映画『ミスト』(三幕構成分析#181)

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※あらすじはリンク先でご覧下さい。

※分析の都合上、結末までの内容を含みますのでご注意ください。

※この分析は「ライターズルーム」メンバーによるものです。

【ログライン】

家族を何より大切にしている画家デヴィッドは、異常な霧が原因でスーパーに閉じ込められ、霧から現れた化け物や狂った人々との奮闘を経て、息子や仲間たちと共に車で霧の外を目指すも失敗する。

【フック/テーマ】極限状態で人間性を捨てずにいられるか。

【ビートシート】

Image1「オープニングイメージ」:「」自宅のアトリエで映画のポスターを描いている主人公、デヴィッド。(職業は映画のポスターの画家)外は雷雨。デヴィッドが日常を過ごしているシーンとしてファイナルイメージと対になっていると思いますが、あまり効果的に機能しているとは思いませんでした。雰囲気は良いと思います。

GenreSet「ジャンルのセットアップ」:「破壊されるアトリエ」デヴィッドとその家族が階下に移動した後、木がアトリエに突っ込んできて絵が損傷する。唐突に恐ろしい出来事が起きたことから、この映画がホラー、またはサスペンスといったジャンルに属することが示唆された。

Premise/CQ「プレミス」/「セントラル・クエスチョン」:「息子と共に妻の元に帰る」 シーンは少し前後して、PP1の後。皆で窓の前に物を積んだり、ガラスを補修したりしている。
ノートンは「皆信じるな、化け物なんて存在しない」と皆に言い聞かせ、この惨状が神によるものだと思い込んだカーモディは説教を始める。
カーモディの話が「生贄が必要」、「今夜襲われ、誰かが死ぬ」など過激なものだったため、アマンダ先生と揉めることになる。
そんな中、デヴィッドはビリーに言う。「約束する。何があってもママの元へ帰るからな」『息子と共に妻の元に帰る』というのが、主人公のウォントであり、セントラル・クエスチョンになっている。

want「主人公のセットアップ」:「家族を大切にしている画家」家に突っ込んできた木はデヴィッドの祖父が植えたものだった。悲しむ妻に、しかしデヴィッドは言う。「所詮物だ。家族の無事が一番さ」この台詞から、彼が家族を最も大切にしていることが伺える。

Catalyst「カタリスト」:「霧の中に何かいる!」 デヴィッド、彼の息子のビリー、隣人のノートンは、買い出しをしにスーパーに向かう。道中、軍の車両が急いだ様子ですれ違っていった。
スーパーに着いてからも軍人や憲兵が入ってきて、何やら慌ただしい様子。憲兵が軍人たちに休暇の取り消しを告げて薬局に向かう。何かが起こっているのか?
大きなサイレンの音が鳴り、鼻血を流した男、ダンが駆けてきて、叫ぶ。「霧の中に何かいる! 何かにジョン・リーがさらわれた!」スーパーの中に入り、宥められるダン。
人々が混乱する中、一人の男が制止を振り切って自分の車に向かう。直後に霧がスーパーにまで達し、男の悲鳴が響き渡る。パニックになる群衆。ビリーも怖がっている。
直後、強い揺れが起きる。

Debate「ディベート」:「シャッターの向こう」店内でビリーの学校の先生たち(レプラー先生とアマンダ先生)と話をするデヴィッド。
ビリーが熱っぽいのでアマンダ先生がアスピリンを探しに行く。デヴィッドはビリーの毛布を取りに倉庫へ向かう。
倉庫にて、発電機から煙が出ていたため、デヴィッドは発電機を止める。そして毛布を探す最中、シャッターを外から何かが押しているのに気付く。
ジムを始めとした店員たちはデヴィッドの『シャッターの向こうに何かがいる』という話を信じない。

Death「デス」:「シャッター開放」デヴィッドは店員たちに押し切られ、若い店員がシャッターの外を見に行くことに。

PP1「プロットポイント1(PP1)」:「化け物出現」シャッターを開けると化け物の触手が入ってきて、若い店員の足に巻き付く。デヴィッドたちが助けようと奮闘するも、若い店員は触手にさらわれていく。
「アンタがもっとちゃんと説明してくれれば」と責任転嫁をするジムがデヴィッドに殴られる。
ニューヨークの一流弁護士であるノートンを介して説明すれば住民以外の人も信頼して聞くだろうということで彼に事情を説明するが、信じてもらえず、むしろ揉める。
ただ、デヴィッドが斧で切り落としていた触手の一部を見せて多くの人の信用を得ることはできた。

F&G「ファン&ゲーム」:「やはり霧の中は危険」皆で、これから必要になる物について相談している。液体燃料とモップで松明が作れる。ナイフもある。しかし、田舎だから銃は置いてない。
アマンダ先生が夫に持たされた護身用の拳銃を取り出す。店員の一人、オリーは射撃が得意で大会で優勝したこともあると明かされる。拳銃は彼が持つことに。
非日常の世界に対処するための準備が進められる中、ノートンが外へ出て助けを呼びに行くと言い出す。
さらにもう一人、勇敢な男が駐車場のトラックへショットガンを取りに行くと申し出る。
男のは腰には100メートルの長さのロープを巻き、出発。しばらくするとロープを持つデヴィッドの手に凄まじい力が加わり、やがて消えた。ロープを引くと、男の身体は両断されていた。
こうして、彼らは非日常の世界の危険性を身をもって見せつけることとなった。

Battle「バトル」:「化け物や狂人たちとのバトル」PP1後、MP後、フォール開始後すぐの化け物との戦闘。

Pinch1/Sub1「ピンチ1」/「サブ1」:「ウェインとサリーのサブプロット」軍人の一人、ウェインと店員の一人、サリーのラブストーリー。彼らは高校が同じで、両思いであることが明かされる。更衣室でイチャつく二人。分かりやすい死亡フラグとも取れる。

MP「ミッドポイント」:「店内に侵入する化け物たち」夜になり、化け物が寄ってきてガラスを破ろうとする。光に引き寄せられたのだ。デヴィッドがライトを消すように叫ぶも、誰かが非常用ライトをつけてしまう。当然事態は悪化し、人々はパニックに陥る。
やがて化け物たちがガラスを破って店内に入ってくる。一部の人々が果敢に戦う中、サリーが化け物に刺されてしまう。アマンダ先生がモップに火をつけようとするも中々つかない。緊迫感が募っていく。
やがて一際大きな化け物が入ってくると、店内は一層阿鼻叫喚とする。サリーは死亡し、ジョーという青年はモップに火をつけようとした結果転んで大火傷してしまう。
それからもしばらくデヴィッドたちは奮闘するものの、最終的にオリーが化け物を射殺し、窓に松明を置くことで一旦事態は沈静化する。

Reward「リワード」:「」不明。

Pinch2/Sub2「ピンチ2」/「サブ2」:「最初の信者」人々が割れた窓を慌ただしく修繕し始める中、一人の女性が呟く。「あの人(カーモディ)の言うとおりになった」

Fall start「フォール」:「薬局の惨状」外にあった男の死体が化け物に引きずられていく。食べるつもりだろうか。
アマンダ先生に寝かしつけられたビリーは寝言で「ママに会いたい」と言う。彼だけではなく皆が強い不安と恐怖に苛まれており、自殺する者まで出てくる。
火傷を負ったジョーの容体は悪く、痛すぎて死にたがっているほどだ。彼のため、強い抗生物質や痛み止めを取りに隣の薬局へ行かなくてはならない。
デヴィッドは薬局から帰ったらスーパーを出ることを提案する。理由は二つ。また化け物に襲われた際、松明で戦うと店が火事になってしまうこと。もう一つはカーモディがカルト宗教の教祖化してきており、危険だからだ。
デヴィッドの車は駐車場の、ノートンたちが進んだ距離よりも近い場所にあるから、比較的安全だという理屈。霧が晴れるまで、ガソリンの限り南へ走ろうという行き当たりばったりな計画。しかしカーモディと一緒にいるよりまマシだ。
薬局行きをビリーに泣いて止められ、説得した矢先カーモディにも反対される。レプラー先生がそれを押し切る形で、ジムや軍人たちも連れて薬局へ出発。
薬局内で薬を探していると、物音がし始める。
やがて人が蜘蛛の巣に引っかかっているのを発見。ほぼ死んでいたが、前日にスーパーを訪れていた憲兵はまだ生きていた。彼は言う。「すまない。たすけて。俺たちのせいだ」助けようとするも、彼は蜘蛛に寄生されており、身体から小さな蜘蛛たちが出てくる。
別の化け物も現れ、犠牲者も出たため一同はスーパーに退却する。

PP2(AisL)「プロットポイント2」:「生贄にされるウェイン」ジョーは死に、薬局の出来事が原因でカーモディの信者は増え続けており、ジムまでもが取り込まれてしまった。彼らは一様に「罪を購え」と叫んでいる。
この惨状を前に、レプラー先生も脱出を考え出す。デヴィッドは迷っているが、オリーにやはりカーモディは危険だと諭される。
まずは、この霧の正体や、憲兵の最期の台詞について軍人たちに訊いて情報を集めることに。
デヴィッドとウェインが他の軍人たちを探しに倉庫に入ると、彼らは首吊り自殺をしていた。デヴィッドがウェインに「この霧は軍がアローヘッド計画に失敗して出現したんじゃないのか」と問い詰める。
直後、ジムがウェインを皆の前に晒し上げ、カーモディに問い詰められて霧の詳細を話す。異次元の窓を作り観察していたのだが、誤って向こう側の存在をこちらに呼び寄せてしまったのだと。
全ての罪を着せられたウェインはジムに腹を刺され、群衆によって外に放り出されえうと、化け物の餌食となった。

DN「ダーク・ナイト・オブ・ザ・ソウル」:「ぼくを怪物に殺させないで」その夜、デヴィッドはビリーに、二度と置いていかないこと、怪物に彼を殺させないことを約束する。

BB(TP2)「ビッグバトル(スタート)」:「スーパーを脱出し、南へ」夜が明けると、デヴィッドたちは動き出した。まずは食料品を隠してあるレジに向かう。しかし待ち構えていたカーモディに見つかり、化け物を呼び寄せた元凶として、ビリーやアマンダを生贄にしようとする信者たちが襲い掛かってくるのだった。
危ないところでオリーがカーモディを射殺し、信者たちが怯んだところで一行は脱出に成功する。しかしそこから先も苦難が続き、オリーを始めとした仲間たちが数人化け物に殺されてしまう。

Twist「ツイスト」:「妻の死」一先ずは車でデヴィッド宅に向かうも、彼の妻は死んでいた。悲しみに暮れながらもデヴィッドたちはガソリンが続く限り走り続けることに。
しかし、霧が晴れることなく、ガソリンは底をつくことになった。

Big Finish「ビッグフィニッシュ」:「四発の銃弾」静止した車内で拳銃の残弾を確認するデヴィッド。四発。一人分足りないが、「俺は何とかするから」と、彼は息子たちを楽に死なせることを優先。悲しく響く四発の銃声。

Epilog「エピローグ」:「早く殺してくれ」仲間たちの返り血を浴び、独りになったデヴィッドは外に出て、早く殺してくれとばかりに化け物に啖呵を切る。
しかし霧から現れたのは化け物ではなく、軍の戦車だった。やがて霧が晴れ、軍が化け物を駆除し、住民たちを保護している様が露わになる

Image2「ファイナルイメージ」:「絶望するデヴィッド」決断があともう少し遅ければ。後悔してもしきれないデヴィッドは慟哭し、軍の車両が通り過ぎる中、独り崩れ落ちる。

【作品コンセプトや魅力】

化け物の怖さだけでなく人間の狂気もきちんと描いていることや、悲惨すぎるオチが魅力。

【問題点と改善案】(ツイストアイデア)

特になし。

【感想】

よく話題に上がるオチの悲惨さも良いですが、自分はそれより異常事態に直面した緊張感が全面に出ていて好きな作品です。
ノートンたちが外に出るシーンなど、少しくどい気もしますが、観客を退屈させないように工夫しているなと思いますし、PP1とは違う形で霧の異常性を表現していて良かったです。
「好き」5「作品」4「脚本」4

(脚本太郎、2024年1月11日)

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