映画『オットーという男』(三幕構成分析#221)

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※あらすじはリンク先でご覧下さい。

※分析の都合上、結末までの内容を含みますのでご注意ください。

※この分析は「ライターズルーム」メンバーによるものです。

【ログライン】

融通のきかない偏屈者の老人オットーは、妻に先立たれた寂しさを乗り越えられずに自殺を試みるが、向かいに越してきたマリソル夫妻を助けたことをキッカケに他人を助けるようになっていき、友人の家を不動産屋から守り、周囲の人間と絆を深めて寿命いっぱい生きる。

【フック/テーマ】

【ビートシート】


Image1「オープニングイメージ」:「なし」
該当なし。

GenreSet「ジャンルのセットアップ」:「」
皮肉をこめた会話でコメディのセットアップ。

Premise/CQ「プレミス」/「セントラル・クエスチョン」:「もう悲しまないで」
回想時、妻からの言葉。

want「主人公のセットアップ」:「偏屈男」
ルールを守らない人間を嫌い、バカな人々に怒っている。

Catalyst「カタリスト」:「引っ越しトレーラー」
首つり自殺しようとして、向かいの家に運転がヘタクソなトレーラーを見つけ、いてもたってもいられなくなる。

Debate「ディベート」:「すぐに自殺しない」
自殺の意思は変わらないのであまり機能していない。
帰ってすぐ自殺しようとせず、マリソル夫妻の会話を聞いていたりする。
挨拶代わりのチキン料理を食べたり、最後の時間を過ごす。

Death「デス」:「自殺失敗」
失敗し、妻へ墓参りする。マリソル夫妻、不動産屋の愚痴をいう。

PP1「プロットポイント1(PP1)」:「日常」
死ねなかった翌日。マリソルにタッパーを返し、いつもの見回りをする。
日常にマリソル夫妻との交流が混ざる。

F&G「ファン&ゲーム」:「世話好き」
理屈をこねながらも世話を焼く。

Pinch1/Sub1「ピンチ1」/「サブ1」:「ピンチ:マリソルを病院へ」「サブ:ルーベンと会話」
ピンチ:一旦は突き放すが、車を運転できないマリソルのために動く。他人のために動くこと、他人を思いやることを説明されている。
サブ:ルーベンと最後の会話をする。親友であったことがわかる。PP2からの展開に必要なサブストーリー。

MP「ミッドポイント」:「人を助ける」
電車に飛び込み自殺しようとするが、線路に落ちた人を見て自主的に助ける。ピンチ1での経験にも繋がる。オットーが地域の英雄になるキッカケ。
BBに必要なSNS(動画)の存在も匂わせている。

Fall start「フォール」:「猫を飼う」
妻の墓で、猫の飼い主を見つけるまで死ねないという。自殺のために動いていたのが初めて明確に先延ばしになる。

Pinch2/Sub2「ピンチ2」/「サブ2」:「ピンチ:マリソルに運転を教える」「サブ:ルーベンとの過去」
ピンチ:仮免しかないマリソルが運転できるようになるために、自分から教える。マリソルがバカな人間じゃないと認める。
サブ:ルーベン夫妻と仲が良かったことや、ルーベンと価値観が合っていたのに仲たがいしてしまったことを振り返る。

PP2(AisL)「プロットポイント2」:「再度自殺を試みるが失敗」
人のために動くようになっていたが、マリソルの発言で妻の存在を思い出し、再度自殺を試みる。
ソーニャの言葉とマルコムの訪問で失敗に終わる。最後の自殺が失敗に終わり、自殺への旅が終わる。

BB(TP2)「ビッグバトル(スタート)」:「ルーベンの家が売りに出されることを知る」
不動産屋の汚いやり方を知る。ルーベンのために立ち上がる。

Twist「ツイスト」:「電話を借りる」
直接対決するのではなく、SNSジャーナリストの力を借りる。
ここでマリソルに自分の怒りや悲しみを告白する。

Big Finish「ビッグフィニッシュ」:「不動産屋が逃げる」
不正がリアルタイムで暴かれて、不動産屋が逃げる。オットーの勝利。しかし、オットーは倒れる。

Epilog「エピローグ」:「大きなハート」「男児誕生」
マリソルが心臓肥大症を「大きなハート」と聞き、オットーを笑う。そして産気付き、男児誕生。
オットーは寿命いっぱい生き、周囲の人間から愛されて死ぬ。

Image2「ファイナルイメージ」:「なし」
該当なし。

【作品コンセプトや魅力】

伴侶に先立たれた人間がどう生きるか。
理解されない偏屈男が、実は世話好きの優しい人間だというのがマリソル夫婦によって紐解かれる。

【感想】

「好き」4「作品」4「脚本」4
セリフに皮肉がきいていて面白かったです。
陽気なマリソルがいたから、悲しみに寄りすぎずに明るく最後まで楽しめました。
大きなハートのくだりは少し不謹慎な印象もあるかもですが、実際こういうやりとりに救われる人もいるので茶化すぐらいでいいのかもしれません。
セリフ全般好みでした。
また小道具や人物の出し方もうまい気がしました。
自殺前にもらったご飯を食べるか?と疑問に思いやすいこともありますが、ルールに厳しい人物だと思えば「持ったものは礼儀を尽くして食べる」んだろうなぁと解釈できます。そして、食を絡めることでマリソル夫妻の存在が日常に侵入しているのを表しているのかもしれません。
ソーニャがいなくても存在を感じる小道具の使い方。出した小道具は全部意味があってスッキリします。
ただ、回想が多いのと音楽シークエンス使用、あとから理由や歴史がわかるミステリー要素が没入感を減らしているのでマイナス1で採点しました。

(雨森れに、2025/4/15)

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