初心者の方はこちらからどうぞ→初心者向けQ&A①「そもそも三幕構成って何?」
ここまでPP(プロットポイント)の位置がストーリーを左右すること、その映画と小説の違いを考えてきました。
時間芸術である映画ではPPの位置がとても重要です。
小説では位置そのものは自由ですが、PPの前に読者に伝えておくべき情報がある点では映画と同じです。
これから数回にわたって、その「伝えておくべき情報」について考えていきます。
『SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術』に「ビートシート」というものがあります。
物語を構成している要素を「ビート」と呼んで、それを時間順に並べて一覧にしたものがビートシートです。
民俗学ではモチーフ素とよんだりもします。
例えば、桃太郎が「桃から生まれる」のと、かぐや姫が「竹から見つかる」のは「赤ん坊の誕生」という共通点があります。
二人とも大切に育てられますが、オイディプスでは生まれてすぐ山に捨てられます。
桃太郎とかぐや姫
「誕生」→「保護」→「成長」
オイディプスで
「誕生」→「追放」→「保護」→「成長」
となります。
またかぐや姫は、月から罪を償うためにきていたことがわかりますが、これは「赤子の誕生」の前に「追放」があったことになります。
つまり、本来は
「追放」→「誕生」→「保護」→「成長」
だったことになります。
これらの「誕生」「保護」「追放」「成長」といったものモチーフ素やビートです。
どんなストーリーもビートに分析していくことができ、ビートから物語を創ることもできます。
現代にして、オリジナルストーリーにも置き換えられます。
「誕生」:不倫相手の子供を生む
「追放」:コインロッカーに捨てられる
「保護」:不妊症の金持ち夫婦に拾われる
「成長」:成長していく
アイデアがベタだと思えば、「誕生」の捨てられる理由を変えたり、「追放」される場所を変えたりしていけます。
また、「成長」の後、寂しさから親を探すか、憎しみから探すからでストーリーは変化していきます。
オイディプスのように悲劇的な「再会」になるのか……
物語の構成要素であるビートを知っていればハリウッド映画のような王道ストーリーも、わざと崩して応用ストーリーをつくることも可能です。
基本を知らなければ、崩せないのは言うまでもありません。
(世の中には、作者が基本を知らな過ぎるため崩れたものが、新しいと評価されることも多々ありますが)
★まとめ:
・物語は「ビート」に分解できる。
・「ビート」の基本を知れば王道ストーリーが創れる。
・基本を身につければ、崩して応用ストーリーも創れる。
・パターンなので量産も可能になる。
「ビートシート」が載っている書籍はこちらから購入できます。
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構成について初心者の方はこちら→初心者向けQ&A①「そもそも三幕構成って何?」
三幕構成の書籍についてはこちら→三幕構成の本を紹介(基本編)
三幕構成のビート分析実例はこちら→がっつり分析シリーズ
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