定の根本を揺るがしかねないこともあります。
上の「子犬好きの夫婦」をていねいに描いていくと、心のすれ違いを描いていけます。
妻はもともと「犬が好き」だったので、しばらくは我慢するかもしれません。
しかし閾値を超える不快感はストレスとなって、体調にも異常をきたすかもしれません。
やがて苛立ちが子犬だけでなく、子犬を可愛がる夫へも向くかもしれまぜん。
「最初は好きだったのに、いつしか……」
これが子犬ではなく、人間の子供だったらどうでしょう?
夫婦に限らず人間の気持ちの変化は、ものすごく小さいところから起きているのかもしれません。
次回は……キャラクター概論16「言動決定要素③気質:内向性・外向性」
緋片イルカ 2019/07/26
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