キャラクター概論19「言動決定要素③気質:体質として考える」

これまで6つの言動決定要素のうち「気質」について考えてきました。今回は「体質」としての気質を考えます。

【気質はつまりは体質】
以前に「感受性には閾値があり、それは肉体的なものであるということ」を考えました。
これは体そのものの特性としての設定もできます。
ややコメディなキャラクターになりますが、ストレスがかかるとすぐに胃腸が痛くなる、ちびまる子ちゃんの山根くんのようなキャラクターです。

ADHDの人の中には神経が過敏(閾値が低い)ので、人混みや光りが苦手な人がいます。
音量に耐えかねて両耳を手で塞いだり、走って逃げ出してしまうかもしれません。

イライラしたり不安を感じると、貧乏揺すりをしたり、ついタバコを吸ってしまうといった設定も考えられます。

山根くんやADHDの反応では体質といえますが、タバコのような社会的な行動ではクセと呼んだ方がしっくりきますが、根本にあるのは気質としてのストレスです。

【閾値と共感性】
閾値が低いキャラクターは不安を感じやすい反面、他者への気遣いもしやすくなります。
例えば「冷房に弱い体質」であれば、「寒くないですか?」と自分の感性を基準に、他者に気遣いができます。
反対に「暑がりな体質」であれば、冷房の温度設定を下げて相手に嫌がられるかもしれません。

閾値の基準が低い同士であれば共感します。

「寒くないですか?」→「わたしも、そう思ってました」
「暑いですね?」→「わたしも、そう思ってました」

これは、キャラクター概論15「言動決定要素③気質:感性の敏感度」で書いた、夫婦のすれ違いの逆バージョンとも言えます。

「犬を飼いたい」という価値観が一致して飼い始めた夫婦。しかし鳴き声がうるさい。
夫婦で閾値に差があると、一方がストレスを抱えることになりますが、夫婦ともにうるさいと感じれば犬を飼うのを辞めてしまうかもしれません。物語としては葛藤が足りませんが……。

【価値観は違うけど、閾値が近いキャラクター】
夫が「犬を飼いたい」、妻が「猫を飼いたい」という考えを持っていたとします。
二人の価値観は対立しています。
しかし、両者とも「世話をすることに対する面倒苦さが強い」とすれば、これは閾値の問題です。
すると、犬でも猫でもなく手間のかからない金魚を飼うかもしれません。
共感という部分では、価値観よりも感受性の影響のが大きいのです。

もう一つ例をあげます。

以下のA、B、C。仲良くなれそうなのはどの二人でしょうか?

A「野球が好き。弱いチームが頑張って勝つ姿が好きなので、弱いチームを応援する」
B「野球が好き。勝利することが好きで、強いチームが大好き」
C「野球は嫌い。サッカーが好き。弱いチームが頑張って勝つ姿が好きなので、弱いチームを応援する」

AとBでは一緒に球場にいっても、違うチームを応援していそうです。
しかしAとCであれば、一度球場につれていけば、Aの応援するチームに共感できて野球好きになるかもしれません。
「弱いチームが好き」というのは、価値観のようにも見えますが、本質的には気質的な差から来ているように思います。このことは次回詳しく取り上げます。

【特殊能力としての気質】
物語の中では「テレパシー」や「テレポート」といった特殊能力をもつキャラクターがいます。アイテムによって使う場合は別ですが、体質的な能力として持っている場合は、感受性に大きく影響すると考えられます。
たとえば相手の考えていることや感情をよみとる能力をもっているキャラクターで、外向的な気質をもっていれば他人と積極的に関わっていこうとするででしょうが、内向的であれば能力を使うことを拒否として人を避けるかもしれません。

これは能力をコントロールできているかどうかで変わります。
自由自在であれば、それは言語決定要素の「知能」や能力に属するといえます。
しかし、制御が不能か未熟で、受け身的であれば「気質」(体質)に属すると言えます。

特殊能力までいかずとも、直観や第六感に優れたキャラクターというのがときどきいますが、そういった霊的なものに対する閾値が低いため、一般的な思考とはちがった「価値観」や論理をもつことになります。

次回は……キャラクター概論20「言動決定要素③気質:気質と価値観の間にあるもの」
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緋片イルカ 2019/07/27

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