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※あらすじはリンク先でご覧下さい。
※分析の都合上、結末までの内容を含みますのでご注意ください。
【ログライン】
独りよがりで他車の意見に耳を貸さないマックィーンはレース会場に向かう道中、トレーラーとはぐれてしまう。ラジエーター・スプリングスという小さな田舎町に流れ着き、メーターやドックらと出会う。彼らとの交流を通して仲間や友情の尊さを知ったマックィーンは、最終レースで優勝目前、故障した仲間を救ったことで優勝を逃す。
【フック/テーマ】
レーシングカーの葛藤/友情・愛・仲間
【ビートシート】
Image1「オープニングイメージ」:「ピストンカップ」
ピストンカップのレースシーンから始まる。音楽と共に、レーシングカーの物語であることが示される。
GenreSet「ジャンルのセットアップ」:「三つ巴の最終戦」
優勝争いをするキング・チック・マックィーン。
Premise/CQ「プレミス」/「セントラル・クエスチョン」:「レースに勝利することができるのか?」
want「主人公のセットアップ」:「タイヤ交換せずに走り続ける」
優勝して、大手のダイナコと契約したいマックィーンは、タイムロスを避けるため、給油だけにとどめ走り続ける。ピットクルーの意見に耳を貸さない独りよがりな性格。
Catalyst「カタリスト」:「三者同着。同点決勝戦が決まる」
Debate「ディベート」:「友達がいないことを自覚する」
最終戦会場に向かう道中、エージェントとの電話で、マックィーンは自分には友達と呼べるものが存在しないことを自覚する。
Death「デス」:「トレーラーから離脱」
マックィーンをのせたトレーラーのマックは眠気に襲われんながら走行中。輩に絡まれたことで、後部が開いてしまう。眠っているマックィーンは気づかずそのまま路上に投げ出される。
PP1「プロットポイント1(PP1)」:「ラジエーター・スプリングスに流れ着く」
シェリフに追われたマックィーンはラジエーター・スプリングスに流れ着く。街をめちゃくちゃに荒らして、捕まる。
F&G「ファン&ゲーム」:「裁判にかけられる」
壊した道路を補修するまでラジエーター・スプリングスを出られなくなる。
Battle「バトル」:「隙をついて逃げ出すが失敗」「ラジオから、チックが会場に到着したという知らせ」「ドックとのレースで負ける」
Pinch1/Sub1「ピンチ1」/「サブ1」:「メーターとトラクターを驚かせる遊び/なし」
MP「ミッドポイント」:「ドックが伝説のレーシングカーだとわかる」
偶然ガレージに入ったマックィーンはそこでピストンカップの優勝トロフィーを見つける。そしてドックがかつて「レースの帝王」と呼ばれた伝説のレーシングカーだったことが発覚する。
Reward「リワード」:「サリーとデート」
山道をふたりきりで滑走。小高い山の休憩所に辿り着く。
Fall start「フォール」:「ラジエーター・スプリングスの栄枯盛衰」
かつて栄えていた町は、今は地図には乗らないほど廃れてしまった。マックィーンは全盛期に想いを馳せる。
Pinch2/Sub2「ピンチ2」/「サブ2」:「トラクター襲来/なし」
PP2(AisL)「プロットポイント2」:「ラジエーター・スプリングスを出ていく」
メーターやサリーらに見送られながら、最終戦に向けてマックィーンはラジエーター・スプリングス後にする。
DN「ダーク・ナイト・オブ・ザ・ソウル」:「最終戦会場に着く」
大丈夫だと自分に言い聞かせるが、ラジエーター・スプリングスの仲間たちのことを思い出す。
BB(TP2)「ビッグバトル(スタート)」:「最終戦が始まる」
ピットにドックらラジエーター・スプリングスの仲間たちがやって来る。
Twist「ツイスト」:「キングを救う」
ゴール直前、マックィーンはキングの故障を知りストップする。そのまま引き返してキングを押してゴールを目指す。
Big Finish「ビッグフィニッシュ」:「レース終了」
優勝はチックだったが、優勝を諦めてまでキングを救ったマックィーンに大歓声が上がり、レースは幕を閉じる。
Epilog「エピローグ」:「ダイナコ行きを断る」
大手のダイナコからうちに来ないかと打診されるが、世話になったラスティーズのことを思い、その申し出を断る。
Image2「ファイナルイメージ」:「ルート66が地図に載る」
ラジエーター・スプリングスに活気が戻る。
【作品コンセプトや魅力】
独りよがりな自分から、仲間と出会ったことで誰かを思いやる気持ちが芽生えるという普遍的でわかりやすいテーマを、レーシングカーの世界に落とし込んだところが最大の魅力。また、都会と田舎の格差。田舎の町おこしの厳しい現実なども描写されており、共感を得やすい題材になっている。
【問題点と改善案】(ツイストアイデア)
ミッドポイントが58%とやや遅く、それにともないそのためPP2も大幅に遅れている。そのため後半の展開が駆け足になっている感は否めない。とりわけドックがチーフクルーとしてレース会場に現れるまでの感情の流れが唐突。
ACT2前半にラジエーター・スプリングスの面々をいろいろと描いていることにより、ミッドポイントが遅れたか。本作においてメーターはそこまで重要な立ち位置ではなく、トラクターを驚かせるシーンなど、省ける要素はあったかに思われる。
マックィーンを変化させる要素として、メーターとの友情やサリーとの愛情はもちろん重要ではある。しかしレーシングカーとしてどうあるべきか、どうなりたいかを考えさせるきっかけをもたらすのはドックであり、ドックとの対比をより強調できれば、ラストのキングを救うシーンに対する感動もさらに上乗せされたように感じる。
【感想】
おもちゃ、モンスター、サカナの世界を描いてきたディズニーが次なる世界として描いたのはクルマ――。主人公のキャラクターもわかりやすく、その変化もわかりやすい。万人受けできる作品であった。ラジエーター・スプリングスの面々もキャラは多いが、メーターやサリーをはじめ、核があり、キャラ渋滞を起こしているといった印象はなかった。
とはいえわかりやすい主人公の性格にはクリシェな感は否めない。事実、過去のピクサー作品と主人公の性格は似通っている。
それでもラストのツイストには大きな意義があると感じた。仲間を得たマックィーンは最終戦で仲間とともに優勝する。成長した主人公が辿る当然の帰結であるように思える。しかしそれをさらに一段上げて、こだわっていた優勝を捨ててまで仲間を救う行動には感動を誘う。
幼少期にも見たことがあるが、分析するにあたり今回改めて視聴。そのシーンは覚えていた。子供心に刺さったシーンの本質を垣間見たようで、個人的にも有意義な分析となった。
「好き」5「作品」4「脚本」4
(山極瞭一朗、2025/10/04)