三幕構成がっつり分析『君の名前で僕を呼んで』(#2)

基本情報:
原題『Call Me By Your Name』、2017年、イタリア・フランス・ブラジル・アメリカ合作。監督はルカ・グァダニーノ、主演はティモシー・シャラメ(エリオ)とアーミー・ハマー(オリヴァー)。2017年1月にサンダンス映画祭で初上映。アンドレ・アシマン『Call Me by Your Name』が原作。

※以下、ネタバレ含みます。

ログライン:
1983年のイタリア。芸術に造詣が深い両親に育てられた17歳の少年エリオは、父のアシスタントとして滞在するオリヴァーに恋をして、結ばれるが、別れてしまう。

プロット・アークタイプ:
プロットのタイプは男×男のシンプルなラブプロット。アークはタイプ3、逆シンデレラ型。

ビート分析:
Image1「オープニングイメージ」:クレジットとともに彫刻や楽譜などの芸術アイテム。エンディングイメージやテーマを表すほどのアイテムとしては機能していないが、雰囲気のセットアップには成功している。

CC「主人公のセットアップ」:トップシーンから、主人公エリオの「侵略者がきた」というセリフで、部屋を奪われること、それを皮肉めいて言いながら、やや歓迎しているような表情がエリオという少年を説明している。同時にキアラという少女、部屋に荷物を運ぶことで部屋の構造もセットアップしている。さらにオリヴァーが来てからの家族や知人のリアクション、エリオの感情のグチを入れながらキャラクターをセットアップしている。オリヴァーが二度、エリオの肩に触れるシーンがあるが、ストーリー上は大きな事件になっていない。BGMが流れてときめきを表すような意味を込めている。

Catalyst「カタリスト」:物語としてのビートを捉えるなら「オリヴァーがやってきて、帰っていく」という捉え方が可能だが、映画上は19分「自慰行為を中断されてプールに誘われるところ」。二人の関係、会話が始まる。

Debate「ディベート」:音楽を聴かせてやや討論気味。どう接していいかわからずギクシャクしている。

Death「デス」:ダンスの最中にオリヴァーとキアラがキス。視聴者へは「キアラを奪われたショック」のように見えるのはミスリードでもあるが同性愛者でないものもショックを感じさせて共感させるという意味でも機能している。エリオ自身も、この瞬間にオリヴァーへの気持ちを自覚したともとれる。

PP1:「プロットポイント1」父とオリヴァーと三人でガルダ湖へ行くことになる。車に乗り込むことが「門」として機能している。海、彫刻などが出てきてF&Gの様相。オリヴァーとやや険悪になった後に「停戦しよう」と和解。このシーンを境に、エリオのオリヴァーへの思いが表出してアクト2へ入っていく。33分、全体の26%の位置でセオリー通り1/4。

Battle「バトル」:オリヴァーの水着を被る(恋心)→オリヴァーと街へいく→遠回しに告白→秘密の場所へ案内と関係を縮めていくバトルを繰り返してミッドポイントへ到達する。

Pinch1「ピンチ1」:母が小説の一節「話すべきか命を絶つべきか」を読んで聞かせる。母というよりは「本」というアイテムがピンチ2と合わせて機能している。

MP「ミッドポイント」:オリヴァーとのキス。MPのセオリー通りのシーン。56分、44%はやや早い。構成としては後半のアーティスティックなシーンが尺を伸ばしているためバランスがやや崩れている印象。後のベッドシーンの方が感情的には頂点とも言えるが、二人の関係の変化という構成上の点ではキスがMPと言える。

Fall start「フォール」:キスをしたが距離を保とうとするオリヴァーの態度に煩悶する。

Pinch2「ディフィート or ピンチ2」:MPからPP2までがストーリーがほぼ進行していない。アーティスティックなベッドシーンとサブキャラクターで繋いでいる印象。映像に魅力を感じない視聴者はこの辺りはかなり冗漫に感じる可能性が高い。サブプロットとしてはマルシアに本をプレゼントする。「本を読む人は秘密を持っていそう」というあたりが、ピンチ1との対になっていると見える。父の知人であるゲイカップルが訪ねてくるのは、ラストの父の告白へのフリ。

PP2(AisL)「オールイズロスト or プロットポイント2」:ベッドシーン、自慰行為などは映像的なインパクトはあれどストーリー上ではあまり機能していない。キスするまでのエリオは「告白したい」という願望と「言えない」という葛藤があったが、MPでキスした後、二人の関係を妨げているのは「オリヴァーによる迷い」だけで、葛藤が弱まっているなので、ストーリーが進行しているのではなく映像的に描写されているだけと言える。映像的なシーンは好き嫌いが分かれるところであり、同時にその映画の個性でもあるので、一概に良し悪しは言えない。前述したように、冗漫に感じる視聴者がいる可能性は高い。ストーリーが進むのはエリオが唐突に泣きはじめて「帰らないでほしい」というシーン。100分、全体の78%でPP2としては遅い。いかにMP~PP2が長いかがわかる。ともかく、二人の関係が終わりを告げる予感がビートとして機能している。これもカタリスト同様に物語のビートとして考えるなら、もっと後半で帰ったところがビートと言えるが、映画としてのビートではここがPP2といえる。マルシアを振るシーンはオールイズロストの失うものの一つのようにも見えるし、オリヴァーを選ぶという決断のようにも見える。

BB(TP2)「ターニングポイント2」:エリオとオリヴァーを二人でベルガモへ行かせようと、両親が話している。これまでに母はエリオの同性愛を理解しているシーンがあったが、父は不明なので「バレて問題が起こるのではないか?」というフリとしても機能している。エリオの意志ではないので、ここでの主人公による決断はない。「ビッグバトル」はそのまま、二人の旅行シーン。これといった葛藤はない。電車で見送る別れとしてのツイスト。サブプロットの延長でマルシアが友情を示す。父が自分も同性愛者であることを告白して、ビッグバトル=エリオとオリヴァーの関係は終了(Big Finish)。

image2「ファイナルイメージ」雪の映像から、後日談。オリヴァーが結婚するという電話。青春映画らしい喪失のままエンドロール。

分析にご興味がある方は、ぜひビート分析してみてください。
ご意見、ご質問などありましたら何でもコメント欄にどうぞ。

また三幕分析に基づく「イルカとウマの読書会」も定期的に開催しています。詳細はこちらから。ご興味ある方は、ご参加お待ちしております。

(緋片イルカ2019/03/30)

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がっつり分析のリストはこちら

構成について初心者の方はこちら→初心者向けQ&A①「そもそも三幕構成って何?」

三幕構成の本についてはこちら→三幕構成の本を紹介(基本編)

キャラクター論についてはこちら→キャラクター分析1「アンパンマン」

文章表現についてはこちら→文章添削1「短文化」

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