映画『アス』(三幕構成分析#111)

※あらすじはリンク先でご覧下さい。
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スリーポインツ

PP1:「襲撃開始」(40分36%)

MP:「4人でボート脱出」(63分53%)

PP2:「息子がさらわれる」(89分78%)

感想・構成解説

「好き」4点 「作品」3点 「脚本」2点
ジョーダン・ピールという監督としての見方をしがちだが、作品だけを客観的に見たら、予算をかけたB級ホラーの粋を出ていない印象。ショットはとても面白いものがあって、演出のセンスはとても良いが、脚本が雑すぎる。というか放棄しているとすら見える。設定の辻褄もあやしいし、キャラクター達が「そこ、家族を助けに行かないのか」とか、演出を見せるためだけの段取り展開ばかり。フリが雑なままの、設定だけ後出しして、観客に真相を明かすだけでインパクトを得ようとするのは素人くさい構成。真相を明かすタイミングも間違えている。『ゲット・アウト』でも同じような構成だったのでクセであり脚本家としてのジョーダン・ピールの実力でもあると感じる。『ゲット・アウト』では真相に「人種問題」が絡んだために偶然に評価されてしまったというのが実情ではないか。『アス』ではテーマ性もないまま、エンタメにシフトしたため、脚本の雑さだけが目立つ。良し悪しはともかく、たとえば、影とか地下のクローン達に人種問題を絡めることもできたが、そういうことをやらない方向に進んだ。今作で観客が勝手に解釈をしてくれる味も占めてしまったのではないかと考えると、次の『NOPE/ノープ』への繋がりも見える。脚本家としては二流だが演出としては素晴らしい。PP1前までの雰囲気も良くて引き込まれた。ただ、基本、ホラー的な演出が多く『NOPE/ノープ』ではアクション系の演出が大アジ(ベタ)だった印象(アクションとしてなら、もっと素晴らしい演出家がいっぱいいる)。現状の高評価されている流れがどこまで続くか。どこかで方向性をシフトするか、消えていってしまう可能性もあるのでは。

緋片イルカ 2023.1.12

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