文章テクニック16「直喩と隠喩の本当のちがい」

以前、比喩表現については一度、書きましたが、今回は改めて直喩と隠喩の違いに注目してみようと思います。

【「~ような」があるのが直喩で、ないのが隠喩?】
学校教育の文法では、「~ような」があるのが直喩、ないのが隠喩と習います。
そうすると、

「りんごのようなほっぺ」が直喩?
「りんごほっぺ」が隠喩?

学校では丸かもしれませんが、文章表現ということを考える上では、この理解では安易です。
この二つの文章は「ような」があるかないかで、語数のリズムに違いがあるだけで文章の意味は同じです。
「りんごのような赤い頰っぺ」が想像できるのであれば、どちらも直喩です。

そもそも比喩とはどういう表現技法なのでしょう?

【比喩はAとBの類推】
比喩というのは、AとBという二つの似ている部分を挙げて、関連付けることによって、イメージを働かせる表現です。
例文では、頰の赤(A)とりんごの赤(B)を関連付けています。

関連させているものが明らかな場合が「直喩」、明らかでない場合が「隠喩」です。
次のような例文はどうでしょう?

「ぶどうのようなほっぺ」
「りんごのような声」

どちらにも「~ような」がありますが、意味がわかりますか?

わかるという方は想像力が豊かな方かもしれません。ぶどうのような弾力を想像したかもしれませんし、りんごから青森や農家を連想して方言のイントネーションのある声を想像したかもしれません。
別の方は、また別の連想をしたでしょう。

つまり関連付けているものが不明なのです。これが本当の隠喩です。

【2つの直喩の上達手段】
一般の小説で使われている上手な比喩は、ほとんどは直喩か換喩なのです(※換喩については次々回で解説予定)。

比喩が巧みな作家は、物事の関連性を見つける「似たもの探し」のセンスが得意なのです。
あるいは、過去作品をたくさん読んだために、知らず知らずに喩えの引き出しをたくさんもっているのです。
もちろん、あまりに頻繁に使われる比喩は「滝のような汗」とか「足が棒になる」といった慣用表現になっているので、小説に使うのは吟味する必要があります。

比喩が上手くなる手段はこの2つです。

1つはたくさん読むこと。
もう1つは、喩えたいときに「赤いもの……なにがあったかな……」と連想ゲームをしていくセンスを養うこと。

今回は、直喩に注目しましたが、隠喩がわかりにくいダメな表現かというと、けっしてそんなことはありません。
上で書いたことと矛盾するようですが、本当に巧みな比喩表現は隠喩に近いものがあります。それについては次回、考えていきます。

次回……文章テクニック17「隠喩の効果」

緋片イルカ 2019/08/26

●書籍紹介
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レトリック辞典

この本はおそらく大学の講義に使っているものだと思うのですが、わかりやすくて入門書には最適です。
身近なレトリックの世界を探る―ことばからこころへ (慶應義塾大学教養研究センター選書)

ゆくゆくは佐藤春夫先生の本もおさえておきたいところです。
レトリック感覚 (講談社学術文庫)

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