映画『セッション』(三幕構成分析#236)

https://amzn.to/3I5TO8K

※あらすじはリンク先でご覧下さい。

※分析の都合上、結末までの内容を含みますのでご注意ください。

【ログライン】

ジャズドラマー志望のアンドリューは、なかなか日の目を浴びることができず、フレッチャーの過酷な指導に耐え夢を掴もうとするが諦めざる負えなくなり、改めて来たチャンスを掴むためステージにあがり、フレッチャーと心理的な戦いをした末に圧倒的な実力を見せつける。

【フック/テーマ】
行き過ぎた指導/才能と努力、師弟関係

【ビートシート】

Image1「オープニングイメージ」:「ドラム練習するアンドリュー」

GenreSet「ジャンルのセットアップ」:「フレッチャー」
練習中に高圧的な物言いの指導者と出会う。
音楽と師弟関係、フレッチャーの性格のセットアップ。

Premise/CQ「プレミス」/「セントラル・クエスチョン」:「指導に耐えられるか(その先に何があるのか)」
苛烈な指導と、血のにじむような努力の末にあるものは何か。

want「主人公のセットアップ」:「夢」「父」「恋」
夢を持ち、その夢を父に応援されている青年。19歳らしく恋愛にも興味がある。

Catalyst「カタリスト」:「フレッチャーのクラスバンドに誘われる」
初心者クラスから最高クラスへの誘い。

Debate「ディベート」:「指導を目の当たりにする」
集合時間は誤っており、クラス内は緊迫している。指導が始まると暴言と罵倒の嵐。アンドリューは困惑する。

Death「デス」:「激励され、前向きに」
指導中とは打って変わって優しいフレッチャーに激励され、迷いが消える。

PP1「プロットポイント1(PP1)」:「練習に加わる」
控えではなく、ドラム奏者として参加。最初は褒めてもらえるが……(F&Gへ)

F&G「ファン&ゲーム」:「苛烈な指導」「血のにじむ努力」
暴言暴力を含む苛烈な指導が始まり、血のにじむような努力が必要になる。

Battle「バトル」:「個人練習」「コノリー」「コノリー、タナー」
個人練習を重ね、代打成功。
コノリーと競わされ負ける。闘って勝ち取れと言われ、過酷な個人練習を始める。
ドラマー3人ともフレッチャーの理想通りに叩けず、深夜まで指導を受け、主奏者の座を勝ちとる。

Pinch1/Sub1「ピンチ1」/「サブ」:「親戚」「ニコル」
ピンチ1:親戚から努力を理解されない
サブ:ニコルとの恋愛…夢に向かう代償として別れ、復縁も叶わない。

MP「ミッドポイント」:「次のコンペで主奏者になる」

Fall start「フォール」:「コンペに遅刻」

Pinch2/Sub2「ピンチ2」:「父親」「弁護士」
ピンチ2:努力を知る父親、苛烈な指導を知る弁護士

PP2(AisL)「プロットポイント2」:「音楽の道が閉ざされる」
フレッチャーを殴ったことで退学。憧れているドラマーのポスターを外す。自分と同じ思いをする生徒を出さないために、フレッチャーの指導について証言。
=音楽への道が閉ざされてしまう。

DN「ダーク・ナイト・オブ・ザ・ソウル」:「フレッチャーの信念」
偶然、ジャズクラブでフレッチャーの素晴らしい演奏を聴き、何のために厳しくしていたのかを知る。

BB(TP2)「ビッグバトル(スタート)」:「ドラム奏者として誘われる」
フレッチャーより、もう一度ステージに立つチャンスを貰う。

Twist「ツイスト」:「報復の場」「自分のペースに持ち込む」
フレッチャーはアンドリューの証言を知っていて、失敗したら二度とチャンスが来ないステージでアンドリューを陥れる。
一度はステージを下りるも、再度ステージに立つ。他奏者を扇動し、圧倒的な演奏をする。

Big Finish「ビッグフィニッシュ」:「フレッチャーが認める」
敵意をむき出しにしていたフレッチャーがアンドリューの演奏に寄り添う。

Image2「ファイナルイメージ」:「全力を出し切ったアンドリュー」

【作品コンセプトや魅力】

ジャズドラマー、指導において厳しさとやりすぎの境界線、プロのもつ狂気、ジャズの世界、指導者と生徒、パワハラ、体罰、才能と努力、心理的スリラー、音楽と編集、演奏の躍動感、デイミアン・チャゼル脚本・監督、J・K・シモンズ、マイルズ・テラー、2012ブラックリストプロジェクト選出、脚本から18分の短編映画作成のちに脚色し長編公開、アカデミー賞

【感想】

「好き」5「作品」5「脚本」4
演奏の躍動感があり、音楽が感情を盛り上げてくれました。
フレッチャーの描き方と演じ方が素晴らしかったです。些細な言動からも高慢な「指導者」が垣間見えました。演奏(音楽)とフレッチャーの部分で、好きと作品を5で評価したいと思います。
しかし、脚本としては父親が精神面でのキーパーソンであるのに、希薄に描かれている印象を受けました。なのでアンドリューが再度ステージに立つ決断に疑問が浮かびました。
この部分のアンドリューの描き方も「父親のため、自分のため、ここで奏者人生が終わるとしても悔いがないように――」という感情の溜めがあったほうが物語として盛り上がったように思います。
逆を言えば、この部分のアンドリュー以外は少々強引ながらも素晴らしかったです。若者らしい自分勝手さ、夢を追う真面目さ、高慢な指導者への怒りは心に響くものがありました。

(雨森れに、2025/8/10)

ライターズルームへの仕事依頼

SNSシェア

フォローする