「時間管理」と「スピード加速」

目標を数値化して実現するの記事で書ききれなかったことの補足記事です。

前記事で「物語では、主人公のキャラクターアーク、つまり成長・変化を描けなくてはいけません。自分の人生においては、自分が主人公です。努力して、目標を達成するイメージは、物語の能力と直結します。」と書きました。

これはドラマとしての能力について書いたつもりですが「時間管理」という観点は「構成」に直結するとも思います。

自分の生活からムダな時間を削るのは、ムダなシーンをなくすことに似ていますし、人生を楽しむことは「人を楽しませるシーン」につながります。

今回の内容は執筆プランの立て方という記事の焼き回しですが、

前の記事は2年以上前に書いたものですし「ライターズルーム」という動きの中で、改めて書いてみます。

使える時間の把握

一週間単位で考えてみます。

7日×24時間=168時間というのは、誰にも平等に与えられた時間です。

この中から、外せない時間を引いていき、残ったものがあなたの「使える時間」です。

個人差はともかく計算してみましょう。まず、仕事の時間。

(勤務8時間+行き帰りの移動2時間)×5日間として50時間

次に睡眠時間。

1日8時間×7日=56時間

ここから、食事や風呂、外出の準備など、細々した時間をざっくりと、

1日4時間×7日=28時間

すべて引くと34時間です。

少ないですか? 多いですか?

感じ方は人それぞれです。

実際は生活によって増えたり減ったりするでしょう。

ですが、新しいことを学習したり身につけたりするには、この「使える時間」の中でやるしかないというのが現実です。

まずは、自分の「使える時間」をしっかりと数字として出してみてください。

1本書くのにかかる時間

「ライターズルーム」では課題100本というのを提案していますので、1本あたり=原稿用紙10枚という基準を「1作品」という単位として考えてみます。

「1作品」を書き上げるのに、どれだけかかるのか?

これも、きちんと自覚するべき数字だと思います。

作品によってムラはあります。それでも「〇時間~〇時間」という幅では出せるはずです。

タイマーなど使わなくても、始める前と後に時計をみたり、ファイルの更新時間を見たっていいでしょう。

これを「わからない」で片付ける人は、面倒くさがっているか、重要さがわかっていないだけです。

この記事を読んで、大切だと思ったら、次書くときに計ればいいだけです。

ちなみに参考値を伝えておくなら、僕は現時点で「17.6分/1枚」というデータをもっていますので、10枚なら平均で176分。

調子がよければ1時間もあれば書き終わります。

自分が「1作品」を書ける時間を自覚していない人は、〆切も守れないでしょう。

「芸術はそんな単純計算で創れるものじゃない」

そんなことを言えるのは、何度も名作を創った過去があり「この人なら遅れてでも、必ず素晴らしいものを創る」という信頼のある作家だけです。

デビューもしていない新人が、ましてや「仕事」で言っていい考えではありません。

たとえば「1時間もの脚本の依頼」が来たとます。

依頼主からは「いつまでに出来ますか?」と聞かれます。

「頑張って、なるべく早めに!」では通じません。

1週間後なのか、10日後なのか、数日程度の誤差であれば遅れても許容されるでしょう(もちろんホウレンソウはしましょうね笑)。

ですが、10日経ってもあがらない、20日経ってもまだ……いったい何時あがるんだ?

そんな状態では、せっかくもらった仕事を失い、その依頼主からは二度と頼まれないでしょう。

別に厳しいことを言ってるわけではありません。一般社会の常識です。

学生じゃなくて、大人の社会人であれば、わかるはずです。

「脚本」という仕事の成果として、金銭をもらうのであれば、当然のことです。

「自分がどの程度の仕事ができるか」を取引先に提示することは、フリーランスなら普通でしょう(実力以上のハッタリ営業で引き受けて、あとで迷惑かけるフリーも多そうですが)。

自身の「執筆スピードを自覚する」ということの、大事さをおわかりいただけるでしょうか?

きちんと時間を使うこと

あなたの使える時間は34時間でした。

ここにはプライベートの時間、家族や友人と過ごしたり、ダラダラとネットやTVを見ている時間も含まれます。

体調を崩せば、休む時間も必要でしょう。

では、34時間のうち、執筆に使う時間をどれぐらいにするか?

1作品にかかる時間を5時間としてみます(初心者でも、さすがに5時間あれば終わるのでは?という計算ですが)。

1週間の34時間の自由時間のうち、5時間を執筆に使う。

それほど難しいことではないと思いますが、いかがでしょうか?

1週間で34時間は、1日5時間です。

1週間のうち、たった1日だけ、しっかりと書く時間に充てるとも言えそうです。

1週間に1本書ければ、年間52本。

100本なんて2年もあれば達成できます。

34時間のうち、10時間を充てることができたら1年で終わります。

こうやって計算してみれば、課題など、やるかどうかの問題なのです。

10時間も使いたくないという人は、他にやりたいことがあるのではないでしょうか?

ほんとに書きたいの?とも思われてしまいます。

自分の人生ですから、豊かになるように時間は使うべきです。

「物語を書くこと」が人生を豊かにすると思えないなら、無理に続けることもないでしょう(※合わないならやめろという言い方ではなく、合わないことを無理に続けるのは不幸だと思うのです)。

生活も、使える時間も人それぞれです。

中にはどう捻出しても、週に5時間しか使えないといった人もいるでしょう。

5時間あれば1本書けるじゃないかというのは、事実ではありますが、やや乱暴かもしれません。

本気で覚悟のある人はそれでもやるでしょうが、息が詰まってしまうかもしれません。

それなら、1ヶ月に1本でも構いません。

1年に12本、しっかり書けばいいのです。

時間のことは他人にはどうしようもできないので、それ以上、出来ないのであれば仕方がないのです。

100本には、8年ぐらいかかりますが、続ける覚悟があるなら、やるでしょう。

デビューまで8年かかると覚悟して、黙々と続けていけばいいのです。必ず実力はつきます。

年に12本しか書かないくせに、1年でデビューするなどと豪語する人間よりは、よっぽど信頼できます。

大切なことは、主観的な気分ではなく、きちんと時間を使って書いていくことです。

執筆スピードを加速する

課題1本あたり5時間として計算しました。

実際は、倍の10時間かかるという人がもいるかもしれません。

やる気はあって、何年かかってでも、続ける覚悟もあるとします。

そんな人にこそ、考えて欲しいのは「執筆スピードの加速」です。

どうして、そんなに時間がかかってしまうのか?

どうしたら、もっと速く書けるのか?

10時間かかっていたものが、5時間で書けるようになれば、それだけで2倍の量、書けます。

スポーツでいう筋トレのようなもので、書き続けてさえいれば、ある程度は慣れて、必ず速くはなります。

ですが、工夫したり、根本的な仕組みを変えることで、大幅に加速することもできるはずです。

たとえば、書き始める前に、頭の中で「こういうシーンから始めて、こういうオチにする」といった構成を考えているかどうかです。

書いているときに改めて迷うというのは普通ですが、それでもパソコンを開いてから考えるよりは、日常の中で考えておけば時間の節約になるでしょう。

考えるだけであれば、仕事の合間とか、移動時間、お風呂など、ちょっとした時間にもできるはずです。

SNSなんかをダラダラと見てしまっていても、そこに物語のヒントがあることだって多々あります。

たいていの作家は、スマホのメモなどに「大量のネタ帳」が入っています。

なにげない日常でも、作家としてのアンテナを張って生活しているのです。

こういうことをしていないなら「そりゃネタを探すだけにも時間がかかるでしょうね」と思います。

あるいは、書くための環境は整っているでしょうか?

物語を書く時間や場所、パソコンなどの環境が整っていないと、書こうと思ったときに余計な時間がかかっているかもしれません。

カフェとか図書館といった非日常の場所をうまく使ってスイッチを入れるといった工夫もできるでしょう。

自分の調子のいい時間をコントロールできるようになると、集中しやすくもなります。

気分の切替も大事です。

散歩だとか、糖分やカフェインを補給する、人と話すとか、そんなことでもコントロールできます。

ただし、時間管理の上でやりましょう。

気分転換ばかりで「やっているような気分」に陥ると、結局、書いてないということになります。

書く時間を確保した上で、気分転換するべきです。

また、雑でもいいから1時間で書き上げてしまうという姿勢もよいかもしれません。

あまりに速く書くと雑になると思う人もいるかもしれませんが、1時間で初稿が完成するなら、残りの4時間を推敲に使えると考えることもできます。

5時間かけて初稿を書くのと、どちらが出来上がったものの質が良いかは、やってみないとわかりません。

案外、サクっと書いたものの方が、周りのウケがいいということは、よくあります。

雑とはいえ10本、20本書けば、うんうんと唸って1本も書かない人よりも得るものはあるでしょう。

「雑でもいいから1時間で初稿を書き上げられる」という能力自体が、どこかで役に立つこともあるでしょう。

作品の質以前に「作家として生活」や「心構え」ができていないと、書きつづけていくことは難しいのかもしれません。

自由に使える時間も、執筆のスピードも人それぞれです。

工夫の仕方も、何がいいかも人それぞれです。

人それぞれということは、自分で見つけるしかないということでもあります。

他人のやり方はヒントになります。

迷っているなら、ただ従ってみるのも良いでしょう。

いろいろ試すうちに、自分に合う方法が見つかっていくはずです。

「努力」というのは肩に力をいれて、頑なになることではなく、工夫しながら、時間を確保し、やるべきことを続けていくことだと、僕は思います。

頑張り方を間違えないように。

緋片イルカ 2023.2.24

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