映画『スパイダーマン2』(三幕構成分析#129)

※この分析は「ライターズルーム」メンバーによるものです。

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【ログライン】

スパイダーマンであるピーター・パーカー(トビー・マグワイア)がドクターオクトパス(アルフレッド・モリーナ)と戦って、町を救う。

【ビートシート】

Image1「オープニングイメージ」:「MJの広告看板に見惚れてバイトに遅刻」メリー・ジェーン・ワトソン(キルスティン・ダンスト)の広告看板に見惚れるピーター。彼はバイトに遅刻していて、上司にぶつかりそうになる。来る途中に騒ぎがあったからだと、スパイダーマンのスーツを隠す。人間としての人生とヒーローとしての使命、二つのジレンマが彼を苦しめている。彼は2つの役割を両立できるのか、セントラルクエスチョンが示される。 ピーターの正体を隠さなければいけないこと、性的犠牲はヒーローとしての「呪い」だ。
ピザの配達が遅れ、上司から「お前には約束なんかどうでも良くても、俺には大事なことだ」と言われる。自分のことより他人を優先する、自己犠牲がこの作品のテーマだ。

「ジャンルのセットアップ」「スーパーヒーロー」)

CC「主人公のセットアップ」:「ヒーロー活動で私生活がうまくいかないピーター」ピーターは勤務先の新聞社の重役J・ジョナ・ジェイムソン(J・K・シモンズ)からスパイダーマンの写真を要求される。渋々売っても前借り分で報酬は消えてしまう。大学では講義に遅れ、落第になりそうだ。誕生日パーティーで、メイおばさん(ローズマリー・ハリス)の抵当権喪失で立ち退きがわかるが、お金は無く、何もできない。MJはピーターに恋しているが、彼は正体を明かすことはできず、恋人がいることを明かされる。そして、 家賃の支払いが滞っている家に帰る。

Catalyst「カタリスト」:「オクタビアスとの出会い」19分たったところで、ピーターは親友ハリー・オズボーン(ジェームズ・フランコ)の紹介で尊敬する科学者オットー・オクタビアスと出会う。「知性は人類のために」ピーターと対照的に オクタビアスは科学者としての「使命」を果たしながら、愛妻家として私生活も充実している。ピーターは女性に愛されるために詩を教えらえる。

Debate「ディベート」:「観劇に間に合うか」 ピーターはヒーロー活動と私生活を両立できるのか? 色移りするスパイダーマンスーツが普通のスーツと並ぶ。MJと約束した舞台に観劇に行くピーター。しかし、パトカーの犯人追走に巻き込まれて、犯人を逮捕していると、劇場に遅刻してしまって、案内係に入場拒否されてしまう。舞台が終わるのを待っていると、MJが恋人のジョン・ジェイムソン(ダニエル・ギリーズ)とキスするのを目撃してしまう。居ても立っても居られず、スパイダーマンに変身して街を飛び回る。

Death「デス」:「能力不全、失恋」29分たったところで、スパイダーマンは能力不全になり、落下。蜘蛛の巣も放てなくなる。翌日、MJに電話で謝るが、愚痴を言ってしまい、電話を切られる。彼女を危険に巻き込めないヒーローは本当の事を言うことが出来ず病気になってしまった。このままでは「静止=死」だ。

PP1「プロットポイント1(PP1)」:「ドクター・オクトパス誕生」34分たったところで、ピーターはオクタビアスの核融合の公開実験に参加する。オクタビアスは人工知能を搭載したアームと呼ばれる四本脚メカを自身の脊柱に取り付けて、トリチウムによる実験装置を操作する。ところが、実験は失敗して、スパイダーマンが装置を止めようとするが、オクタビアスは実験にとらわれ、事故の衝撃で妻が死んでしまう。オクタビアスは病院で気がつくと、制御チップを失ったアームに支配されて、医師達を襲う。「宿敵」が誕生して、第2幕の「逆転した世界」に入る。
ピーターとオクタビアスを通して、テーマについてのサブプロットが描かれる。妻を亡くして、愛(自己犠牲)を失ったオクタビアスは自身の「使命」のために作ったアームによって支配され、新たな「使命」として狂気の実験を実現しようとする。オクタビアスはダークサイドに落ちたもう一人のピーターだ。

Battle「バトル」:「銀行強盗との戦い」実験のための資金を銀行強盗によって調達しようという新たな「使命」を持った「ドクター・オクトパス」オクタビアス。偶然居合わせたスパイダーマンとの戦いになる。戦いに巻き込まれたメイおばさんを救助して、スパイダーマンは自身の誤解を解く。スパイダーマンと「宿敵」のバトルアクションがこの作品の「お楽しみ」でもある。

Pinch1「ピンチ1」:「銀行強盗との戦い」ドクオクの銀行強盗を止めようとするスパイダーマン。蜘蛛の巣が思うように放てないが、なんとかメイおばさんを救助する。MPに向かう。

MP「ミッドポイント」:「能力不全、銀行強盗の罪を被せられる」ピーターはジェイムソンの息子ジョンの宇宙飛行士パーティーの仕事のため写真撮影するが、そこでMJとジョンの婚約を知る。58分たったところで、愛を失ったピーターはスパイダーマンとして能力不全となり、新聞では銀行強盗の罪を被せられ、「まやかしの敗北」となる。ピーターは能力不全を直すため、診察を受けるが、自分が何者かを見失い、医者の勧めで彼はスパイダーマンを辞める。メインとサブプロットが交差して、ドクオクとの戦いは休止、ピーターは私生活を謳歌し、普段の服装で暮らす。

Fall start「フォール」:「街の犯罪は起こる」ピーターはスパイダーマンスーツを捨て、眼鏡をかけて、私生活を謳歌する。大学も順調で、約束のMJの舞台も見に行く。
しかし、「悪い奴ら」街の犯罪は起こる。ピーターを見ないふりをするが、このまま振り切れるだろうか。

Pinch2「ピンチ2」:「ベンおじさんの死についての告白」70分たったところで、ピーターはメイおばさんとベンおじさんの墓参りをする。そして、彼はベンおじさんの死は自分が強盗を見逃してしまったせいだと打ち明ける。使命感がピーターを揺さぶる。「ピンチ1」の対。PP2に向かう。

PP2(AisL)「プロットポイント2」:「火事で少女を救助」78分たったところで、ピーターはあるアパートの火事で少女を救助する。MPの「まやかしの敗北」の逆で「まやかしの勝利」だ。しかし、消火の後、一人助けられずに亡くなった人がいたことを知る。「死の香り」を感じて、ピーターは「使命」の困難さに葛藤する。

DN「ダーク・ナイト・オブ・ザ・ソウル」:「メイおばさんの言葉」「意志の力では跳べない」ベンおじさんを救えなかった自責の念にとらわれたピーターにメイおばさんが「誰の心の中にもヒーローがいて、そのために自分の夢を諦めることもある」と、誇りを失わずに生きるために犠牲を払う必要性を伝え、ピーターは「使命」の約束を思い出す。ピーターは「自分の望むことに集中する」と言って、スパイダーマンとして跳ぼうとするが落下してしまう。意志の力では能力を取り戻すことはできない。

BBビッグバトル:「ドクター・オクトパスとの戦い」MJがもう一度愛を確かめるためにピーターと会うが、彼は「使命」のためにMJのそばにはいれないと断る。2人の愛が確認されると、メインとサブプロットが交差して、そこに突然ドクオクが車を突っ込ませて、ピーターは能力が元に戻ったことを知る。
ドクオクとの戦いは電車の上になり、スパイダーマンは暴走する電車を自分の身を磔、犠牲にして止める。マスクの取れたピーターは乗客に担がれ、子どもの素顔に驚かれる。そして、子どもたちから誰にも言わないと言って、マスクを渡される。乗客たちは彼を守るが、結局捕われてしまう。
ピーターはドクオクを説得し、彼は誇り高く人間を取り戻して実験装置と川に沈む。町は救われ、MJはジョンと抱き合って、スパイダーマンは去る。

image2「ファイナルイメージ」:「MJが戻ってくる」MJは結婚式を飛び出してしまい、ピーターに一緒に危険に立ち向かいたいと言ってキスして、出動するスパイダーマンを見送る。ピーターは自分の夢を諦め、犠牲を払うことで、「使命」とMJとの愛を両立させた。オープニングイメージと対。

【感想】

「好き」4点 「作品」4点 脚本「4点」
「スーパーヒーロー」(コミック・ブック・スーパーヒーロー)の代表例。
説明的、段取りの部分も感じるが、キャラクターの内面ストーリーはしっかりと伝わる。
構成に分析すると複雑に感じられるが、何も考えず見ていても理解できる。主人公がヒーローと私生活のジレンマで苦しみ、最後はヒーローとしての使命をとり、自らを犠牲にすることですべて手に入れるという典型的なストーリーだ。
この典型的な内面ストーリーをしっかりと伝えるために「宿敵」、サブキャラクターや「マスコット」が配置、構成されている。お決まりのヒーローアクションが内面のストーリーをいかにしっかりと抑えることが大切か、勉強になる。

(川尻佳司、2023/03/19)

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