映画『マネー・ショート華麗なる大逆転』(三幕構成分析#86)

※この分析は「脚本講習」の参加者によるものです。

※あらすじはリンク先でご覧下さい。
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【ログライン】

住宅ローン市場崩壊を察知した4人が各自確信を得た上でCDSを購入し、巨額の富を獲得する。

【ビートシート】

Image1「オープニングイメージ」:「肩車する父子の後ろ姿」
マークが子供を肩車する。そこにマークの言葉テロップ。
→この物語を経て、この世の全てに怒っているマークが穏やかになったことを現わしている。

CC「主人公のセットアップ」:「怒るマーク」
セラピー中に途中入室、その上、場を乗っ取るように自分の話をするマーク。
「銀行は客を騙して金儲け」
→兄を亡くしセラピーに通うことを強要されている。仕事や社会、すべてに怒っていて、まわりが全く見えていない。銀行を毛嫌いしている。

「ジャンルのセットアップ」
住宅ローン・モーゲージ債・バンカーの生活に変化をもたらした仕組み

Catalyst「カタリスト」:「面接中でのひらめき」
1930年の住宅ローンが焦げ付いたこと・2001年にITバブルがはじけた後も住宅の価値があがっていることを奇妙だと調べ始めた。
→詐欺や相場の操作がある可能性=住宅バブルが弾けるのではという疑念が生まれた瞬間。

Debate「ディベート」:「MBSの中身を調査」「空売りの提案」
支払い延滞や金利調整のデータを漁る。
雇い主のローレンスに受託市場での空売りを提案。
→利益をあげるために雇われているマイケルがより利益を出せるものを見つけ、提案する。

Death「デス」:「株に絞れ」「空売りできる方法を探す」
説明をしても、ローレンスからは株に絞れと話を聞いてもらえない。
→理解を得られず、いつ住宅ローンの崩壊が始まるかわからない状況で焦っている。
雇われている以上、同意を得ずに進むことはできない。
現状空売りできる方法がない。

PP1「プロットポイント1(PP1)」:「CDSの提案」
銀行にCDOの保険となるCDSを提案。受け入れてもらえる。
→ローレンスの同意を得ずに空売りの強行。
登場人物4人全員が納得した上で富を得る準備をする旅に出る。

Battle「バトル」:「」

Pinch1「ピンチ1」:「チャーリー・ジェイミーの会社」
ベンを頼る2人がどういう会社を立ち上げて、何を望んでいるか。
→より大きい取引の下準備として富を得たい。

MP「ミッドポイント」:「13億」「5000万」「ジャレドは正しい」
マイケルは13億・マークはジャレドを通じて5000万・ベンチームはジャレドの予想を確信する。
→ここで全員がCDSでの空売りが正しいと意志を固めている。
マイケル:フォールスタート:45分 金を返せ
マーク&ジャレド:MP中:53分 5000万でCDS購入
ベン:MP始まり:58分 ジャレドの見解は正しい

Fall start「フォール」:「破綻しない」
債務不履行増・債権価値上昇、格付けが下がらない=経済破綻しない。
→すぐに崩壊すると思ったものがなかなか崩壊せず保険料や担保の痛手を負い始めるシーン。

Pinch2「ピンチ2」:「ベンの怒り」「大量のCDSを獲得」
CDSを大量に手に入れ空売りできる状況になったいることに喜ぶ2人にベンが怒る。
「俺たちが勝てば、国民は家や仕事や老後資金を失う」「はしゃぐな」
→自分たちが富を得ることへの代償について、気付きを与えるシーン。
ピンチ1での目的への代償。

PP2(AisL)「プロットポイント2」:「CDS購入を果たしベガスから離脱」
空売り(CDS)に利益を望むということは経済破綻を望んでいるということ。
全員がそれに気付いているが、利益のためにCDS購入をし、ベガスから離れる。

DN「ダーク・ナイト・オブ・ザ・ソウル」:「」

BBビッグバトル:「経済破綻が始める」
NCF破産する。
→想像していた未来が始まり、全員が数字を追う。
twist:CDSの価値がなかなか上がらない

image2「ファイナルイメージ」:「利益」
マイケル:+489% 利益26億9000万
マーク:現状に憂いつつ売る
ジャレド:4700万
ベンチーム:8000万

エピローグ:
人日の生活風景の写真が散りばめられ、メッセージで同じ歴史が繰り返されそうになっていることを示唆している。

【感想】

実話に基づく、しかも金融系の映画で新鮮でした。
わからない箇所は説明シーンを入れてくれているので、ゼロ知識でない限り理解ができるような気がしました。が、その説明シーンがテンポを崩していて、話に没頭できないデメリットも感じました。
せめて物語の関係者に説明させたほうが集中できたと思います。いきなり関係ない人間のバスタイムやシェフ見せられてもしらけちゃうので……笑

群像劇らしい人物の登場で、PP1までの物語を背負うのがマイケル、それ以降がマーク。
マークという主軸を支えるようにジャレトとベンチームのストーリーが入っていて、なかなか忙しいながらも緊迫感が保てました。
OPイメージ・キャラクターの変化、加えて登場の割合を考えるとマークがほぼ主人公だと思えました。
マークが最後まで悩んでいたこと含めて、けして後味のいい映画ではないですが、歴史を振り返る上での「経済と人間性」について考えさせられました。

(雨森れに、2022.10.30)

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『映画『マネー・ショート華麗なる大逆転』(三幕構成分析#86)』へのコメント

  1. 名前:川尻佳司 投稿日:2022/11/14(月) 01:49:17 ID:045d187b6 返信

    映画の流れはなんとなく理解しましたが、よくわかりませんでした。金融の話は難しいですね。
    群像劇ですが、内面の問題について、マイケル、特にマークがメインで描かれていましたね。主要な人たちが一癖あるのもバブル崩壊を見越した行動を際立たせていました。
    群像劇でモンタージュあり、シットコムのようなメタ的な語りかけがあったり、編集でかなり変化が面白い作品ですが、第3幕までずっと主人公たちは日の目を見ず、抑えらえているので結構忍耐がいりました。
    全然華麗な逆転でなく、考えさせられる内容でしたね。これで日本も大変な目にあいました、また繰り返されるかもしれない問題です。

    私も1幕はマイケルとマーク、以降マークをメインのビートで考えました。
    「金の羊毛」の「強盗羊毛」です。

    Image1:「肩車する父子の後ろ姿」
    のどかなBGMで、マーク・トウェインの言葉「厄介なのは知らないことじゃない、知らないのに知っていると思い込むことだ」とテロップの背景に草原で車の窓越しに肩車する父子らしき映像がでてきます。新たな住宅を求める親子なんでしょうか。作品のモチーフであるサブプライムローンの問題が暗示されます。続いて、ジャレドが70年代後半、退屈な銀行業をMBSで変えてしまうラニエーリを紹介し、それによる2008年の経済破綻、それを見通した主人公たちを説明します。

    (「ジャンルのセットアップ」経済ドラマ)

    CC:「MBSの危険性」「孤独なマイケル」「銀行の不正に怒るマーク」
    採用面接の場面で、マイケルはMBSの危険性を語り、カットバックで義眼を気にしていて孤独だった過去が描かれます。
    続いて、集団セラピー中に一方的に自分の銀行への不満を話すマーク、しかし兄を亡くした自分の過去は語らず、電話が来て勝手に出ていきます。

    Catalyst:15%12分「住宅市場で空売りの提案」
    マイケルが投資家のローレンスに住宅市場での空売りを提案

    Debate:20%15分「ローレンスを説得」

    Death:15分「空売りできる方法を探す」

    PP1:24%19分「CDSの提案」
    マイケルはCDSという方法で空売りを銀行と交渉します。住宅市場の破綻に賭ける旅です。

    Battle:28%24分~「CDSの空売り」
    マイケルやジャレドたちのCDSの空売りに抵抗する周囲やCDSが信じるに足るのかマークらの探求のバトルです。

    Pinch1:34%37分「マークはジャレドを信用し調査開始」
    この調査で不動産バブルだと信用しマークらは5000万ドルのCDSの空売りをします。このマークらの空売りがMPを迎え債権の値上がりで初めにフォールスタートします。

    MP:48%62分「MBSの債務不履行が100万件に達する見込み」
    ついにMBSの債務不履行が激増します。

    Fall start:48%62分「債権は値上がり」
    ところが、債券は値上がりし、ジャレドはマークらに190万ドルの担保を追加要求します。銀行から仕事を貰う立場の格付け会社は格付けを下げません。問い詰められたジャレドはマークらにベガスの住宅市場の証券化フォーラムで見極めることを提案します。

    Pinch2:64%83分「合成CDOを知る」
    マークはベガスで合成CDOという更に加熱した金融商品を知り、世界経済の破綻を確信し、さらにCDSを空売りします。AとBストーリーが交差して、腐った金融界と自殺した兄の苦悩に気づかず金を渡した自分は同類だと悔います。

    PP2(AisL):76%94分「投資銀行が破綻」
    村上春樹の「誰もが心の奥底では世の終末の到来を待ち受けているものだ」とテロップが出され終末論とマイケルやマークたちが重ねられ、MBSを扱ってきた投資銀行が破綻し始めます。第3幕は経済破綻による利益という倫理的な問題との葛藤です。

    DN:94分~「CDS変化なし」
    銀行は破綻しましたが、CDSの価値には変化がありません。

    BB(TP2):80%99分「CDSが一番人気」「親会社モルガンの債務は150億」
    マークはCDSを売らずにさらに銀行を追い詰めようとします
    prepare:「マークはCDSを売らない」
    start:「マークと投資家ミラーの討論でベアー社株は暴落」
    twist:「政府が救済措置、売れば銀行と同じではないか」
    solution:「国民を騙した銀行と同じではない、天罰を下す」
    BF:「CDS売る決断」真のジンテーゼです。

    image2:96%121分「マンハッタンに佇むマーク」

    エピローグ:「それぞれのその後」