「SAVE THE CATの法則」は、映画やテレビドラマなどの映像業界において、
シド・フィールドの脚本術やロバート・マッキーの『ストーリー』とともに、
“物語創作メソッドの権威”として知られています。
本書は、その「SAVE THE CATの法則」を用いて小説の書き方に応用した内容になります。
(アマゾン商品解説より)
【作者は本家とはちがう】
本家の「SAVE THE CATの法則」(以下CAT)を書いているブレイク・スナイダーとはちがう人が書いています。まずはその点には注意してください。ブレイク・スナイダーは亡くなっています。
この本を書いているジェシカ・ブロディはCATの理論を使って小説の講義をしていた方だそう。本家の許可を得てタイトルにも使っているのだし、安易な便乗本ではありません。
【内容はCAT三冊を網羅している】
CATには3冊のシリーズがあります。
1冊目のSAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術では主にビートシートという考え方について細かく書かれています。今となってはやや古いし、ビートとして不足がある感は否めませんが入門書としてはとてもわかりやすいです。
2冊目の10のストーリー・タイプから学ぶ脚本術 ──SAVE THE CATの法則を使いたおす!では、ビートシートに基づき、ストーリーを10のタイプについて分類しています。(こちらにリストがあります)。各タイプの見本となる映画作品や該当作品がリストになっていて辞典のようにも使えます。
3冊目のSAVE THE CATの逆襲 書くことをあきらめないための脚本術ではビートシートの補足的な役割でログラインのテンプレートや5段階フィナーレといった新しい要素が加えられています。
今回、紹介している『SAVE THE CATの法則で売れる小説を書く』(以下CAT小説版)ではビートシートの基本的な説明はもちろん、3冊目の追加要素もふくめて、きちんと解説されていました。小説を例にしたストーリー分類のリストもあり、まさにCATの1~3を網羅した内容になっています。3冊揃えることを考えれば1冊で2500円というのも高くないし、読み応え十分の500頁近くあります。
【構成が苦手な人にオススメ】
小説だけを書く(脚本は書かない)人がハリウッド三幕構成を学ぶには、このCAT小説版1冊で十分だと思います。
ビートシートはプロットやシノプシスを作るのにはとても効果的です。読むだけで構成が苦手な人には大きなヒントになると思います。
ただし実際に小説に応用するには、ある程度の分析慣れが必要になります。ビートシートは一回読んだだけですぐに使いこなせる代物ではありません。機能しているかどうかということを見抜けないと独りよがりになってしまうためです。
このCAT小説版には、いくつもの作品のビート分析例が書かれているので、実際に小説作品を読んで、その解説を読むのが効果的な勉強になります。
脚本を書く人には、そのリストが2冊目のCATになるので、合わせてそちらを買うのをオススメします。
【CATシリーズの復習用にも】
「CATシリーズは途中まで読んだ」とか「一回読んだけど読み込んではいない」という方にもオススメできます。
作者なりのビートに関する解釈を踏まえて説明されているので本家のCATで説明不足だった部分が、きちんと書かれているなと思ったところもありました。
そういう意味では「復習用」にもなると思います。
1つだけ残念なのは、CATシリーズと翻訳者が違うため、用語の訳し方が本によってバラバラなところです。例えばCATシリーズでは「カタリスト」とそのまま片仮名になっているところを、わざわざ「触媒」と翻訳していて、ビートは呼び名みたいなものなので、統一した方がわかりやすかったのにと残念です。フィルムアート社は貴重なハリウッド系の本を翻訳してくれるのはありがたいのですが、場当たり的で誤植も多いです。
本屋では映画コーナーに置かれてしまっていることもありますが、小説を書かれる方はぜひ目を通してみることをオススメします。
緋片イルカ2019/04/29
このサイトでもログライン/ビートの解説をしています。音声解説もあります。興味のある方はこちらから
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