シーンの構成要素2(中級編12)

三幕構成 中級編(まえおき)

三幕構成の中級編と称して、より深い物語論を解説しています。

中級編の記事ではビートを含む用語の定義や、構成の基本、キャラクターに対する基本を理解していることを前提としています。しかし、応用にいたっては基本の定義とは変わることもあります。基本はあくまで「初心者が基本を掴むための説明」であって、応用では例外や、より深い概念を扱うので、初級での言葉の意味とは矛盾することもでてきます。

武道などで「守」「破」「離」という考え方があります。初心者は基本のルールを「守る」こと。基本を体得した中級者はときにルールを「破って」よい。上級者は免許皆伝してルールを「離れて」独自の流派をつくっていく。中級編は三幕構成の「破」にあたります。

以上を、ふまえた上で記事をお読み下さい。(参考記事:「三幕構成」初級・中級・上級について

超初心者の方は、初心者向けQ&A①「そもそも三幕構成って何?」から、ある程度の知識がある方は三幕構成の作り方シリーズか、ログラインを考えるシリーズからお読みください。

プロットとキャラクター

中級編では「プロットアーク」と「キャラクターアーク」の2本にわけて物語を捉えていきます。

これは物語全体でいえることでもありますが、シーンで同様に考えることができます。

具体例を挙げながら、シーンを「プロット」と「キャラクター」の要素に分解していきます。

シーンの構成要素(中級バージョン)

以前に書いた「シーンの構成要素」という記事では、

「セットアップ」
「イベント」
「リアクション」

という要素を提示しました。
一年以上前の記事だったので、僕自身、そこから発展していますが、考え方の根本は同じです。

前の記事で上げたのは主に「プロット」的に捉えた要素です。今回は中級編でもあるので、ここに「キャラクター」の要素も加えていきます。

この図にある「①事件」が、前の記事での「イベント」に相当しています。

「⑤次の事件」が、前の記事での「リアクション」に相当します。

つまり、前の記事でいう「イベント」~「リアクション」の間に、キャラクターの反応があるということです(青と紫で色分けしてある)。

図にある具体例で説明していきます。

主人公である「私」が道を歩いてたとします(これが前記事でいう「セットアップ」です)。

向こうから「犬を連れた人がやってきます」。これが一つ目の事件です。

私は犬がいることを「認知」します。人間は認知に五感を用います。

視覚で認知すれば「ちいさな白い犬だ」とか「大きなドーベルマンだ」とか。首輪の鈴やリードが音を立てるかもしれませんし、獣臭がするかもしれません。

さまざまな感覚器官を駆使して認知するのです。

つぎに私の中で「感情や思考」による反応が起こります(リアクションと呼ぶと混同するので感情・思考と呼びます)。

犬が嫌いな人であれば「こわいな」「いやだな」と思いますし、好きなら「わ~かわいい!」と思うかもしれません。

そして、次の行動を決定します。

こわければ「逃げる」かもしれませんし、好きであれば「近寄って撫でる」かもしれません。

「素通りした」場合でも、こわいけど「素通りした」のと、好きだけど「素通りした」のでは物語で、意味が変わります。

「認知」していなかったために「素通りした」という場合もあるでしょう(この違いは「読者」と「キャラクター」の認知のズレを生む効果もあります。わかりやすいのは「志村うしろ!」ってやつです)。

ここでは、犬が好きで「近寄って撫でた」としてみます。

これで「犬がやってきた」という「イベント」から始まって、私の「リアクション」がおわります。

この後は、飼主のターンです。

飼主にとって「私という人物が近寄ってきて、飼い犬を撫でた」という「イベント」が起こります。

私という人物の年齢や身なりを「認知」して、

「あやしいやつ」→「犬を連れて逃げようとする」かもしれませんし、

「いい人そう」→「雑談する」かもしれません。

飼主の反応に対して、またの私のターンです。

この繰り返しが物語を進めていくのです。

これらのシーンの構成要素をみることで、物語のさまざまなことが分析できます。今後、同作会で研究していく内容でもあるので、ここで、すべては書き切れませんが、いくつかの導入をご紹介しておきます。

キャラクターコアとの関連

図の紫色の部分は「キャラクター」の要素です。

どう認知して、どう感じて、どう行動するか。

これらの中心になる部分を「キャラクターコア」と呼びます。

たとえば、私が「とつぜん、犬を蹴る」という行動をしたとします。

これは、飼主も読者も驚くかも知れませんが、私の中には蹴るだけの理由があるのです。

ノリや面白さだけで、そういう行動をさせていたとしたら、それは作者のご都合になりますが、物語全体を通して、そのキャラクターにそうするだけの「コア」があるのなら、そういうキャラクターとなるのです。

キャラクターのブレとは、シーンによってリアクションのルールが、ころころ変わってしまう場合です。

また、執筆前のプロット通りにキャラクターが動いてくれないときは、コアをもっている可能性もあります。

2本のアーク、ビートとの関連

中級では「プロットアーク」「キャラクターアーク」という2本のアークでとるということは、すでにお話しましたが、図の青は「プロットアーク」、紫は「キャラクターアーク」に関連する要素となります。

たとえば、プロットを箇条書き的に書くときには、

・犬がくる
・私が撫でる
・飼主と雑談

と、「イベント」と「リアクション」(青色)に相当する部分を端的に考えていけばいいのです。

こうやって書くと、いかにシーンとして平凡かがよく見えます。意外性も面白味もないのです。

プロットを立てるときに間違いやすいのが、

・犬がくる
・私が撫でる
・飼主と雑談
・私は小さい頃、犬を飼っていたのを思い出して懐かしい気持ちになる。

などと、感情ドラマを展開しているとストーリーが進んでいるように錯覚してしまうのですが、これは、箇条書きを要約してしまうと、

・散歩中の犬と出逢う
・私は小さい頃、犬を飼っていたのを思い出して懐かしい気持ちになる。

と、まとめられ、じつは「③感情・思考」までしか進んでいないのです。

「もう一度、ペットを飼おう」とか、「④行動」をしたところで、初めてその「イベント」がイベントとして意味を成すのです。

ただ、認知したものを描写していても日記にしかなりません。

物語は前に進まないといけないのです。

また、こういった物語を進めるイベントこそがビートの本質でもあります。

言い替えるなら、シーン(ないしはシークエンス)は、主人公がリアクションしなければ意味がないとも言えます。

テンポ、文体、描写との関連

一連のリアクションには個人差、キャラクター差があります。

犬を「認知」した瞬間、自分から走り寄って撫でる人もいれば、撫でたいなと思っていても、飼主を見て「怒られないかな?」なんて様子を覗いながら、恐る恐る近づいていく人もいます。

こういった違いは、性格のちがいですが、同時に物語のテンポにも関係します。

エンタメ作品ほどペースが速いので、主人公がうじうじしていると、ストーリーが進まないのです。

この仕組みから、安直に「主人公はポジティブな方がいい」と言われたりもします。

キャラクターを前向きに設定していながら、ぜんぜん、前向きに見えない場合というのもあります。

これを別の言い方で考えるなら、「医者なのに、医者らしく見えない」というとわかりやすいかと思います。

「本当の医者なら、こんなことは絶対にしない」というようなことをやっていたとしたら、作者の描き方がまずいのです。キャラクターコアをつかめていないともいえます。

同様に、無駄な心理描写、思考描写が多ければ、「考えるよりも先に体が動くキャラクター」には見えなくなるのです。

医者のような知識の有無で正誤を判断できる部分とちがい、性格描写とストーリーテンポの関係は、読み手、書き手のセンスに由来するところが多くあり、見落とされがちですが、リアクションまでの文量によって分析していくことができるのです。

また、どういう言葉を使うかという「表現」にも「キャラクターコア」はあらわれます。

わかりやすくいえば、

「白い悪魔のような猛犬がやってきた」などと描写されていて、それがチワワだったとしたら、この表現から語り手の性格が垣間見えます(いや、丸見えですね)。

この「文量」や「表現」の全体を「文体」と呼ぶのだと思います。

ここには、作者のクセや、キャラクターに合わせた表現が含まれていますが、「シーンの構成要素」をしっかり分析していくことで、分析、分類、応用していくことができると思います。

こういったことについては、記事になりそうなことがたくさんあるのですが、どれも説明が細かくなるのと、まだまだ研究段階なので、この記事ではこれぐらいにしておきます。

高度な分析や、自作への応用に興味がある方は同作会へのご参加をお待ちしております。

緋片イルカ 2021/04/24

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