プロットを考える18「ターニングポイント2」

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前回は「オールイズロスト」として、旅の終わりについて考えました。
これが構成上ではプロットポイント2にあたるという話もしました。

今回のビートは「ターニングポイント2」です。
まずは「プロットポイント」と「ターニングポイント」の違いを確認しておく必要があります。

ストーリーアナリストによって「プロットポイント」と呼ぶ人がいたり「ターニングポイント」と呼ぶ人がいますが、どちらもアクトとアクトを分ける点として定義されているのは同じです(※この意味がわからない方は音声解説を聞いていだくか、「プロットポイントとは」をお読みください)。

違いとしては「プロットポイント」を使う人は全体を俯瞰して日常と非日常を分けている点(つまりアクト1とアクト2をわけている点)に注目していて、「ターニングポイント」を使う人は「主人公の気持ちの変化」に重点を置いています。
アクト1では、主人公が決断すればすぐに「非日常への門」となるべき「プロットポイント」を抜けていくので、この違いはあまり問題になりません。
このシリーズでは「ターニングポイント1」=「デス」として、「プロットポイント1」は門としての役割として定義してきました。

ここでも同様に、プロットポイント2は門としての役割と考えると、それは前回の「オールイズロスト」=旅の終わりに相当します。
旅を終えて喪失感を感じている主人公。しかし再び、最後の戦い(=アクト3)に挑戦する決心をします。それが今回の「ターニングポイント2」です。
構造としては「ディベート」→「デス」の流れと「オールイズロスト」→「ターニングポイント2」の流れは似ています。主人公が悩んだ後、決心をするという意味では同じです。しかし、旅立つ前と旅立つ後では、主人公の人格に大きな差がなくてはありません。

成長とはMPで得た宝物のことです。

「オールイズロスト」の中で「ダークナイトオブザソウル」には「ディベート」ほどの意義がないと説明しました。今回のターニングポイント2でも「デス」ほどの落ち込みは必要ありません。成長している主人公にとって他人の助けや決断を迫られる必要はないのです。自分の意志で決断できるほど成長しているのです。他人の言葉で主人公が決心を促される場合もありますが、これも言葉に動かされたというよりは、言葉によって「旅の経験」を思い出したから決断できるに過ぎません。「自分を信じろ」と言われても、「旅」を経ていない主人公は決断できません。その言葉で決断できるのは、旅で「宝物」を得てきた主人公だけです。

そういったキャラクターの成長した感じが出ていない主人公は、成長に失敗していると言えます。あるいは通過儀礼に失敗した、宝物を得ることに失敗したと言い替えることもできます。

例えば、こんな話。
日頃は臆病な性格な男の子がいます(のび太くんのような)。彼はいじめられっ子においかけられて「幽霊屋敷」に入ってしまいます。そこで幽霊と友達になってひと夏を過ごします。ここで彼は「友情」という宝物を得ているのです。ある時、その屋敷の取り壊しが決まります(これはオールイズロスト=旅の終わり=二人の関係の終わり)。その時、彼はどう行動するのか?
取り壊しを止められるかどうかというのが、次のアクト3の展開になっていきますが、その前に、彼は「絶対に守る!」という決断をします。それがターニングポイント2です。
能力的に彼一人で止めることはできないかもしれません。大人の手助けがあるかもしれません。それでも、大人の気持ちを動かすのは主人公である彼でなくてはならないのです。
だから、オールイズロストでいったん落ち込んだとはいえ、「仕方ない」などと受け入れてはいけません。それでは「友情」という宝物がニセモノだったように見えます。
幽霊との時間を過ごした彼だけが「友情」という宝物をもっているのです。こういう主人公を神話論では英雄と呼びます。英雄とは特殊能力をもったキャラクターではなくて「宝物」を持ち帰った者なのです。プロメテウスのような。

決断した主人公は、アクト3=最後の決戦「ビッグバトル」という次のビートへ入っていきます。

何かご意見、ご質問などありましたらコメント欄にどうぞ。

★まとめ:
・「プロットポイント」は門としての機能、「ターニングポイント」は主人公の決断。
・決断した主人公は、すぐに門をくぐるので二つは似ている。
・「ターニングポイント2」では「デス」のような決断を促すイベントは必要ない。主人公は成長しているから。

イルカの音声解説はこちら(※しまうまさん抜きで録音しています)

音声解説のyoutube版はこちら

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