ライターズルームでの質問について考えていきます。
今回は「PP2の見つけ方(未熟なためですが何故か他のポイントより見つけにくく感じる)」について答えていきます。
ビートの定義に惑わされないこと
すべてのビートに言えることですが、各ビートには定義があります。
「プロットポイント2」とは何かということは以下の記事に委ねます。
プロットを考える17「 オールイズロスト or プロットポイント2」
古い記事なので、説明の言い回しなどひっかるところもありますが、基本的な考え方は変わっていません。
注意しなければいけないのは「ビートの定義」は人によって微妙にズレがあるということです。
「人によって」というのは、ハリウッド関係の書籍でも書いている人によって違うし、このサイトで紹介している「ライターズルーム」では定義も、ビートの種類すら違います。
ネットを検索すれば、素人からプロまで、いろんな人がいろんなことを言っています。
頭で(理屈で)理解しようとすればするほど、わからなくなっていく危険性があります。
ビートは学校のテストのように答えがあるわけではありません。
そもそも、作り手がビートに基づいて作っていないような作品が山ほどあります。
作り手が意識していなくても、ビートといえる要素が無意識に含まれていることが、物語論(神話論)の面白いところでもあります。
作り手が「プロットポイント」だと明らかに意識しているようだけど、「プロットポイント」になっていない(機能していない)ような作品もあります。
何のために分析をやるのか?
これを忘れないようにしないといけません。「ライターズルーム」ではあくまで創作に活かすためにやるのです。
研究のように、客観的なデータをとるためにやってるわけではありません。
自分の中で納得がいく分析ができて、それが創作に応用できるなら、それでOK。
正しい正しくないというのはありません。
ですが、ズレた分析に基づいて応用すると、創作でもズレた効果が生まれます。
ビートを掴むということは、物語の力学を掴むようなものです。
極論をいえば、その感覚さえ掴めていれば分析などしなくても創作できます(けれど分析している人にしか分からない領域もあります)。
自分の中で納得することが一番大事。
次に、その分析内容を他人に話して、納得してもらえるかが二番目に大事だと思います(独りよがりにならないように)。
逆に、納得ができない他人の分析に従う必要もないでしょう。
意見が違うからといってケンカする必要もありません。あくまで自分の創作に活かすためです。
分析を習い出すと、頭でっかちになる人が多いので、まずはこの点を強調させていただきました。
以上の心構えを踏まえて、以下、具体的な方法に入ります。
具体的な見つけ方
定義に拘るなというのは前提でありながら、「ライターズルーム」は共通認識によるチーム力を目指しています。
納得いかないまま従わなくて構いませんが、「PP2」のような大きなビートでは共通理解できることが望ましいといえます。
ここで紹介する「プロットポイント2」を見つけるコツは、あくまで「ライターズルーム」におけるビートの定義に基づきます。
ヒント1:全体時間の3/4あたりを探す
2000年以降のハリウッド映画であれば、たいてい「PP2」は露骨に演出されていますので、「全体時間の3/4」あたりにある前提で探していきます。
映画によるので一概には言えませんが、ざっくり言ってしまえば主人公が「落ち込む」「否定される」「任務などから外される」「誰かとケンカ別れする」など。
悲しい音楽とか、雨が降っている、照明が暗めなシーンも多いです。交通事故が起こることもあります。
ビートには「点」と「線」のものがあります(点はシーン、線はシークエンス)。
PP2は「点」です。ひとつの「イベント」としてとりましょう。
PP2のあとには「ダーク・ナイト・オブ・ザ・ソウル」という「線」のビートが入ります。
この辺だと思うけど、どこにすればいいんだろう?と迷うようなら「ダーク・ナイト・オブ・ザ・ソウル」を見ているかもしれませんが、その前に遡っていけば、落ち込む原因になったイベントがあるはずです。
「ダーク・ナイト・オブ・ザ・ソウル」の後には「ビッグバトル」が始まり、アクト3に入ります。
セーブザキャットなどではこの地点を「ターニングポイント2」と読んでいて、世の中には「ターニングポイント」と「プロットポイント」を混同している人もいます。
「ライターズルーム」での分析では、チームの定義に沿うようにしてください。
「ビッグバトル」はわかりやすいので、そこから遡っていって、「ダーク・ナイト・オブ・ザ・ソウル」→「PP2」と見つけていく方法もあるかもしれません。
いずれにせよ、このあたりにあるビートは「PP2」「ダーク・ナイト・オブ・ザ・ソウル」「ビッグバトル(開始)」のどれかです。
ヒント2:PP1との関連で考える
アクト2は「非日常の世界」です。
「PP1」はその出発地点、「PP2」はその終了地点と捉えられます。
「PP1」でミッションのようなものが始まっていれば、それが「強制終了される」ようなPP2があります(実際は「主人公が任務から外される」と同じ)。
「PP1」でどんなことが始まっているかを確認することで、「PP2」で何が起こるか予想ができます(この感覚は創作でも大事です)。
ただし、プロットタイプによっては「終了地点」になっていないPP2が、たくさんあります。
たくさん分析していると掴めて慣れてきます。
このプロットタイプの「PP2」は「こういうシーン」というパターンを知っていると、同様のパターンがきます。
ヒント3:ビートが機能していないと割り切る
作品によってはキャラクターアークが描かれていないので「PP2」がないと思えるようなものもあります。
「この作品には、このビートがない」と判断することも分析のひとつです。
とくに「ライターズルーム」にしかない「ビート」は欠けている作品がよくあります。
なんか違うかも~と思っても、定義にこだわらず、雰囲気だけで仮のビートとする判断は効果的です。
それっぽいシーンだから、いったんここを「PP2」としておこうというかんじです。
「なんか違うな~」と思うのは、分析する側が悪いのではなく、作り手の腕が悪くて「ビートがない」こともよくあります。
ただし「PP2」は三幕にするための全体構成に関わるビートなので「仮でいいから決める」意味があります。
仮に決めてみて「ちゃんとビートを入れたらどうなるかな?」と考えていくと、その作品の改善案が見えてきます。分析をヒントに、もっと面白い展開に気づけるのです。
こういう分析ができるようになると、自分の創作に役立つようになってきます。
きちんとした答えのようなビートがあるなど考えず、定義とズレていようが、仮でとってしまえばいいのです。
「ライターズルーム」や「物語分析会」では分析を共有する機会があるので、そこで他の人の分析をきいて納得すれば勉強になるし、他の人の意見が納得できなければ、無理に従わず、自分の分析ははこうだと思っておけばよいと思います。
たくさん分析をつづけていくと、必ず似たような作品に出会います。
後になって、他の作品との比較で「やっぱり、あの作品のPP2はこっちか!」と気づくこともしょちゅうあります。
それで良いのです。
あくまで自分の創作力を養うための分析なのですから。
緋片イルカ 2023.8.8