「江戸川コナン」(キャラクター分析#3)

【ミステリープロットの主人公=探偵役】
ミステリープロットというのは、『10のストーリー・タイプから学ぶ脚本術 ──SAVE THE CATの法則を使いたおす!』の分類でいえば、「なぜやったかWHYDUNIT」に該当します。(その他のタイプについてはブレイク・スナイダーの10のストーリータイプ)。

このプロットは極めてシンプルな構成で物語としては「謎が発生して、誰かが解決する(あるいは解決不可能となる)」ことで終わります。
謎を追及するのが主人公であり「探偵役」と呼びます。

シャーロックホームズから金田一耕助まで、古今東西、名探偵と呼ばれるキャラクターがいますが、職業が探偵に関わらず刑事でもいいし、リアリティの問題はともかく商店街のおばちゃんが探偵でもストーリーは成立します。謎が発生し、主人公が解決すればいいのです。

探偵役は必ずしも推理力や洞察力に優れている必要もありません。
行き当たりばったりだとしても「謎を解明したい」というWANTさえ持っていれば主人公たり得るのです。かっこいいかや、人気が出るかは別としてですが。

【クールな探偵+カセ+アイテム】
コナンくんは頭脳明晰な典型的なタイプの探偵です。

高校生探偵の工藤新一と金田一少年(いまは『金田一37歳の事件簿』ですが)を比べてもあまり差はないように思います。

しかし、謎の組織にクスリを飲まされ子供の姿になります。これが江戸川コナンというキャラクターの胆になっています。
周りに危険が及ばないように「新一であることを秘密にする」というカセがかかります(※カセというのは足枷のように主人公を縛る要素)。
子供であるため発言が信用されず、眠らせた毛利小五郎に推理を代弁させるという展開も生み出しますし、恋する蘭に対しても秘密にしなくてはいけないもどかしさもサブストーリーとして展開します。
またアガサ博士によるアイテムの数々によってアクションシーンもこなします。

これらがストーリーのベースであるミステリーに、プラスアルファとしてのマンガ的な面白さを加えているのです。
すべては「クスリを飲まされて子供にされたこと」という設定から端を発しています。
これが江戸川コナンのコアになります。

それはシリーズをひっぱる力にもなっています。

【シリーズとしてのミステリープロット】
テレビの2時間ドラマシリーズなどでも明らかなようにミステリープロットは謎が解決すれば物語はおわります。
シリーズものでは1話完結であったり、数話で一つの事件が解決して、また次の事件が起こる、くり返しとりなります。

コナンくんは事件ごとの小さなミステリープロットをこなしながら、「謎の組織の真相を追う(WANTは体を元に戻すという)」という大きなプロットを持っています。
この二重構造はどんなミステリーものでもたいてい取り入れているものですが、たいていは「過去の犯人を追う」といったものです。
そんな中、コナンくんのカセは高校生としての日常生活を壊されているので逼迫感があり強いものになっています。

『名探偵コナン』の長期連載につながるストーリーエンジンは、江戸川コナンというキャラクターの設定にあるともいえると思います。

【分類】
キャラクターロール:主人公
キャラクタータイプ:探偵役
キャラクターアーク:フラットなアーク
ストーリータイプ:なぜやったかWHYDUNIT
プロットタイプ:ミステリープロット

※映画版を分析したことはありませんが舞台やドラマのスケールが大きいだけでプロットの構造はミステリープロットのはずです。

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第1話「ジェットコースター殺人事件」

緋片イルカ 2019/10/17

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