今回はストーリーサークルの「構成」について説明します。
その他の要素については以下のリンクからご覧ください。
「ストーリーサークルとは何か?」という概略は1「題材」にて説明しております。
ストーリーサークル目次
1「題材」(概略含む)
2「人物」
3「視点」
4「構成」(題材∩人物)
5「テーマ」(題材∩視点)
6「描写」(人物∩視点)
7「物語」(構成∩テーマ∩描写)
「構成」とは……
物語の構成法はたくさんあります。
日本では「起承転結」「序破急」が有名です。
映画ではハリウッドで使われている「三幕構成」、それを細分化した「ビートシート」が有名です。
どれも物語を構成するための考え方で、共通する部分も多々ありますが、僕が「三幕構成」(ビートシートを含む)を重視しているのは、いくつかの理由があります。
いちばんの理由は「目盛りが細かい」からです。定規の目盛りが細かいと想像してください。
たとえば幼稚園児が定規をつかってモノを測るならセンチしか書いていないぐらいが使いやすいでしょう。単位の概念もわからず、数字や目盛りがいくつもあると混乱するからです。
初心者が「物語」を測るときも同じです。
初心者には「起承転結」や「序破急」で充分です。いきなり20個近いビートの定義や意義を説明されても混乱して扱えません。
しかし、センチしかない定規ではミリは測れません。
小学生に上がればミリまである定規を使いますし、て設計士や測量士のようなプロになれば専門的な測り方も必要になってきます。
ちなみに当サイトで扱ってる「三幕構成」の理論は、ハリウッドのものをベースにしてありますが、創作・分析を繰り返す中で改良してきたものです。
今のところ、この理論で「測れなかったもの」はありません。もしも、測れないものが見つかれば、今後もとり入れて改良していきます。
大事なのは、一つの理論にいつまでも拘るのではなく、常に改良して進化させていくことです。
(参考記事:「三幕構成が起承転結より優れている点は?」)
「ログライン」から「ビートシート」へ
「物語で一番、大事なのはキャラクターだ!」という人がいます。物語を読み解く力の弱いプロデューサーなどに多い印象です。
「物語で一番、大事なのは構成だ!」という人もいます。三幕構成をセミナーなどの商売道具にしてる人や、講習を受けて一生懸命、勉強している人に多いでしょう。
いずれにせよ、乱暴で、稚拙な考え方です。
「キャラクター」も「構成」もどちらも大事に決まってます。どちらか一方だけではダメです。
さらにストーリーサークルのもう一つのサークル「視点」も同じぐらいに大事です。
ストーリーサークルでは「題材」と「人物」の共通部分に「構成」をおいています。
この意味を説明していきましょう。
まずは「ログライン」です。
物語を端的に「誰が、何して、どうなる」という構造で捉えることです。
具体的な使い方などは過去記事にたくさんありますので、ここでは割愛しますがポイントは「誰が」と「何して」という部分です。
ここで、ストーリーサークルの2つの円「題材」と「人物」が絡み合っています。
「題材」の記事で使った「おばあちゃんの原宿こと巣鴨で、100年以上つづいている老舗和菓子店の家族」という例を、再びつかってみます。
これは題材に過ぎないので、このアイデアだけで物語を書こうとすると詰まります。
家族のうちで誰を主人公とするかが定まっていないからです。
ここでは「和菓子店の娘」としてみます。
「人物」の記事では主人公の役割(ロール)として「試練に直面し、ときに悩み、成長し、大きな試練に挑んで勝利(敗北)する」と説明しました。
この役割をくわえてみます。
「おばあちゃんの原宿こと巣鴨で100年以上つづいている老舗和菓子店の娘は、OLを辞めてつぶれそうな和菓子屋を立て直そうと近隣の人たちと協力して、街を活気づける」
これで、構成の原型ができました(構成用語で説明しておくなら「店が潰れそう」というのがプロブレム、「立て直したい」というのがWANT、建て直しが試練(バトル)、近隣の人たちとの協力が成長、活気づけるが勝利となります)。
ログラインは企画のスタートに使いやすいだけでなく、全体の流れに迷ったときに、この文章に戻ってくることで、頭を整理することにも役立ちます。
しかし、この一文だけでは、まだまだ「構成」にはなりません。
この物語が面白いかどうかもわからないし、書き上げることも難しいでしょう。定規でいうセンチの目盛りで測ったに過ぎないのです。
より、細分化するときには「ビートシート」が役立ちます。
これについても、かなりの過去記事を書いているので、ここでは割愛します。
ストーリーサークルの「構成」には「人物」と「題材」の両方が大事なのは言うまでもなく、その両者が絡み合ったものこそが「構成」だという点がポイントです。
(参考記事:ログラインって何?)
(参考記事:「フックのある企画から」)
(参考記事:ビートシートって何?)
「構成」と「テーマ」の関係
ハリウッド映画のほとんどが三幕構成をつかって脚本が書かれています。三幕構成の考え方はハリウッドでは「常識」なのです。
それでも面白いものと、つまらないものがあります。
物語は「構成」だけで成立している訳ではないからです。
欠けてはいけないものの一つが「テーマ」です。
「テーマ」はストーリーサークルの「題材」と「視点」の共通部分に置かれています。
テーマについては次回の記事で説明しますが、ここでは構成との関連を考えておきます。
「テーマがある構成」と「テーマがない構成」です。
テーマのない構成とは、上の例にあげたログラインです。
再掲します。
「おばあちゃんの原宿こと巣鴨で、100年以上つづいている老舗和菓子店の娘はOLを辞めて、つぶれそうな和菓子屋を立て直そうとして近隣の人たちと協力して、街を活気づける」
物語としての構造はありますが、どこかきれい事です。そういう和菓子屋の娘が実際にいたというドキュメンタリーであれば、いいのですが、創作物語としては、いまいち魅力に欠けます。ドラマが足りません。感動もしないでしょう。
では、ここに何を「テーマ」として入れたらいいか?
基本的には、作者の描きたいもの(「視点」)でよいのですが、共感されやすいエンタメ的なものを込めた例を挙げておきます。
「コロナの煽りを受けて、主人公の娘は派遣切りを受け会社をクビになり、実家の和菓子店を手伝おうにもつぶれかけている。それどころか巣鴨は高齢者の多い街だけに自粛する人も多く、和菓子屋のある商店街も閑古鳥がないている。自分が育った街が寂れていくのに耐えられないと思った主人公は、あれこれと商店街活性化の行動をしていく。しかし「お前のせいでコロナにかかったら責任とれるのか?」などと罵倒されたり、店に嫌がらせ受けたりする。挫けそうになる中、父親が倒れてしまう。心臓発作で、コロナ感染ではなかったが、差別を受けて商店街八分にされていく。ある日、父の友人である魚屋が見舞いに来たことをきっかけに、街の雰囲気が少しずつ変わっていく。そして、娘は商店街活性化のためあるイベントを企画する」
このストーリーもまだまだ弱いとは思いますが、説明のための思いつきで書いているので、この程度でご容赦ください。
ポイントは「コロナ」という時代性のネタと「苦しいときでも前向きに頑張ろう」というメッセージを入れたところです。
主人公が「街を活性化させたい」という行動だけでは個人のストーリーですが、そこに「コロナだけどがんばろう!」という社会へのメッセージを重ねることで「テーマ」が生まれてくるのです。
個人的にはもっとアート寄りのネタが好みですが、テレビドラマなどでは常識的な「テーマ」で語られる物語が多くあります。
「構成」と「描写」の関係
「描写」はストーリーサークルでは「人物」と「視点」の共通部分にあたります。
これについても、詳細は今後の記事にゆずりますが、ここでは「構成」との関係を考えておきます。
「描写」はシーンとも言い換えられます。
たとえば、上の「和菓子の娘ストーリー」で「魚屋が父の見舞いに来た」シーンをとりあげて、二つのパターンを書いてみます。
パターンA
魚屋が病室に入ってきて・・・
父親「何しにきた?」
魚屋「見舞いにきたんだよ。お前が倒れたと聞いてな」
父親「そうか、ありがとう」
魚屋「気にすんな。小さい頃からの友達じゃないか」
パターンB
魚屋が病室に入ってきて・・・
父親「何だ、魚くせえな」
魚屋「なんだ、元気そうじゃねえか。わざわざ見舞いに来て損した」
父親「ああ、帰れ帰れ」
魚屋「そうするかな」
と言いながらも、魚屋はベッド脇のイスに座る。
魚屋「小さい頃から変わんねえな」
父親「あ?」
魚屋「覚えてねえか? 小学校のとき野球してて・・・」
どちらが、キャラが立っているかは一目瞭然かと思います。
パターンAはキャラクターの性格を想定せず、ただ説明的に書いた文章です。
パターンBでは言葉では罵り合いながらも、本当は心配している腐れ縁のような関係がみえます。
同じ「魚屋が見舞う」というシーンなのに「描写」に違いがあると、まったく印象が変わるのです。
つまり「構成」がいかにうまく作られていても、説明的な「シーン」しか描けないと面白くなどならないのです。
「描写」は作者の腕に直接に関わります。
(参考記事:「文章テクニック」シリーズ)
次回はストーリーサークル「テーマ」について説明していこうと思います。→ ストーリーサークル5「テーマ」(文学#38)
緋片イルカ 2020/12/08