映画『ローマの休日』(三幕構成分析#90)

※あらすじはリンク先でご覧下さい。
https://amzn.to/3FPnmUO

【ログライン】

街へ飛び出し鎮静剤の酩酊状態で警察に送られそうになって、過酷な外遊のストレスでヒステリーの真面目なアン王女(オードリー・ヘプバーン)は、新聞記者ジョー・ブラッドレー(グレゴリー・ペック)に助けられ、王女のスクープを狙うジョーと恋に落ち、王女の記者会見は中止されローマでの休日が始まり、アンは素性を偽って買い物や、髪を切って自由な幸せを味わうと、調査団に追い詰められジョーと駆け落ちしそうになるが、王女に戻り、仕事も金も無いジョーが王女のゴシップをスクープするのをやめさせて愛の真実を証し、王女の任務を自覚することになる。

【ビートシート】

Image1「オープニングイメージ」:「ローマ市各名所」オープニングクレジットがサンピエトロ広場、コロッセオなどローマ市の各名所のモンタージュで映され、この作品の舞台が示される。次にニュース速報で某国のアン王女が親善旅行で各国訪問していることが伝えられ、その最後の地がローマとなる。アンは多忙なスケジュールでも疲れを見せていないように見えるが。

CC「主人公のセットアップ」:「アン王女のヒステリー」アンは舞踏会で足の疲れからハイヒールを脱いで倒してしまう。大使がアンをダンスに誘い、うまく切り抜ける。王女は過密なスケジュールに疲弊し、周囲がなんとかフォローしているが、いつまで持つのか。王女には休息が必要だ。これがこの作品のテーマだ。寝室では王女が時代遅れのパジャマに不満を言う。身の回りのなにもかもが嫌になってしまっている。スリッパを放って下界の街の様子を羨ましそうに眺める。自由のないスケジュールを聞いて、ついにアンが「やめて」と泣き叫ぶ。医者が呼ばれて、安定剤が注射される。誰もいなくなった寝室でアンは宮殿を抜け出し、眠気を払って町へ飛び出す。一方ジョーは賭けポーカーで負けてしまう。

Catalyst「カタリスト」:「ジョーが路傍で寝るアンを発見」帰途、ジョーは道の傍らに寝込んでしまっているアンを発見する。酔っ払いの女性かと見かねてアンを起してやるが、寝ぼけていて埒が明かない。「若者たちの心に優しさと品格を取り戻す」ことが使命らしいが、今のところ真相はわからない。ジョーはタクシーを呼んでやる。

Debate「ディベート」:「アンは警察行きか」家を訊ねてもコロセウムとしか言わないアン。彼女は頑として戻りたくないようだ。ジョーはタクシーにアンを頼もうとするが、警察に行くと言われて、渋々自分のアパートに連れて行くことにする。

Death「デス」:「アン王女突然の発病報道」大使館では王女の失踪が発覚する。ジョーがベッドに寝るアンを長椅子に落とすと、アン王女の突然の発病報道が流れる。

PP1「プロットポイント1(PP1)」:「王女の記者会見を寝過ごしたジョー」31分たったところで、アン王女がローマの休日を迎える第2幕に入る。12時の鐘が鳴り、ジョーが目覚めると11時45分の王女の記者会見を寝過ごしてしまったことに気づき、急いでアメリカン・ニュース社ローマ支局へ向かう。アンは安定剤のせいか、まだぐっすりと長椅子で眠っている。王女の記者会見は勿論、王女の発熱のため中止になったのだが、ジョーは知らない。遅刻の言い訳に記者会見に言っていたと嘘をつくが、支局長にわざと会見の様子を質問されるコメディーになる、そこで自分のアパートで寝ている女性がアン王女であることを知る。そして、もし写真付きの王女のインタビューに成功すれば彼の一発逆転のチャンスになるとわかる。この身分違いのうだつが上がらない「片割れ」の一発逆転のチャンスという「複雑な事情」がこの作品のBストーリーだ。

Battle「バトル」:「アンとジョーの対話」アンとジョーがお互いの素性を偽り合って、王女の休日が過ごされる過程がこの作品の「バトル」であり「お楽しみ」だ。寝ぼけたアンによってジョーとのロマンスが始まっていることを告げる。アンはジョーのパジャマを着ていることを恥じらうが、彼はスクープをものにしようと必死だ。そして、アンのシャワーシーンが披露される。

「ジャンルのセットアップ」「恋愛コメディー」)

Pinch1「ピンチ1」:「アン、清掃員に叱られる」ジョーがカメラマンのアーヴィング(エディ・アルバート)を呼びに電話をかけるため外に出ていると、アパートの清掃員がバスルームに入っているアンを見つけ、はしたないと叱る。ジョーが戻ると、アンはベランダで街の人通りを見ていて、ジョーに別れを告げる。

MP「ミッドポイント」:「アン、美容院で髪を短くする」60分たったところ、美容院で髪をバッサリと切った、ヘプバーンカットのアンが登場する。「まやかしの勝利」を得てアンはスペイン広場へ向かい、ジェラートを買ったり、花を貰ったり、彼女はローマの休日の自由を謳歌している。

Fall start「フォール」:「ジョーとの再会」アンの後を追ってきたジョーが偶然を装ってアンに会いに行く。AとBストーリーが交差し、彼はスクープを狙っていて、アンを冒険へと誘う、アーヴィングも来て危険度がアップする。

Pinch2「ピンチ2」:「祈りの壁」空襲を逃れた男が家族の無事を願った「祈りの壁」でアンは平和のため、王女の任務がある限り、自由になる願いは叶わないのだと悟る。そして、アーヴィングとは写真の現像のためだと言って別れ、ピンチ1の対。12時のカボチャの馬車が来るまでと、ジョーとサンタンジェロのパーティーに向かう。

PP2(AisL)「プロットポイント2」:「アンとジョー、調査団に追われテヴェレ川に飛び込む」サンタンジェロのパーティーでアンは調査団に見つかり、大使館に連れ戻そうとされる。ところが、アンはジョーに助けを呼び、ジョーとアーヴィングは調査団と乱闘を繰り広げる。そして、アンとジョーはテヴェレ川に飛び込んでしまう。第2幕のローマの休日が終わる。2人は恋のために全てをなげうってしまうのか。

DN「ダーク・ナイト・オブ・ザ・ソウル」:「アンとジョーの対話」アンとジョーはアパートに戻る。そこでジョーは台所付の家に引っ越そうとプロポーズする。しかし、アンは王女の任務を思い起こし、ジョーに車で送ってくれるよう頼む。

BBビッグバトル:「王女の記者会見」アンとジョーが愛の真実であることを証して、この休日の真相を伏せたままにできるかが最後のバトルだ。アンはこのローマの休日が王女の任務の自覚に必要であったことを大使らに告げて、眠る前のミルクを拒否する。ジョーは支局長やアーヴィングに一攫千金のスクープを書くことを拒否する。記者会見が始まるとアンは記者の中にジョーの存在を知り、記者の質問を通して、2人の愛の真実かどうかが問答される。会見の最後にはアンが直接記者に挨拶をして、アーヴィングから休日中の写真が手渡しされる。ジンテーゼだ。アンとジョーは王女と新聞記者として成長し、日常に戻った。

image2「ファイナルイメージ」:「会見の間を後にするジョー」アンが会見を終えて退室すると、アーヴィングら記者たちが退室していき、ジョーは名残惜しそうに一人遅れ退室していく。ジョーは出口に差し掛かり、一度振り返ってフレームアウトする。最愛の女性と人生を共にすることは叶わなかったが、永遠の都で愛の真実を証明することができた足取りは誇りに溢れている。

【感想】

ヘプバーンの出世作で代表作。ヘプバーンカットなど各ショットが名画だ。
スクープを狙うのと恋愛の葛藤になる「複雑な事情」のプロットがよく出来ていて、力強い。
写真を売らずに友人のデートに金を払ったアーヴィングはえらい。

(川尻佳司、2022/11/6)

SNSシェア

フォローする